Fate/Scramble   作:DF946

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襲撃

 シンジは緋咲に連れられ、昨日事件があった大学の構内にいた。

 

 建物が点在する大きな並木道を、リュックを背負った若者たちが歩いている。

 シンジは懐かしいような気持ちになった。

 

 

「魔力の形跡がある……」

 

 立ち並ぶ研究棟を見ながら、緋咲がつぶやいた。

 

「わかるんですか?」

 

 シンジが適当な質問をすると、緋咲も適当に答えた。

 

「ええ、魔力の系統だけね。硝煙反応で銃の種類を予想するみたいな事しか出来ないけど。……昨日、ここでサーヴァント同士の戦いがあったみたい」

 

 

 シンジが緋咲の視線の方向を見てみると、建物の柱が崩れていた。

 

「うわあ。ほんとだ」

 

「令呪も使われてるみたい。……たぶん、アサシンのサーヴァントよ」

 

 緋咲は建物を横目に、歩き出した。

 

 

 

 

      ✴︎

 

 

 

 アサシンのマスターは、学校に来ていた。

 

 帽子を深くかぶり、メガネを外してマスクをつけている。

 

 学校に来たら殺されるかもしれない。でも授業には出なければいけない。

 結局思いついたのが見た目を変えることくらいだった。 

 

(クソ、あいつのせいで)

 

 マスターは悪態をつきながら、次の講義の建物に向かっていた。

 

 

 

 その時、遠くから悲鳴のようなざわめきが聞こえてきた。

 向こうで何かが起こったらしい。

 

 なんだろう。

 マスターはその方向へ向かうことにした。

 

 人の流れに逆らって走っていくと、道の木がズタズタになぎ倒されているのが見えた。

 

(まさか、結界も張らずにサーヴァントが?)

 

 早くアサシンを呼ばなければ……。

 

 気をとられていると、彼は突然の突風によろめいて崩れた。

 

 風の中、何かが歩いている。

 

 黄金の剣を引きずって吠える、金髪の女の子。青いドレスに銀色の装甲を纏っている。

 風の中心は彼女のようだ。

 

(まさか、そんな)

 

 彼は衝撃と絶望に動けなくなった。

 

(アルトリアだ……!)

 

 逃げなければ。見つかったら殺される!

 

 

 あとずさる彼の気配に気づいたのか、バーサーカーの殺意の視線が彼に向いた。

 

 

「うわぁぁああああああああ!!!!」

 

 

 彼はおもわず叫び出していた。

 あまりの恐ろしさに足がすくんで立てない!

 四つん這いのまま逃げ出そうとする。

 

 

 それに気づいたバーサーカーが、彼の姿を見て、目の色を変えた。

 

 アサシンのマスター。写真で見た敵。

 

 彼女はすぐに行動を起こした。

 黄金の剣を振り上げ、彼に襲いかかる。

 

 

 

 

       ✴︎

 

 

 

「うわああああああああああ!!!」

 

 

 突然絶叫が遠くから響いてきた。

 

「!」

 

 それに反応したシンジは、緋咲の顔を見た。

 緋咲も異変に気付いていた。

 

「魔力の気配……。行きましょう」

 

 走り出す緋咲についていく。

 

 

 

 二人が着いた現場は、恐ろしいことになっていた。

 

 並木道の木々が切り倒され、道や標識などもバラバラに吹き飛ばされている。

 

 吹き荒れる暴風の中、剣を持ったサーヴァントらしき女が、人を襲っていた。

 

「あれは、バーサーカー!?」

 

 青いドレスの金髪の少女が、倒れる男子学生を殺そうと剣を振り上げている!

 

 

「危ない!」

 

 シンジは叫ぶと、襲われている男子学生に駆け寄る。

 

「っ! あんた、何を!?」

 

 緋咲が止める間もなくシンジは襲われている彼に飛びかかり、振り下ろされる大剣から間一髪の所をくぐり抜けた。

 

 地面を転がり、学生の無事を確認する。

 

「大丈夫か!」

 

 男子学生が震えながらガクガクとうなづく。

 

 その後ろでまたバーサーカーの少女が、シンジたちに向けて剣を振ろうとしていた。

 

「逃げろ!!」

 

 

 シンジが学生を突き飛ばすと、彼らのちょうど間に剣撃がかすめた。

 

 後ろにあった建物が、剣から放たれた風の波動により砕かれて瓦礫を散らす。

 

 怒りをあらわにしたバーサーカーが口角泡を飛ばし吠えると、今度はシンジに飛びかかった。

 

「うわあっ!!」

 

 

 とっさに防御姿勢になりぎゅっと目を瞑る。

 もう避けられない。死ぬ!

 

 

 シンジが死を覚悟したその時、緋咲が放った魔弾がバーサーカーの左肩にうちこまれた。

 

「馬鹿シンジ! 下がってなさい!」

 

 バーサーカーが攻撃を止められ、後ろから狙撃してきた緋咲を睨みつける。

 

 もう許さない。絶対に殺す、という意思が眼光から滲み出て緋咲を凍りつかせた。

 

 バーサーカーは剣を握りなおすと、緋咲に向かい横薙ぎに振り抜く。

 

 突風の一撃が緋咲を突き倒した。

 

「!!」

 

 ほぼ同時にバーサーカーは飛び上がると、緋咲の迎撃も間に合わないスピードで大剣を叩き下ろす!

 

  

 

 


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