カタクチイワシは虎と踊る   作:ターキーX

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第二十話 そしてイワシは幕を上げる

「……斎さん、安斎さーん?」

 何処からか声が聞こえる。アンチョビは混濁した意識の中でそれを認識した。

 何か板状の物が顔に押し当てられている―――いや、違う。顔を伏せた自分が板に顔を押し当てているのだ。冷たい合板の堅い感触。これは―――

「安斎さーん!」

「ふぁ、ふぁいっ!」

 今が授業中である事に気付き、眠りから覚めたアンチョビは机から体を跳ね起こした。教壇に立つ英語教師がこちらを眼鏡越しに睨んでいる。

「……安斎さん。戦車道の練習が大変なのは分かるけど、起きて聞いてもらえる?」 

「はい、すみま……」

 頭を下げようとした拍子に強烈な眠気が襲い、アンチョビは再び眠りに落ちた。

「安斎さーん!」

 

 

 カタクチイワシは虎と踊る 第二十話 そしてイワシは幕を上げる

 

 

「全くもう、下の階にまで聞こえたわよ? 恥ずかしいったらないわ」

 お昼休みの大食堂。各所のテーブルで少女達が食事しつつ話に花を咲かせている。

 そんな中、定食のハンバーグにナイフを入れつつ、逸見エリカは渋い表情で向かいの席に座るアンチョビに言った。

「すまない……」

 答えるアンチョビにも何時ものキレが無い。少し今の彼女には重かったのか、パスタに差したフォークを持て余すように上下させている。

「朝から無茶しすぎだよ隊長……いくら演習弾だからって、あんなに吹き飛ばされてたらお昼まで体力持たないって」

 エリカの横の沙織が納豆をかき混ぜつつ言った。

「そういえば、冷泉さんはどうされたんですか?」

 アンチョビの横に座り、特盛のご飯にふりかけをかけつつ華が尋ねた。

「アイツは私以上に負担が大きいから、朝練が終わった時もCV38の中だったな……多分、あのまま中で寝てるんじゃないか?」

「もう、麻子ってば……」

 そう答えるとアンチョビはパスタを一巻き口に入れた。沙織が口を尖らせる。

「でも実際、他のみんなにとっても結構な負担になってるのは事実よ。アヒルチームはとかはまだまだ元気みたいだけど、一年生とかはバテてる子もいる」

 別テーブルで山盛りのキャベツとトンカツを勢いよく食べるバレー部の面々を見つつエリカは言った。よくよく彼女たちは体育会系だ。

「練習でバテて本番で体力を使い果たしては意味が無いわ。明後日には本番なんだから、今日明日は早めに練習は終わらせてコンディションの維持に努めましょう」

「そうだな……なあ、エリカ。このパスタの残り、貰ってくれないか?」

 エリカの提案にアンチョビは億劫そうに頷き、手元のパスタ皿を差し出した。

「……流石にハンバーグとカルボナーラ一緒は重いわね」

「あの、私なら大丈夫ですが……」

 まだ半分残ってる自分のハンバーグと見つつ躊躇するエリカ。その横で華が提案した。スライドしてゆくパスタ皿。

 

 エリカは改めてアンチョビの顔を見た。彼女が食事を残すのは初めて見る。

 ただ練習で体力を消耗しているからというだけでは無いだろう。次のアンツィオ戦に対して、彼女が必要以上に背負い込み過ぎているようにエリカには見えた。

 今までの試合のアンチョビには見られなかった傾向だ。前のプラウダ戦、継続戦、どちらもアンチョビは一人で全てを行おうとせず、肝心な所でも役割をチームで分担して勝ちを狙ってきた。その余裕が今回は無い。

「あれ? そういえばゆかりんは?」

 沙織がふと気付き周囲を見回す。その時優花里の声が響いた。

「……どのー! アンチョビ隊長殿ー!」

 ビニール袋を手に小走りに食堂に入って来た優花里が、こちらに気付き駆け寄ってきた。

「ど、どうしたのゆかりん!?」

「その、隊長殿の調子があまり良くないようでしたので色々と調達してきました!」

 驚く沙織に言うと、優花里はビニール袋をテーブルに置いた。ドラッグストアのロゴの入った袋の中には栄養ドリンク、ブドウ糖、クエン酸、冷却スプレー等が詰まっている。

 それを見たアンチョビは、疲れた顔で笑って言った。

「……よし、これでもう少し頑張れるな」

 その表情にエリカは、逆に眉をひそめて眉間を押さえた。

(……何とかしないといけないわね、これは)

 

 

 放課後、校舎裏の丘周辺。機銃を20mm機関砲に換装したCV38が木陰に停車している。

その中で皆に通信を送るアンチョビ。多少は体調も戻ったようだ。

「各車、所定の位置に着いたか?」

『こちらウサギチーム、到着しています』

『アヒル、只今到着しました!』

『カモチーム、準備できてます』

『こちらカバチーム、戦の用意はできているぞ!』

『トラ、何時でも始められるわ』

 カメさんチームこと生徒会の面々は試合会場の下見からまだ戻ってきていない。学園艦側も現地に向かってはいるが、連絡船待ちで到着は夕方になるようだ。

「……よし、それじゃ事前説明通り模擬演習を行う。今回の試合会場の地形から、次の試合はおそらくアンツィオ側との高地の取り合いになるだろう。敵の主力は足の速いCV33。こちらを撃ち抜ける火力は無いが、混乱させるには十分だ」

「一回戦でアンチョビ隊長がプラウダに仕掛けたのの、逆をやってくる訳か……」

 Ⅲ突車内でアンチョビからの通信を聞くエルヴィンが呟く。

「これはそれを想定した訓練だ。丘の頂上の草原までⅢ突が向かうのを私のCV38とアヒルチームの八九式がCV33役として援護する。それを他3両は妨害してくれ。勿論、どんどん撃ってくれていい。こちらも換装した20mm機関砲に慣れておきたい。隙を見せれば私もどんどん撃つからな?」

 

「……それって、どの位強くなったの?」

 Ⅳ号戦車車内、沙織がピンと来ない表情で優花里に尋ねた。

 Ⅳ号の砲塔は今までの短砲身から長砲身に換装され、その外見を大きく変えている。かつての戦車捜索時に発見した、物干竿代わりに使われていたものを修繕したものだ。

「ええっとですね……CV38に新しく搭載されたブレダM35ですが、これは以前の13.2mm重機関銃に比べて、300mの距離で20mmの傾斜装甲を撃ち抜く事が可能になりました」

「う、うーん?」

 優花里の説明に、頭に疑問符を浮かべる沙織。

「まあ要するに、このⅣ号相手でも側面や背面なら貫通するようになったって事よ」

 車長席のエリカが要約して説明を引き継ぐ。そこで初めて理解できたのか驚く沙織。

「ええっ!? それって凄く強くなってない!?」

「まあ装甲は相変わらず軽戦車でも一撃食らえば白旗ですし、相当に近づかないと貫通しませんから大変なのは変わりませんけどね。あれを操縦している冷泉殿は凄いです!」

 優花里が感心しながら補足する。エリカは操縦席の華に声をかけた。

「華、相手はこちらを攪乱しようと走り回るけど、それに焦る必要は無いわ。状況に混乱せず、落ち着いた正確な操縦を心掛けて」

「承知しました。お任せください」

 微笑みながら答え、華はⅣ号の操縦桿を握った。乗り始めた頃は緊張して握り締めていたものだが、握り慣れた今は力を籠めず、添えるように操縦できるようになってきた。

「優花里は長砲身の射程と弾道を把握するのに努めて。今までの短砲身と比べて飛距離も貫通力も大幅に上がってるけど、その分今までの感覚で撃っても狙い通りにはいかないわ。感覚を掴んで」

「了解であります!」

『それでは演習開始! アーヴァンティ!』

 アンチョビからの合図が飛ぶ。エリカは席に座りなおし号令をかけた。

「それじゃみんな、手を抜かず行きましょう。パンツァー・フォー!」

 

 

 10分後。

「……まさか、もう演習が終わるとは思わなかったわ」

 エリカは腰に手をあて、白旗の上がったCV38の前で言った。

 演習内容に問題があった訳ではない。問題があるとすればCV38の行動だろう。彼女は陽動も行わずにCV38単騎で追撃側の三両を足止めしようとしたのだ。如何に武装が強化されているとはいえ、無謀と呼ぶ他はない特攻である。

 結果、CV38はあっさりと走行不能になりⅢ突は丘に着く前に包囲されたという訳だ。

「す、すまない。それじゃもう一度……」

「……いいえ、やっぱり今日はもう解散しましょう」

 詫びを言いつつ再開を提案するアンチョビに、エリカは首を振って否定した。

「賛成だな」

 アンチョビの横で何かを考えていた麻子もそれを支持する。

「麻子?」

「……らしくないぞ、隊長」

 普段は操縦以外の事で何も言ってこない麻子の予想外の反応にアンチョビが振り向くと、麻子は横目でやや強い口調で言った。

「らしくないって?」

「普段のアンチョビなら今の場面は八九式と分担して戦力を分断。Ⅲ突の行動範囲からより遠くに誘導。その程度の事は考え付くはずだ。隊長、判断力が落ちてるぞ」

「そ、そうか?」

「ああ」

 戸惑うアンチョビに麻子は短く断言した。それが決まり手だった。

 

 

「それじゃ、解散!」

 その日の号令はエリカが行った。まだ夕方少し前といった所で、解散を指示された戦車道メンバーも自主トレを行おうとする者、整備する者、用事で帰る者、それぞれだ。

「ねえエリカ、私達はどうする? 自主練でもやる?」

「それなんだけど……ちょっと今日は私に付き合ってもらっていいかしら?」

 沙織の提案に、エリカは少し考えてから答えた。珍しいエリカからの提案に、近くにいた華や優花里も近寄ってくる。

 彼女らにエリカは簡潔に自分の案を説明した。

「……珍しいねー。エリカからそんなの言ってくるなんて」

「流石にアンチョビのあの調子を見てるとね……」

「ふふ、宜しいのではないでしょうか」

「あ、あの……」

「優花里、もちろん貴女も来ていいわよ」

「は、はい! ありがとうございます!」

「決まりね。それじゃ……」

 一同の意見が固まったところで、エリカは帰り支度をしているアンチョビと麻子に声をかけた。

「隊長、ちょっと付き合いなさい!」

 

 

「……スーパー?」

 詳しい用件の説明もなく「付き合って」の一言で引っ張ってこられたアンチョビは「ルクス 大洗学園艦店」の大きな看板を見上げた。大洗学園艦の上でも最大のショッピングセンターだ。

「隊長、貴女何かアレルギーは持ってる?」

「い、いや?」

「そう」

 手短なエリカからの質問に戸惑いつつ答えると、エリカは小さく頷き店内に入っていった。それに続く一同。エリカは制服のポケットからメモを一枚取り出すと沙織に渡した。

「私は精肉と調味料を揃えるから、沙織は野菜をお願い。ここに書いてあるわ」

「了解。任せといて! 麻子も一緒に来てくれる?」

「面倒だな……」

 エリカからメモを受け取ると、沙織は元気な返事と共にカゴを持って野菜コーナーに向かって行った。疲れた表情で麻子も続く。

「な、なあ、どういう事なんだ?」

 まだ状況を把握できていないアンチョビがエリカの背に尋ねる。答えたのは彼女でなく、アンチョビの横で微笑む華だった。

「逸見さん、隊長に料理を作って差し上げたいそうで……」

「私に? 何で?」

 きょとんとするアンチョビ。そこでエリカは初めて彼女の方に振りむいて言った。

「……アンタ、今日は家に帰ったら何を食べるつもりだった?」

「そりゃあ……」

「どうせペペロンチーノあたりで済ますつもりだったんじゃないの?」

「………」

「……ハァ」 

 パスタとニンニクとオリーブ油と唐辛子さえあれば作れるペペロンチーノは最も手軽に作れるパスタ料理であり、同時に最も質素なパスタ料理である。無論その栄養価は推して知るべしだ。

 アンチョビの沈黙を肯定と受け取り、エリカはため息を一つついた。

「だからよ」

 そう言い残すと、エリカは精肉コーナーで機敏に品定めをして商品をカゴに入れ始めた。牛挽肉、豚挽肉、しゃぶしゃぶ用豚ロース……

 しかし、その説明を受けてもアンチョビの表情には疑問が浮かんでいた。

「……何で?」

 

 

 エリカのマンションはそこからさほど遠くない場所だった。玄関の鍵を開け、エリカは皆を中に促した。

「さ、遠慮しないで入って」

「お邪魔しまーす」

「失礼いたします」

「お邪魔します!」

「眠い……」

「あ、ああ」

 沙織、華、優花里、麻子、アンチョビと続いて入室する。

 何とも女子らしくないシンプルな部屋であった。机とその上のPC、本棚、シングルベッド、ちゃぶ台、TV、姿見にサンドバッグにグローブ。枕元に置かれたデフォルメされたワニのぬいぐるみが、辛うじて部屋に女の子らしさを残している。

「何これ?」

「ボクササイズ用のやつよ。陸地だった頃はジム通いもしてたんだけど」

 思わずサンドバッグに触れる沙織にエリカが説明する。グローブを着けて汗をかきながらサンドバッグに打ち込むスポーツブラ姿のエリカを想像し、沙織は何となくだが納得した。確かに絵になりそうだ。

「さ、それじゃ準備を始めましょう。隊長と冷泉さんは座ってTVでも見て休んでて」

「わ、分かった・・・・・・」

「分かった。ちょっと横にならせてくれ」

「麻子、今寝たら変な時間に起きちゃうよ? ダメ!」

 言いながら既に横になっている麻子に沙織が小言を言った。

「問題ない。今日は多少寝たくらいではこの眠気は……ぐぅ」

 だが、麻子の意識はもう半分以上眠りの世界に行っているようだ。CV38の操縦で相当に消耗していたのだろう。

「仕方ないなあ、もう……」

「沙織、私はメインを作るから貴女は野菜の方をお願い」

「あ、はーい! サラダ作るの?」

「サラダも作るけど……一部は温野菜にしようと思うの。だから……」

「分かった。華、料理は作れたっけ?」

「すみません、花しか切った事が無くて……」

「それじゃ盛り付けや器の用意をお願いするわ。優花里は皮むきとかの仕込みをお願いしていい?」

「了解であります!」

 キッチンの方で賑やかな声が聞こえてくる。アンチョビはそれを聞きながら強い眠気を覚え、抵抗しながらも眠りに落ちていった。

 

 

「……長、アンチョビ!」

「ふ、ふえっ!?」

 頭をノックされるように小突かれ、アンチョビは慌てて跳ね起きた。寝ぼけ眼を擦り焦点を合わせると、片手に大皿を持ったエプロン姿のエリカが呆れながら見下ろしていた。

「あ、頭を叩くな!」

「そこで寝ていられると、皿が置けないでしょ?」

 アンチョビの抗議を軽く受け流し、エリカはちゃぶ台に皿を並べる。既にほかの4人は卓についており、その手前にはハンバーグと温野菜がよそわれた皿が並べられ、中央にはシーザーサラダが盛られた大皿がある。

「ハンバーグか……その、ちょっと私には重いかもな」

「貴女にはこれよ」

 その返答を見越していたか、アンチョビの前に置かれたのは三つ葉とカイワレで飾られた豚冷しゃぶだった。横にはポン酢の小皿。消化のよい温野菜も添えられている。確かにこれなら今のアンチョビでも大丈夫そうだ。

「それにしてもびっくりだよ。エリカ、料理上手かったんだねー」

「……そうでもないわ。作れるのはハンバーグと付け合わせくらいよ」

 素直に感心する沙織の言葉に、エリカは少し目線を逸らして答えた。照れているのだろうか。

 

 やがてドリンクも注ぎ終わり、一同は卓についた。

「それじゃ……いただきます」

『いただきます!』

 エリカの合図で手を合わせ、食事が始まった。

「!? このハンバーグ凄いです! レストランのハンバーグ以上ですよ!」

 程よく火が通り、香ばしさとジューシーさが合わさった味に優花里が驚く。

「うむ、三つ星」

 その横でフォークを咥えたまま麻子が同意する。

「た、大した事は無いわよ」

 少し赤面するエリカ。やはり照れているようだ。

 その様子を見ながらアンチョビは冷しゃぶを口に入れた。よく冷えているし、茹で過ぎられてもいない。ポン酢の酸味と合わさり、するりと胃に流れてゆく。

「……それで、何でなんだ?」 

 一息つき、アンチョビは改めてエリカに向き直って尋ねた。温野菜のニンジンを切りながらエリカが答える。

「何が?」

「いや、その、嬉しくはあるんだが、何でいきなり私を誘って食事を?」

 その質問に対し、エリカは皮肉っぽい笑みを浮かべた。

「……ねえ隊長。前の継続高校戦で、アンタは私達に最後を任せたわよね?」

「あ、ああ」

「怖かったわよ、本当に」

「うっ……」

 言葉に詰まるアンチョビ。優花里たちも同意する。

「あれは本当に強敵でした。次に戦って勝てるとは思えません……」

「私なんて、あの晩夢にまで出てきちゃったよ」

「す、すまない……」

「でも、あの時の隊長は私達を信じてくれたのよね?」

 頭を下げかけたアンチョビに、エリカは言葉を投げかけた。顔を上げるアンチョビ。呼吸を一度落ち着け、淀みなく答える。

「……そうだ。理想は燻製作戦で撃破できるのが一番だったが、それを逃した時に勝負を決められるのはエリカ達だけだと思ってた」

「だったら、何で今度は自分ひとりでアンツィオ全部を相手にしようとしてるのよ?」

 エリカの問い。アンチョビの目が開く、そこで初めて言われた事に気付いたようだった。

「因縁があるんでしょうけど、一人で片づけようとかしてるんじゃないわよ。大体、負けたらアンタ一人の問題じゃなくて大洗全部の問題になるんだから……」

 そこまで言うとエリカはニンジンを口に含んだ。よく噛み、嚥下し、ジュースを飲む。

 アンチョビの表情が変わった。僅かだが確かな変化。それを確認し、エリカは目を逸らしつつ言った。

「……それでも、ウチの隊長はアンタしかいないんだから」

「……ありがとう、逸見」

 アンチョビが頭を下げた。その光景を見つつ、麻子が呟く。

「珍しいものが見れたな。あの逸見さんがデレるとは」

「ッ!?」

 その言葉にエリカは言葉を詰まらせ、激しくむせた。ジュースが気管に入ったらしい。

「ケホッ、ケホッ……な、何言ってるのよ!?」

「貴重な光景です……いやあ、良いものを見せて貰いました」

「優花里!」

「うーむ……この破壊力、これがギャップ萌えって奴なのかな? 勉強になったよ……」

「沙織まで!? そ、そういうのじゃないってば!」

「逸見さん、あの、お顔が真っ赤ですが……」

「だから……ああもう!」

「エリカ、気持ちは嬉しいが、私にはそっちの趣味は……」

「ア、アンタねえ!」

 

 賑やかに食事は進み、アンチョビはその光景を笑顔で眺め、また自身もそれに参加した。

 

 そして朝が来て、最後の夜が来て、また朝が来た。

 試合が始まる。決勝に挑む一校を決める試合が。

 

 

カタクチイワシは虎と踊る 第二十話 終わり

次回「ペパロニサラミはイワシと踊る」に続く


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