Fate/Scramble   作:DF946

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接触

 彼ーーーーシンジは大きなバイクの上で、緋咲の腰にしがみついていた。

 轟音とともに風を切り車道を疾走する。

 

「緋咲さん早いよ! ちょっと! うわーーーー!!」

 

 

 

 

 目的の場所に到着したときにはシンジはヘトヘトになり、バイクから降りてへたれ込んでいた。

 

「ついたわよ」

 

「はぁはぁ……緋咲さん、運転荒すぎ……はぁはぁ……」

 

「サーヴァントがあのくらいの早さに耐えれなくてどうすんのよ。いいから行くわよ」

 

 緋咲がヘルメットを置いて歩き出す。

 

 シンジも慌てて後をおった。

 

 

 

 

 2人が到着したのは今朝テレビで映されていた事件の現場だった。

 

 道路沿いにあるパン屋らしいが、今は店員もその場に居た客も全員昏睡し病院へ送られている。今は営業中止中だ。

 

「ここね」

 

 店の中ではガス会社の職員らしき人達が点検をしている。

 

「なにか、サーヴァントが残した形跡があるかも……」

 

「なるほど……」

 

 

 しばらくシンジ達が店の周りをうろついていると、突然バイクのエンジン音が近付いて来た。

 

「?」

 

 彼らの居るパン屋の前で止まったバイクに乗っている運転手が、じっと彼らの様子を窺っていた。

 

 シンジがそれに気付き、緋咲を呼び止める。

 

「緋咲さん」

 

「え?」

 

 緋咲と、そのバイクの人物とが、目を合わせて止まった。

 

 バイクの人物はヘルメットを被っていて顔が見えないが、緋咲はじっとその人物を睨みつけている。

 

 何者なのか、考えていると、唐突にバイクの人物が言葉を発した。

 

 

「ーー緋咲、煉? ……ふん、そういうこと。あなたも聖杯戦争に参加してたんだ」

 

 聖杯戦争の事を知っている!?ーーシンジは身構えた。

 

 

「あなたは……まさか、ミリア?」

 

 緋咲が驚いた声を出すと、ミリアと呼ばれた女がヘルメットを外した。

 

「まさか同じ事を考えているなんてね。おどろいたわ。……ふふふ、あなたも魔術の痕跡からどのサーヴァントが犯人なのか探りにきたんでしょ」

 

 ヘルメットを外した女は、緋咲と同い年くらいだった。ブロンドの長髪を靡かせる、西洋風の顔立ちの女だ。

 

「それにしても、あなたまで聖杯が欲しかったなんてね」

 

「うるさい」

 

 緋咲は突然コートから拳銃を取り出すと彼女へと突き付けていた。

 

「私も遭えて嬉しいわ。聖杯戦争を名目にあなたを殺せるんだものね!」

 

 シンジは突然の事に動揺して緋咲をなだめた。

「えっ!? ちょっ、緋咲さん?! そんなの出しちゃダメだって! 人に見られちゃうよ!」

 

 銃を向けられたミリアは、怯みもせずあざ笑うかのように言った。

 

「あらあら、凶暴なお姉さんですね。まさかこんな所で闘ったりしないでしょ? 警察に捕まるわよ」

 

「あなたを殺せるなら関係無いわ」

 

「……本当に、殺せると思ってるの?」

 

「!?」

 

 

 突然、空気の中から実体を現したかのように、ミリアの前に男が現れた。

 金髪で長身の外国人。妙なデザインのジャケットを着ていて、ーー銃を緋咲に向けていた。

 

「殺さなくていいわアーチャー。ここは人目があるから」

 

 アーチャーは緋咲の前に立ちはだかったまま銃を向け続けている。

 

 アーチャーの後ろで微笑みながら、ミリアがシンジに目を向けた。

 

「そういえば、そのお兄さんは誰なの? ……まさか、あなたのサーヴァントだったりする?」

 

 ミリアは半分冗談のつもりでシンジの事を聞いてくる。そのとおりサーヴァントだが、シンジはどう答えていいのか分からなかった。

 

「そんなはずないでしょ。仲間のマスターよ」

 

「へぇ……」

 

 ミリアが品定めするようにシンジを見つめていた。

 

「4対2よ。逃げた方がいいんじゃない?」

 

 緋咲に言われ、ミリアはとんでもないという顔をする。

「私は戦う気はないわ。すぐ帰るもん。……お店を見てからね」

 

 緋咲は銃を下ろすと、ミリアに背を向けた。

 

「行くわよシンジ。早くしなさい」

 

 ずんずんと歩いて行ってしまう。

 

「え、ちょっと、まってよ」

 

 慌ててシンジも、少しだけミリアに会釈をしたあと、駆け足で緋咲の後を追って行った。


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