「がはっ!」
突然目が覚めた。
もう朝になっている。
俺は廊下で寝ていた。
で、アルトリアは部屋の真ん中で大の字になって仰臥していた。
「……」
全身が痛い。昨日殴られたせいもあるかもしれないけど、硬い床で寝てたからだ。
アルトリアは寝返りをうつと、抱き枕をぎゅっと抱きしめて幸せそうな寝顔になった。
暴れていない時は天使みたいに可愛いな。
俺は眠い目を擦りながら起き上がると、顔を洗って食パンをかじった。アルトリアに全部とられる前に一枚だけ食べておこう。
俺はアルトリアの寝顔を眺めながらもぐもぐしながら、何か記憶が薄れていくような感覚になった。
なにか、大事な夢を見ていたような気がする。
でもそういう夢って思い出そうとするとどんどん消えてくんだよな……。
「あ」
「ん?」
目を開けたアルトリアと、目が合っていた。
彼女の視線には俺の食べている食パンだけが映っている。
あ、やばい。
逃げようとする前に俺はアルトリアに飛びかかられていた。
押し倒され両腕を押さえ込まれ、口に咥えていたパンをかじりとられる。
「うわー俺のパン! あるから! アルトリアの分もあるから!」
「あぐぐ」
アルトリアは食パンの袋を見つけると飛びかかり、ビリビリに破いて貪り始めた。
あーあ。
今日も俺の朝ごはんは無いようだ。
「まあいいや。アルトリア、今日1コマから授業だから早めに学校行くよ」
ヘルメット2つないから二人乗りできないので、早めに出て歩いて行かなければいけない。
ご飯を食べたアルトリアの準備が終ると、俺も着替えて家を出た。
ーーーーーーー
大学に到着すると、なにか雰囲気がおかしかった。
ざわついてる。
サイレンが聞こえたかと思ったら、研究棟の前に救急車が止まっているのが見えた。
事故かな。
そういえば次の授業、講義室が狭いからアルトリアを連れて行ったら教授になにか言われるかもしれない……。
アルトリアは置いて行くのが正解かな。
俺は植木にパンチしてたアルトリアに声をかけた。
「なあアルトリア、食堂で待っててもらってもいいかな。講義終ったら戻ってくるから、大人しくしてるの、約束できる?」
「がおー!」
通じたのか。よくわからない。
了承ってことにしておこう。
俺はアルトリアに購買で買った菓子パンを一個買ってあげると、食堂に座らせて待たせた。
俺は一人で教室のある棟へ行く。
その前に通り道にある、学科の掲示板を見に行った。
定期的に見ておかないと何か連絡が書いてあるかもしれないからな。
掲示板の前まで来ると、数人の同じ学科の人が、ざわついていた。
なんだろう。
俺も新しく掲示されたらしい手書きの連絡に、瞠目した。
(は?)
次の授業が、休講になっている。
それだけじゃない。次の次の講義も、次の次の次の講義も、ほぼ全ての講義が緊急休講になっていた。
「なん、だよ……これ」
横で掲示板を見ていた知らない奴らが何か言っているのが耳に入った。
「ーーーーの事故らしいよ」
「ーー先生のゼミの人とかもみんな病院行ったんだってーーー」
事故?
俺は駆け出して、救急車の止まっていた研究棟まで走っていった。
着くとそこでは、昏睡した教授達が救急車に入れられる最中だった。
そこには見慣れた顔の友人が、担架で運ばれていくのが見える。
あれは
「山本!」
何が起こったのか分からなかった。
救急隊員に聞いたところ、ガス漏れ事故らしく、この棟にいた人全員が謎の症状で倒れたらしい。
俺は凍り付いた。きっとまだこの敷地内にいる。
ーーーー敵のサーヴァントだ。