Fate/Scramble   作:DF946

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待ち構え作戦

「マスター。発見しました」

 

「来たな」

 

 アサシンのマスターは、姿の見えない声に反応した。

 

 

 昨日襲ってきたアルトリアから自分を助けた男、それからアルトリアのマスターに銃を向けた女。

 あの二人も聖杯戦争に関わっている。敵のマスターとサーヴァントだ。

 

 アサシンのマスターはその二人がまた大学構内に忍び込んでくることを予測して、アサシンに見張らせていたのだ。

 

 まだ相手には自分の正体を知られていない。自分を助けたのがその証拠だ。

 

「行くで」

 

 マスターは、アサシンを連れて向かった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

「まだこの大学に何かあるんですか?」

 

 

 シンジが緋咲に連れられ、大学構内を歩きながら聞いた。

 

「ええ。まだ一組、アサシンとそのマスターがいるはずよ。畔野巣終始のサーヴァントはセイバーだったしね」

 

 緋咲が建物の間を歩きながら答えた。

 昨日から感じている違和感は晴れない。今は敵を殺す事だけが彼女の目的だ。

 

 

 その時だった。

 

 

「うわああああああああああ!!!!」

 

 突然男が建物の陰から飛び出してきた。

 

 その男が地面に転がり倒れ、何かから逃げるように這いずりまわる。

 

「おい何だ! あんた大丈夫!?」

 

 すかさずシンジが駆け寄り男を起こそうとする。

 

 

 ーー何かが来る!

 

 緋咲も駆け出し、シンジと男の前に躍り出た。

 

 建物の陰で見えなかったものの正体が目に飛び込んでくる。

 

 それは、剣を持った男だった。

 

 白いフードを目深にかぶり、左肩についた白いマントを翻している。

 肩と腕にはシルバーの装甲。腰につけたゴツゴツしたベルトには、銃や短剣が携えられている。

 

 

「サーヴァント!?」

 

 シンジが驚愕した。

 

 15世紀の暗殺者集団の装束。ーーアサシンのサーヴァントだ!

 

「たっ、助けてくれぇえ!」

 

 取り乱した男がシンジにすがりつく。こいつに狙われたのか。

 

 周りには人はいない。

 このサーヴァントが人除けの結界を張ったのだろう。

 

 アサシンが長剣を構える。ーーーー来る。

 

 いや、違う!!

 

 

「罠よ!」

 

「えっ」

 

 

 シンジにしがみついていた男が、懐から短剣を抜いた。

 シンジの反応が追いつかない。

 殺意に満ちた男が短剣の切っ先をシンジの心臓に突き立てる。

 

 その直前に緋咲の体当たりが男を突き飛ばしていた。

 

 男と一緒に緋咲も地面に転がる。

 

「逃げなさい!」

 

 手をつく緋咲がシンジに叫ぶ。

 

 剣を振りかぶったアサシンが飛びかかってくる!

 

 緋咲は咄嗟に呪文を唱えると、彼女を中心に発した魔力の波がアサシンを突き放した。

 

 男とアサシンが、緋咲を前後から挟んで睨んでいた。

 

 

「ほぉー、凄い魔力やな。お前があいつのサーヴァントか」

 

 立ち上がった男が緋咲を見ながら、顎でシンジを示した。

 

 シンジが息を飲む。

 この男がアサシンのマスターだ。

 

「……」

 

 緋咲は身構えながら、声の震えをバレないようにしながら言った。

 

「その通りよ。よく分かったわね……。私は最強のキャスター」

 

 彼女の周りから発する光が凄まじい大きさに変わった。

 アサシンですらたじろぐ、おぞましい色の衝撃波が絶え間なく緋咲から放出される。

 

「この攻撃に何秒耐えられるかしら……」

 

 緋咲の微笑と共にさらに光が強まる。直視できない程の極彩色の刺激。

 強そうに見えるだけで実際には何の攻撃力もない、緋咲の精一杯のこけおどしの魔力だった。

 

 攻撃が止まっている間に緋咲が叫ぶ。

 

「マスター! 早く避難を!」

 

 ハッとしたシンジが緋咲の命令にうなづくと、踵を返し走り出した。

 

 それでいい。

 

 短剣を構えた男と、アサシンが彼女に飛びかかっていく。

 

 

 逃げ出すシンジの背後で、更に明るい魔力の光が爆発していた。

 

 


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