Fate/Scramble   作:DF946

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停戦協定

 ふたりは、剣を構えたまま睨み合っている。

 

「いい判断だ」

 

 

 男はいつの間にか手にしていた銃を懐にしまった。

 

「狂戦士になった騎士王との一騎打ちなんて、私のセイバーでも勝てるか分からなかったからね」

 

「勝てます」と赤い髪の女騎士は憮然として呟いていた。

 

「君が彼女を止めていなければ、私は君を殺して逃げていただろうな。マスターさえ居なくなればゲームオーバーだからね」

 

 男が落ち着いた声で言う。

 聞き違いじゃ無ければ、この男は俺を殺すつもりだったって言ったのか!?

 

 

「もう一度聞くが、私と手を組まないか? そうすれば休戦関係を約束する」

 

「ちょっと待ってくれ、最初から説明してほしいんだけど。とりあえず休戦しよう!」

 

 男はほっとしたような表情を見せた。ように見えた。

 

「いいだろう」 

 

 

 

 

 

 

 

 男は俺に説明してくれた。

 

「私の名前は畔野巣終始。クロノスとでも呼んでくれ。友人に付けられたアダ名でね、気に入ってるんだ」

 

 クロノスは感情の無いような真っ暗の目で微笑む。

 

「こっちは私のサーヴァント、セイバーだ」

 

「よろしくね」

 

 赤髪の子が微笑んだ。

 

「よ、よろしく。あ、俺は|間森(まもり)|闌蹴〈たける〉です」

 

「で、あっちがお前の契約した英霊。バーサーカーだ」

 

 クロノスがバーサーカーを顎で指す。

 

 バーサーカーと呼ばれた金髪の少女はまだ敵意を剥き出しにした目で「グゥゥ……」と唸っている。

 バーサーカーの見た目は16〜18歳くらいだろうか。普通にしていれば見た目は気品があり、美少女といって差し控えないのだろうが、行動はものすごく獰猛な猛獣か狼人間みたいな雰囲気だ。

 

 クロノスの説明によると、俺は「聖杯戦争」という、魔術師同士の抗争に強制参加させられたらしい。

 魔術師などという非現実的な単語を言われても、今更俺に信じない理由は無い。

 

 聖杯戦争は召喚者(マスター)と英霊(サーヴァント)の2人一組が、計7組。それぞれ殺し合い、最後に残った一組の2人が、自分の願い事を叶えられるらしい。

 

 英霊(サーヴァント)は過去と未来における伝説の戦士の事であり、聖杯戦争を仕切る「聖杯」というものに選ばれて、マスターの元へ召喚させる。

 サーヴァントは半霊体のような存在で、人間には不可能な強力な魔力を使って闘えるらしい。

 

 そしてマスターとサーヴァントは、令呪と呼ばれる絆で結ばれている。

 

「右手の甲にそれが浮かんでいるだろう。それが令呪だ。それは3回まで使えて、使用するごとに消えていく。君はさっき戦いを止める為に命令したから、残り2回だな」

 

 令呪は3回まで、サーヴァントに拒否権の無い命令を強制する事ができるらしい。

 

 そして3回令呪を使い果たすと、契約は解除されて聖杯戦争から除外される。

 

 ……もし俺が3回の命令を使い果たし、バーサーカーとの契約が切れたら、殺戮に餓えたバーサーカーは……

 

 

「そこで君と私は停戦協定を結んだんだ。敵は2人一組、こちらは4人一組になり優位に立てる。君は分けも分からず殺される事はなくなるし、私は騎士王の力を借りて闘う事ができる。利害が一致するだろう?」

 

「うん。そうですね……」

 

 でも、もし

 

「もしその戦いで、俺達4人が最後に残ったら、どうなるんですか?」

 

 

 クロノスは、感情の見えない声で断言した。

 

 

 

「もちろん、そのときは全力で倒しにかからせてもらうよ。それまでの停戦協定だ」

 


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