「どういうこと?」
セイバーの発言に、緋咲さんが問い返した。
「あそこでランサーが死んでいるなんてありえません。……だって、ランサーはもう死んでいるんですから」
「えっ?」
驚く緋咲さんとシンジさんの前で、セイバーは真剣に答えた。
「私は既にランサーと戦っています。その後で彼が死んだのも。ーーだから、緋咲さんの言っていることはおかしいです」
「ちょっと待って」
緋咲さんが遮って質問をかぶせる。
「私が間違ってるなんてありえない。ランサーがもう死んでるって、あなたこそ本当なの?」
「もちろんです。東洋風の武人で、長い槍を持って戦っていましたから。あれはランサー以外考えられません」
「それって、もしかして俺たちが見たやつじゃないの?」
シンジさんが口を挟んだ。
「公園で消えてったサーヴァントも武将みたいな奴だったけど。馬に乗った
「どっちにしろ同じことよ」
緋咲さんが冷ややかに突っ撥ねる。
「ライダーは私たちの前で消えたのよ。その前に死んでるはずがない。やっぱりセイバー、あなたが殺し損ねていただけじゃないの?」
「違います。ランサーを倒したのは彼のバーサーカーです」
セイバーが俺を視線で指し示した。
緋咲さんとシンジさんも俺の方を向く。
「えっと……、確かに、アルトリアがやりました。俺の目の前で、サーヴァントが消えるのも見てます」
俺の証言には信憑性があると感じたのだろうか。緋咲さんは肘を組み、下唇を人差し指で触りながら考える顔になった。
「それじゃあ……、ランサーが2人いた事になるわ」
緋咲さんが呟く。
みんなが、その謎の状況に眉をひそめ始めた。
7人のサーヴァントが戦う聖杯戦争に、8人目のランサーがいる。
意味のわからない事態だった。
「セイバーさんの見たランサーって、どんな人だったの?」
シンジさんが質問すると、セイバーは答えた。
「豪傑で、体の大きな男でした。立派な髭を蓄えていて、4メートル近い大きな槍を使って戦っていました。フランベルジェ……と言ってわかるでしょうか。槍の矛先が波打つような形状だったのは覚えています」
見た目が完全にイメージぴったりだった。
「うーん。じゃあ、俺たちが公園で見たサーヴァントとは違いますね。ライダーの人は、髭生えてなかったし」
とシンジさんが呟く。
中国の武人でライダーなら、「呂布」かもしれない。赤兎馬を駆る
「それで、結局サーヴァントは8人のままね……」
「いいえ」
呆れて溜息をつく緋咲さんの横で、セイバーが呟いた。
「まだ、アウトサイダーが残っていますよ。一人だけサーヴァントのくせに、戦いに参加せずに、魔力も使っていない。自称サーヴァントだという、どう見ても一般人の彼を除けば、サーヴァントは7人のままです……」
「……」
唾を飲み込んだ彼を見ながら、セイバーが言い放った。
「……あなたですよ。シンジさん」