「ミリア! あなたのせいよ!!」
シンジは、泣きながら嗄れた声でそう、自分が叫んだのを聴いた。ように感じた。
自分の声じゃない。
少女の声。今より少し若い。
緋咲 煉の声だ。
後ろには炎が。教会のような建物を焼き尽くしている。
目の前には、今より幼いミリアが、建物を見つめながら泣いている。
中には誰か居る。今燃やされて死んでいる。たくさんの、自分の大切な人たち。
全部ミリアのせいだ。
あいつのせいでこうなった。
カーティス先生が。私のせいで死んじゃった。
私のわがままのせいで。
でもミリアが生き返らせようなんてするから!
もしなんでも叶う力があったら! 私は!!
聖杯の力があれば!! みんな殺して、私だけが聖杯を使って!!!!
この手でーーーーーーー!!
ーー ー
ー
「はっ!!」
シンジは布団ごと跳ね起きた。
汗で全身が濡れている。
まずい、まずいまずい!
「火事だーー!!」
シンジは叫ぶとベッドから飛び降り、床にべたっと倒れ、かけずり回った。
「ぅわっちい! なんだこれーー!!! わあーーーー火! 火! 火!」
シンジは寝ぼけ眼のまま壁にあった消火器を手に取ると、ホースを取ってハンドルを握った。
白い粉とガスが迸る。
シンジは目を瞑って所構わずむちゃくちゃにホースを振り回した。
ーーーーーー
「……で、火事の夢を見てこうなったの?」
緋咲は真っ白になった部屋の中を見て、呆れたように腰に手を当てて言った。
「う、うーん……、ははは……」
真っ白になったシンジが今にも怒られる視線を浴びながら空笑いした。
緋咲は溜め息をついた。
「ちゃんと片付けてよね。私は……もうちょっと寝るわ」
ふわぁ、と欠伸をし、パジャマ姿の緋咲は自分の部屋に戻ろうとする。
寝てる間に片付けさせて、悪い夢だった事にするらしい。
「ぅえっ? でももう朝ですよ? 朝ごはんは?」
厚かましくも、悪びれずにシンジは呼び止めた。
「自分でなんとかして。……ふわぁ。昨日から、なんか魔力消費が激しいの。……あなたがずっと実体化してるせいかもね」
緋咲は眠たそうに自分の寝室に戻っていった。
取り残されたシンジが部屋の片付けと朝ごはんと、あと、薄れかけつつあった夢の事を考えた。
そういえば、何だったんだろう、あの夢。
あまりにリアルでーーーーまるで、記憶のような。
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