Fate/Scramble   作:DF946

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駒動かすゲームみたいなもん

 月の見える夜。

 

 フードを目深に被った男が、アパートの壁をよじ登っていた。

 

 男はアパート4階のベランダに飛び移ると、手すりから部屋の中に飛び込んだ。

 部屋の床に着地すると、中で寝転がっていた男がそれに反応する。

 

「マスター。今帰りました」

 

 男がフードを外すと、部屋の中でマスターと呼ばれた男が寝転がってテレビゲームをしていた。

 男のマスターはもじゃもじゃのパーマで、メガネを掛けた大学生だった。

 

「おかえりー。どだった?」

 

 マスターがゲームをしたまま、笑いながら彼に聞く。

 アサシンのサーヴァントである彼は膝を衝き、マスターと対等の目線になって進捗を語った。

 

「アーチャーのマスター暗殺に成功しました。暗殺対象になっていた入月ミリアです。……しかし、そこに他のサーヴァントが居て妨害があり、アーチャーは取り逃がしました」

 

「え。おぉ。やったやん」

 彼のマスターが飄々と言葉を返す。

「アーチャーはいいんちゃう。マスター殺したんやったらアレやし」

 

 マスターがコントローラーを操作すると、画面の中で銃撃音が響き、人が死んだ。

 

「で、アーチャーとか他の奴は誰やったん?」

 マスターはアサシンの顔を見ず、質問だけを投げかけた。

 

「はい。アーチャーはサングラスをかけ、皮のジャケットを着た金髪の西洋人男性。武器は小銃のようでした」

 

「小銃? そいつ、未来の英霊とかちゃうん。……てか、そっか。銃ってアーチャーなんやな」

 

 ボタンを押す。操作キャラクターがまた人を殺す。

 

「後2体のサーヴァントが居ましたが、両方とも女で甲冑を纏った剣士のようでした。一人は赤髪の双剣使い。もう一人は金髪碧眼で金色の剣を振り回していました」

 

「金色の剣……?」

 その言葉にマスターが反応を示す。

「……なぁ、もしかしてそれって、アレちゃうん? セイバーちゃうん!? ちょっと聞くの嫌なんやけど、そいつって青いドレスみたいなん着てなかった?」

 

 アサシンが答える。

「あぁ。着てた気が」

 

 マスターがゲームから目を離しアサシンの顔を見た。

「絶対ぇそれアレやんけ! やっぱそうやー! うわもう嫌やー!! アルトリアやん!! うわーもうマジかっ」

 

「ご存知で?」

 

「あたりまえやろ! アルトリアって、アレやぞアレ、あのー、第5次聖杯戦争の。めっちゃヤバいやつや!」

 

「……どうするんです?」

 

 マスターはまたゲームに戻ると、簡単そうに言った。

 

 

「決まってるやん。ーーーーマスターを殺せば楽やろ」

 

 

 ニヤリと笑う。

 

 ゲーム内で、銃声が鳴る。


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