Fate/Scramble   作:DF946

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あいつのクラスは何だろう

「どういうこと?」

 

 

 セイバーの発言に、緋咲さんが問い返した。

 

 

「あそこでランサーが死んでいるなんてありえません。……だって、ランサーはもう死んでいるんですから」

 

「えっ?」

 

 驚く緋咲さんとシンジさんの前で、セイバーは真剣に答えた。

 

「私は既にランサーと戦っています。その後で彼が死んだのも。ーーだから、緋咲さんの言っていることはおかしいです」

 

「ちょっと待って」

 

 緋咲さんが遮って質問をかぶせる。

 

「私が間違ってるなんてありえない。ランサーがもう死んでるって、あなたこそ本当なの?」

 

「もちろんです。東洋風の武人で、長い槍を持って戦っていましたから。あれはランサー以外考えられません」

 

「それって、もしかして俺たちが見たやつじゃないの?」

 

 シンジさんが口を挟んだ。

 

「公園で消えてったサーヴァントも武将みたいな奴だったけど。馬に乗った騎士(ライダー)なら、標準装備で槍とか使うんじゃないかな?」

 

「どっちにしろ同じことよ」

 

 緋咲さんが冷ややかに突っ撥ねる。

 

「ライダーは私たちの前で消えたのよ。その前に死んでるはずがない。やっぱりセイバー、あなたが殺し損ねていただけじゃないの?」

 

「違います。ランサーを倒したのは彼のバーサーカーです」

 

 セイバーが俺を視線で指し示した。

 

 緋咲さんとシンジさんも俺の方を向く。

 

「えっと……、確かに、アルトリアがやりました。俺の目の前で、サーヴァントが消えるのも見てます」

 

 俺の証言には信憑性があると感じたのだろうか。緋咲さんは肘を組み、下唇を人差し指で触りながら考える顔になった。

 

 

「それじゃあ……、ランサーが2人いた事になるわ」

 

 緋咲さんが呟く。

 

 みんなが、その謎の状況に眉をひそめ始めた。

 7人のサーヴァントが戦う聖杯戦争に、8人目のランサーがいる。

 

 意味のわからない事態だった。

 

 

「セイバーさんの見たランサーって、どんな人だったの?」

 

 シンジさんが質問すると、セイバーは答えた。

 

「豪傑で、体の大きな男でした。立派な髭を蓄えていて、4メートル近い大きな槍を使って戦っていました。フランベルジェ……と言ってわかるでしょうか。槍の矛先が波打つような形状だったのは覚えています」

 

 蛇矛(ダボウ)だ。…………あいつはきっと、三国志の英雄、「張飛」だ。

 見た目が完全にイメージぴったりだった。

 

「うーん。じゃあ、俺たちが公園で見たサーヴァントとは違いますね。ライダーの人は、髭生えてなかったし」

 

 とシンジさんが呟く。

 

 中国の武人でライダーなら、「呂布」かもしれない。赤兎馬を駆る騎士(ライダー)のイメージにはぴったりだ。

 

 

「それで、結局サーヴァントは8人のままね……」

 

「いいえ」

 

 呆れて溜息をつく緋咲さんの横で、セイバーが呟いた。

 

「まだ、アウトサイダーが残っていますよ。一人だけサーヴァントのくせに、戦いに参加せずに、魔力も使っていない。自称サーヴァントだという、どう見ても一般人の彼を除けば、サーヴァントは7人のままです……」

 

「……」

 

 

 唾を飲み込んだ彼を見ながら、セイバーが言い放った。

 

 

「……あなたですよ。シンジさん」

 

 

 


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