Fate/Scramble   作:DF946

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増えるサーヴァント

 間森たち四人は、昨日話し合いに使った喫茶店に行くことにした。

 

 歩きながら、間森は緋咲から昨日あった出来事を聞いていた。

 

 ーー

 

「ってことは、その公園で死んだサーヴァントは誰が殺したのかも、誰がマスターだったのかもわからないんですね?」

 

「ええ。それどころか、どうやって死んだのかも分からないわ」

 

 

 6人目だった名前も知らないサーヴァントの死因が、緋咲の心を不安にさせていた。

 

 

「もしかして、寿命じゃないかな……」

 

 シンジが仮説を話し出す。

 

「マスターを失ったサーヴァントは消えるんですよね? だから魔力が切れたサーヴァントがあそこで消えたのかも」

 

 確かにそれなら他のサーヴァントからの魔力が検出されない場所で死んだ説明はつく。

 

「でも、あのサーヴァントは腹から血を流して死んでいたわ。何かしらの物理攻撃はあったと思うけど」

 

 緋咲が不整合を指摘した。

 

 それを聞いていたセイバーが口を挟む。

 

「自殺では?」

 

「状況は説明づけられるけど、それじゃあもっと意味が分からないわね。わざわざ召喚したサーヴァントを、その場で殺すマスターはいないわ」

 

 そのサーヴァントが死んだ公園には、概念化された触媒が散在していた。

 つまりあいつは、あの公園で召喚された直後だったと言うことになる。

 

 召喚された直後に、敵に襲われたのか。

 それとも召喚したマスターに殺されたのか。

 

 どちらにせよ、殺した相手は魔力を持たない、サーヴァントでもないただの人間だったと言うことになる。

 

 

「わからないですね……」

 

 間森は首を振って思考を放棄した。

 

「その消えたサーヴァントって、何のクラスだったんでしょうね」

 

 間森の問いに、緋咲が答える。

 

「唯一残ってたサーヴァントの痕跡はライダーだった。だからあいつはきっと、ライダーで間違いはなさそうよ」

 

 ライダーのサーヴァント……。

 名前もわからないまま消えてしまったそいつに、間森は歯がゆさを覚えた。

 

「と言うことは、シンジさんのクラスは《魔道師》〝キャスター〟と言うことになりますね。消去法で、今までに遭遇していない最後に残っているクラスは、キャスターだけですから」

 

 セイバーにそう言われ、シンジは曖昧にうなづいた。

 自分が《キャスター》だと言われても、魔道師だったなどという自覚は全くないのだった。

 

「一番シンジに似合わないクラスね……」

 

 緋咲も納得しかねる様子で呟いた。

 

 

 

 

 

 

 しばらく歩くと、喫茶店の近くの通りまで歩いてきていた。

 

 空は少しだけ薄暗くなっている。

 

 四人は喫茶店が見える道に出た途端、違和感を感じて歩速を緩めた。

 

「えっ……」

 

 間森が声を出す。

 

 一番最初に気づいた異変を、緋咲が呟く。

 

「お店が……無い?」

 

 四人が立ち止まり、店があったはずの場所に目を凝らす。

 

 昨日まであったはずのその場所には、瓦礫が積み上げられた空き地ができていた。

 

 その周りに数台のパトカーと救急車が止まって騒がしく人が集まっている。

 

「何だ……」

 

 シンジが眉を寄せて、人に囲まれた瓦礫の山を見る。

 

 その散らばっている残骸は、紛れもなく昨日まであったあの喫茶店の建物の一部だった。

 

 喫茶店がなくなってる。

 昨日、聖杯戦争参加者が6人も集まった場所。

 偶然とは思えない。

 

 間森たち四人は不穏な気配に騒然となった。

 

 一旦四人はその場を離れ、建物の間で話し合いが起きる。 

 

 

「サーヴァントの仕業ですね」

 

 セイバーが呟く。

 

「今までの事件と同じです。店に居た人の霊力を吸収した犯人が、隠滅のために建物を壊したのでしょう」

 

「そんな」

 

 シンジは困惑した。

 今まで何度も起こっていた事件が、不意に身近なものに感じる。

 建物まで倒壊させるなんて。

 

「それに、サーヴァントの魔力の痕跡が残ってる。ここで、召喚されたサーヴァントが一人死んでるわ」

 

「え? どういうことですか??」

 

 サーヴァントが死んだだけじゃない。緋咲は、ここで召喚されて殺されたと言ったのだ。

 

「何が起きてるのかは私にもわからないけど、サーヴァントが殺されてるのだけは分かったわ。この魔力は、《ランサー》のサーヴァントよ。しかも、それ以外の魔力は感じない……」

 

 

 シンジと間森は顔を見合わせた。

 昨日、公園で死んだというライダーと同じ状況だ。

 

「それは確かなんですか?」

 

 懐疑的にセイバーが、緋咲を問いただす。

 

「ええ。私には魔力の痕跡を感じる力があるの。あの場所にはランサーの魔力が確かに存在してて、他のどのサーヴァントの干渉もなく死んでるわ」

 

「……ありえない。何かの間違いです。だって……」

 

 セイバーが動揺した声で、目線を外したまま呟く。

 

 

 

「……それじゃあ、サーヴァントが8体になります」


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