Fate/Scramble   作:DF946

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相乗する二人の邂逅

 シンジは夢を見ていた。

 

 自分が死んだ夢。

 怪物から女の子を守ったら、背中を刺されて死んだ。

 目を開けろ。死ぬな、と言う声が聞こえる。

 

 

 目を開けると、自分が喫茶店の中にいることに気がついた。

 

 

「あれっ……?」

 

「あ、起きた」

 

「やっと気づいたみたいね」

 

 キョロキョロ見回す。

 シンジは四人座りのテーブルで緋咲の隣に座っていた。

 緋咲の前には見覚えのある少年が座っている。

 そして自分の眼の前には、碧眼で金髪の少女が座っていた。

 

「うわっ!!」

 

 シンジは思い出した。

 目の前にいる少女に自分は斬り殺されたのだ。

 

 

「えっ、えっ?!」

 

 シンジは自分の脇腹を触って確認する。

 確かに斬られたはずの傷がなくなっている。

 

「傷は直したわよ。あなたにしては珍しく、役に立ったわね」

 

 緋咲が言う。シンジはそれが命を救われたことに対する礼だとは気づかない。

 

「えっと、どういうこと?」

 

 

 

 混乱するシンジに、緋咲が説明した。

 

 目の前にいる彼らはバーサーカーとそのマスターで、間森くんというらしい。

 狂戦士とは思えない女の子と、バーサーカーを従えるマスターとは思えない純朴そうな少年だった。

 紹介された間森くんが「どうも」とお辞儀をした。

 

「あ、どうも」

 

 

「今は停戦中よ。……令呪を使ってまで助けてもらったから、今は」

 

 緋咲の声が尻すぼみになっていった。

 そうだ。間森くんが令呪を使って止めてくれなかったら、緋咲は死んでいたのである。

 その負い目で停戦するとは、緋咲にも殊勝な心があるんだなとシンジは思った。

 

「でも、なんで助けてくれたの? マスターなのに?」

 

 シンジが聞くと、間森は答えた。

 

「俺、実は聖杯戦争に巻き込まれただけで、本当は戦いたくないんです。だから、マスター同士の戦いを止めようと思って……」

 

「おお!!」

 

 それを聞いてシンジは跳ね上がった。

 

「よかったぁ〜。初めてだよマスターでまともな人に会ったの。あ、俺シンジ。よろしく!」

 

 シンジは握手をすると、間森くんも手をとって笑った。

 

「間森たけるです。もしかして、マスター同士の戦いを止めようとしてる人って、あなたのことですか?」

 

「そうなんだよ! やったー! やっと分かり合える人と話せる!」 

 

 緋咲はやれやれと言うような表情で横を向いた。

 

「でも聖杯で叶えたい願いとかないの?」

 

 シンジが聞くと、間森は小恥ずかしそうに答えた。

 

「はい。なんか、聖杯戦争に巻き込まれた人とかを見てると、他のマスターたちの身勝手が許せないっていうか……、僕の友達も被害にあってて。そこまでして叶えたい夢とか無いし、他の人の命を奪ってまでやる戦争なら、僕が止めたいと思って」

 

「うんうん。全くそのとおりだよなー」

 

 シンジが感心したように何度もうなづいているのを見て、緋咲はボソっとつぶやいた。

「そんな事で邪魔されたらたまらないわ……」

 

 シンジは無視すると、間森の目を見て言った。

 

「俺も同じ事考えてたんだ。……と言うか気が付いたときからその考えが先に頭にあって。

 とにかく、こんな戦いなんかやめるべきなんだ。俺は、この戦いを止めたい。きっとそれはすげー辛い思いをしたり、させたりすると思うけど。それでも俺は戦いを止める。それが正しいとかどうかじゃなくて、俺もサーヴァントの一人として、叶えたい願いがそれなんだ」

 

「…………」

 

 

 緋咲はそれを聞くと、何も言わなくなった。

 アイスコーヒーを一口飲む。

 

 シンジは、間森くんと叶えたい思いが繋がったのを感じた。この子なら一緒に願いを果たせる。そう感じた。

 

 バーサーカーの少女は言葉が解るのか、シンジに対する敵意が強まったように感じた。

 

 

「……そういえば、私に会わせたい人っていうのは?」

 

 緋咲は口を開くと、間森に聞いた。

 

「あ、はい。もう呼んでます。もうすぐ来ると思うんですけど……」

 

 

 

 その時ドアが開き、カランカランとカウベルが音を鳴らした。

 誰かが入ってくる。

 

 見ると、黒いコートを纏った30代の男と、

 トレーニングウェアを着た、赤髪の若い女だった。


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