もう暗くなっていた。
俺とアルトリアは店の外に出ると、クロノスたちと一緒に帰ることにした。
「クロノス、俺明日からどうすればいいのかな?」
「何がだい?」
隣を歩くクロノスに問いかける。
「学校に敵がいるんですよ? そのまま通ってて大丈夫かなって」
「それは……、うぅん……」
答えに困っている。
「それにアルトリアはもう、指名手配されるでしょうから連れていけません」
「それなら……」
クロノスは提案した。
「私のセイバーと一緒にいればいい」
「えっ、私ですか」
突然の話にセイバーがびっくりする。
「ああ。私たちはアサシンを倒すまでしばらく、大学周辺の調査をするつもりだからね。アサシンのマスターもきっと、私達の動向をうかがいたくて学校には通うはずだ」
「そうですか。……それならいいですけど」
「じゃあ、明日学校で8時半に正門で会おう。そこでセイバーを君の護衛に付けて、私は単独行動にするよ」
いいんですか? とセイバーがクロノスに問いかける。
「そのかわり……」
と、クロノスが続ける。
「君のバーサーカーを貸してもらいたい」
「えっ……」
「私の護衛についてもらうだけだ。学校内で人目につくうごきはしないよ」
「制御できるならいいですけど……」
「じゃあ明日。そうしてもらおう」
その様子を見ていた俺は、セイバーと目があった。そのまま止まる。
「……よ、よろしく」
「よ……よろしくお願いします」
挨拶を交わすと、俺とアルトリアはクロノスたちと別れて、帰路に着いた。
途中でスーパーマーケットに寄り食材を買い足しに行く。
今日のアルトリアはいつになく荒れている。
おとなしくしている時でも、常に不機嫌そうに歯ぎしりして凄くブサイクな表情になっていた。
食パンを買おうとしたらアルトリアに勝手に、買い物かごの中に菓子パンを詰め込まれた。
他のコーナーでもそうだ。
勝手に野菜コーナーでトマト食べようとしたり、生肉や鮮魚でさえかじり付こうとする。
結局「わかったよ買ってやるから!」でやり過ごしていたら、とてつもない量のお菓子を買わされて帰っていた。
帰り道にアルトリアは買った菓子パンの半分くらいを食べると、夜ご飯もちゃんと食いやがり、買ったお菓子の半分くらいを食べまくった後にやっと寝てくれた。
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警察と救急が到着した。
公園内に人が倒れていると通報が入り、夜の公園に人が押しかけていた。
その様子を野次馬に混ざりながら、シンジと緋咲が見つめている。
「帰らないんですか?」
「まだ近くにマスターがいるかもしれないのよ……。もしかしたら、この野次馬の中にも」
緋咲がシンジにささやき声でいう。
だがもうその可能性も低そうだ。ただ緋咲は現場を見ながら、考え事をしたかっただけだった。
何かがおかしいのはわかる。それが何なのか理解できない。
まず緋咲は、この場からライダークラスの霊力を感じた。
あの消滅したサーヴァントがライダーである可能性は非常に高い。
だが、それ以外の魔法が感じられなかった。
魔法を使わずにあのサーヴァントを殺したのなら理解できる。だが、〝誰が〟サーヴァントを殺したのか。
魔力を使わずにサーヴァントを殺すほどの力。
……〝何が〟の方が正しいのか。
それともう一つ、〝触媒〟の気配を感じた。
触媒はサーヴァントを召喚する時に使うものだ。
それを概念化してある何かがあの場所に散らばっていた。
なぜそんなものがあそこに……
「行くわよ」
「え、あ、はい」
シンジを連れて歩きだす。
緋咲はその場から離れながら考えた
……この聖杯戦争自体が、何かおかしい。