「いやー、あの間森くん、いいこと言うなー。緋咲さんも見習うべきだよ!」
すっかり夕方になった道を歩きながら、シンジは前を歩く緋咲に言った。
「そんなに呑気にしてていいわけ? あの畔野巣って男、あなたを殺すって言ったのよ」
緋咲は呆れながら家に帰る道を歩いていく。
「?」
ふと、緋咲は異変を感じて振り返った。
「どうしたんですか?」
シンジが聞いてくる。
何かがおかしい。
緋咲は辺りを見回して身構えた。
(ーーーー結界の気配だ)
緋咲は走り出していた。
「ぁわ、ちょっと待ってくださいよー」
緋咲がたどり着いたのは家の近くにある、郊外の公園だった。
夕暮れでもう子供たちはいない。
この近くが結界の中心だ。緋咲にはわかる。
魔術師が使う、サーヴァントに人の魂を吸わせる為の魔法だ。
「あ、ここの公園は……」
シンジが楽しそうな声を出す。こんなときによく呑気にいられるものだと緋咲は焦る。
「!」
緋咲は公園の中に入ると、その光景を目の当たりにした。
「あれは……」
シンジも目にしたものに動揺する。
公園の中では、何人もの人が倒れていた。
間違いない、敵のサーヴァントの仕業だ。
みんな生命エネルギーを抜かれている。
「おい! 大丈夫!?」
シンジが倒れている男の子を揺する。ぐったりとしたゴムの人形のようになっている。
「ついさっきよ。ここにサーヴァントがいたんだわ」
その時、「うぐっ……」という呻きが聞こえた。
「緋咲さんあそこ!」
緋咲がとっさに振り返ると、遊具の後ろで倒れている人が動いている。
まさか! まだ生きている!?
緋咲は駆け寄ると、絶句した。
そこに倒れているのは、甲冑を着た戦士だった。
東洋風の顔の若い男。おそらく中国の武人だろう。長い槍を持っている。
「サーヴァント……」
緋咲が呟く側で、シンジはその男にも駆け寄った。
「どうしたんだよ! 大丈夫か?!」
「うっ……」
男は立ち上がらない。
みると、腹から大量に出血していた。刺されたようだ。
「もう無理よ。助からない」
緋咲が言うと、男は彼女を見上げた。
少しづつ消えかけている。
「 、 」
男は消える中、何かを言ったように口を動かしたが、声は出ていなかった。
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