俺はシンジさんに連れられて走り出していた。
並木道を走りながら、後ろからセイバーもついてくる。
「アサシンのサーヴァントに襲われたんだ! それで俺だけ逃がされて……。間森くんお願いだから。緋咲さんを助けて!!」
なんだって!?
シンジさんが慌てている。
「当たり前じゃないですか!」
俺は走る速度を上げ、シンジさんの横に並びながら走った。
「場所は?」
「ここらへん!」
シンジさんと俺は建物の陰に走り込んだ。
どこだ。アサシンのサーヴァント!
「あれっ、どこだ。ここら辺のはずなのに!」
シンジさんが焦りながら辺りを見回す。
いつの間にか追いついてきていたセイバーが、隣を走ってきていた。
「人除けの結界が張られているのね。一度出ると普通の人間には見つけられないわ。…………こっちよ。ついてきて」
敵が近くにいるのがわかるのか。
セイバーが先陣を切って路地の奥へ走って行った。
俺とシンジさんがその後についていく。
すると突然、巨大な光が爆発している光景が目に飛び込んできた。
見るからに強大な魔力の塊が放出されている。
ーー戦っているんだ!
「あそこだ!」
シンジさんと俺は目で合図すると、その角から飛び出したーー。
緋咲さんの背中から出た蝶の羽のような光から、魔力の砲弾が打ち出されていた。
アサシンのサーヴァントらしき男が、それを剣で跳ね返す。
跳ね返され地面に当たった砲弾が、光を飛ばして爆発する。
打ち上げ花火が地面に炸裂しているかのような凄まじい光景だった。
「なんや。その程度かよキャスター」
アサシンの後ろにいる男が言う。
あいつは……昨日クロノスに見せられた。あの写真の男だ!
アサシンがまた砲弾の一撃を跳ね返し、建物の壁に当たったそれが光を撒き散らして消え去る。
緋咲さんが一歩ずつ下がっていった。
魔力の大きさで強そうに見えていたが、緋咲さんが劣勢なのは明らかだった。
このままだと負ける。
「セイバーさん行って!」
「はい」
その一言で弾丸のようにセイバーさんが飛び出して行った。
目にも留まらぬスピードのタックルがアサシンを襲い、つき飛ばした彼を建物の壁面に叩きつけた。
衝撃でコンクリートの壁が砕け散る。
「なんや!?」
マスターの男が俺たちに反応した。
力尽きた緋咲さんが、よろよろと壁に手をつく。
「緋咲さん、大丈夫ですか?!」
駆け寄っていたシンジさんが、緋咲さんを支えた。
「戻ってきたの……?」
驚いた彼女がシンジさんを見た。
「当たり前でしょ。サーヴァントだけ逃げてどうすんですか!」
体勢を立て直したアサシンが、肩の埃を払って言った。
「セイバー……。サーヴァント同士で協力しているのか。……なんで」
「私にも分からないんです。そこのマスターに聞いてください」
困って答えたセイバーが、俺をちらっと見て言った。
アサシンも俺を見てくる。
「何やねん……」
アサシンのマスターが狼狽えていた。
「そいつ、アルトリアのマスターやんけ。な、何でキャスターとセイバーも……」
男の声が震えている。俺が、サーヴァントを3体も連れていると思っているのか。
「撤退や! 引け! アサシン!」
アサシンが男の元に戻ろうとする。
「待って!」
俺が被せ気味に叫ぶと、剣を構えたままアサシンが俺の方を向いた。
「お前ら、……本当にお前らが、街の人のエネルギーを吸い取ってる犯人なのか?」
俺が、まっすぐにアサシンの目を見て聞いた。
アサシンの表情が困惑に変わる。
「何? それは俺たちじゃーー」
「なに話してんや! 早よ来い!」
マスターの男が怒鳴る。
アサシンは俺とマスターを交互に気にし始めた。
「ちょっと待って! 話し合おう! 俺たちには戦う気はないんだ!」
「早よ来い言うとんねん! 聞こえへんのか!!」
アサシンの心が揺らいでいる。
「お前は……なんだ」
「お、俺は間森タケル。マスター同士の殺し合いを止める為に聖杯戦争に参加してる」
「そんな事……」
俺がじっとアサシンの、フードの奥の目を見つめる。もしかしたら、
「俺は……」
「来いアサシン!!」
男が叫んだ。
アサシンが俺から目をそらす。
その命令の直後、アサシンが地面に何かを叩きつけた。
突如辺りが煙幕に包まれたかと思うと、
一瞬にしてアサシンとそのマスターの姿は、消え去っていた。