Fate/Scramble   作:DF946

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話し合いで解決しよう

 緋咲は苛ついたような足取りで、路地裏を進んでいた。

 シンジがはぐれないように後を追ってついていく。

 

 2人は手掛りを求め、別の事故現場へ向って行くところだった。

 

 

「待って下さいよ。緋咲さん、なにがあったんすか? さっきの人達は」

 

 シンジが聞くと、緋咲は、はぁ……、と溜め息をついて答えた。

 

「なんでもない。私のライバルみたいなもんよ。あなたにとっては殺すべき敵よ」

 

「敵って……でも、友達じゃないのかよ! なにがあったのかしらないけど、闘うなんて間違ってる! 同じ目的を持って闘ってるんだしさ、話し合って強力すればいいんだ」

 

 緋咲は呆れたように「はぁ?」、とシンジを見た。

 

「あなた、本当に分かってないみたいね。殺し合って最後に残らなきゃ聖杯の力は使えないのよ。聖杯戦争に参加した時点で、私たちが殺し合うのは必然でしょう?」

 

「そんなの……絶対間違ってる。俺が止めてやるよ。聖杯戦争なんて」

 

 緋咲は綺麗な眉根を寄せて、シンジを睨む。

 

「……馬鹿じゃないの」

 

「え」

 

「手駒に過ぎないあなたに、私の願いは邪魔させない。……あなたやっぱり、私のサーヴァントに向いてないわ」

 

 シンジはそれを聞いて、ぼそっと呟いた。

 

「……馬鹿なのは、あんたの方なんじゃないのか」

 

「?」

 

「最後の一人になったら願いが叶うなんて、誰に教えられたのか知らないけど。それに踊らされてるだけなんじゃないのって事」

 

「……」

 

 

 

 その時、突然背後に感じた気配に、緋咲は「はっ」と振り返った。

 

 シンジもその反応に気付き目を向ける。

 

 

 彼らの背後には、突然姿を現した男が、こちらを見据えているところだった。

 

「ミリアのアーチャー……」

 

 男は金髪長身、ヘッドギアのようなサングラスをかけている、若い外国人。ーーさっきの戦いで緋咲に銃を向けていたサーヴァントだ。

 

「何の用?」

 

 緋咲が懐の拳銃に手をかけ、身構える。

 気付くと、周りに人は誰も居なくなっていた。

 

 アーチャーが爽やかな笑顔で口を開く。

 

「マスターに、ひとけの無いところで殺して来いって言われてね」

 

「!?」

 

 その瞬間、緋咲は銃を引き抜きその男へ向けていた。

 しかしその直後、ノーモーションで緋咲との間合いを詰めていたアーチャーによって腕を掴まれる。

 

 瞬く間に緋咲は突き飛ばされ、近くにあったコンクリートの壁へと押し倒されていた。

 

「緋咲さん!」

 

「ごめんねお嬢さん」

 

 壁に押し付けられた緋咲の顔と、アーチャーのハンサムな横顔が近付く。

 アーチャーが耳元に口を近づけると、「くっ」っと目を瞑って緋咲は顔をそらした。

 

「倒せって命令されたのは君じゃないんだ」

 

 アーチャーは緋咲を離すと、シンジの方へ身体を向けた。

 後ろで緋咲が倒れ込む。

 

「お前、サーヴァントだろ? なんのクラスか知らないけど、ーー……死んでもらうぞ」

 

「!」

 

 アーチャーは言い放つと、シンジに銃を向けた。

 

 シンジが間一髪でゴミ捨て場のフェンスの裏へ隠れると、銃弾の当たったゴミ捨て場が大爆発を起こして粉々に吹き飛んだ。

 

「うわぁっ! ちょっと! ヤメロ!!!」

 

 もう一発発射された銃弾がシンジをかすめ、背後で同じ大爆発がおこる。

 

「わかったから!! 負けた! 話し合おう!!!」

 

 尻餅をついて逃げ回るシンジを見て、アーチャーは苦笑いをした。

 

「お前、本能にサーヴァントか? まあいいや。さようなら」

 

 アーチャーが狙いをつけ、引き金に指をかける。

 

 その瞬間。

 

 

「うっ!……?」

 

 

 アーチャーの動きが止まった。

 

 後ろを振り向くと。

 アーチャーの背中に、ナイフが刺さっていた。

 

「おまえ……」

 

 アーチャーが緋咲を睨む。緋咲が背後からナイフを投げたのだ。

 

「サーヴァントがこの程度で倒せると思うなよ」

 

 アーチャーは背中に刺さったナイフを抜こうとして、

 ガクッと膝をついた。

 

「マスターがその程度だとも思わない事ね」

 

 緋咲の嘲笑にアーチャーが目を見張る。

 

「毒?!」

 

「残念、それは魔力吸収の呪い(マナドレイン)よ。どんどん力を吸われてくから気を付けてね。ついでに自分じゃ手の届かない背中の真ん中に刺してあげたから、あなたのマスターに取ってもらいに行った方が良いんじゃない?」

 

 それを聞いてアーチャーは悔しそうな顔をしたあと、苦笑いした。

 

「あーあ。ちょっと、マスターに怒られてくるか。……またなお嬢さん」

 

 言い残すとアーチャーは。フッと掻き消えるように居なくなった。

 

 

 シンジは腰が抜けていた。


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