仕事が忙しくなりそうで三日くらい投稿できなさそうなので、今の内に投稿貯めておく。
西の102番道路、異常はそこで起こっていた。
湖…………と言うべきか、水たまりというか。
ゲームでも街から出てすぐのところに水辺があったが、現実だとそれは湖らしい。
んで、その湖が綺麗に凍っていた。
さらに湖の周囲では霜が舞っている。
「凄く分かりやすくこおりタイプの予感がする」
「…………どうするのよ」
もしここにいるのが自身の手持ちの一体だとすれば…………多分あの子だろうなあ。
「不味いなあ…………正直エアと相性最悪なんだけど」
「そう言ったって、行くしかないでしょ」
ヒトガタなんてそうそういるはずがない。しかもこの辺りにこおりタイプのポケモンなんて野生に存在しない。と、なると自身の手持ちである可能性が非常に高いのは確かだ。
すでに先行したトレーナー数名が返り撃ちにあっているらしい。
「エア」
「なに?」
「りゅうのまい、六回積んでおいて」
「分かったわ」
野戦は公式戦と違ってこういうところが便利だ。こっちの世界に来て知ったが、わざわざいると分かっている敵に、対峙してから変化技を積んでやる必要など無い。
そして多分この先にいるであろう相手を考えれば。
「と、言うか…………正直、戦う必要あるの? って思うんだけど」
そんなエアの問いに、まあね、と答えつつ。
「でもなあ…………何か嫌な予感がする」
ほとんど直感ではあるが、全然平和裏に終わる気がしない。
凍った湖に近づいていく。
そうして視界の中に…………
濃淡をつけた二色のエメラルドグリーンが全身を分けていた。髪も前髪と後ろ髪で濃淡が分かれており、その頭部には耳にも見える突起がついていた。
淡いエメラルドグリーンのワンピースの上から濃いエメラルドグリーンのスリーブレスコートを羽織り、濃いエメラルドグリーンに彩られたブーツのようなものを履いた十五、六くらいの少女がそこにいた。
ああ…………うん、事前に多分そうだろうと思っていただけに、今度はすぐに理解できた。
「…………シアだ」
「あの子か…………厄介ね」
湖の温度は極端に低い。マイナスとまではいかずとも、氷点下零度くらいにはなっていそうだ。
多分だが
グレイシアのシア。それが彼女の名前。
例えゲームでは存在しない野生のグレイシアなんてものがいたとして、こんなところにいるはずがない。いるとしたら浅瀬の洞穴だろうから。
とすれば、間違いなく自身の手持ちだろう。
そして問題が一つ。
「うー!」
自身を認めたシアが威嚇を始める。
「…………気づいてない?」
「多分そうね…………きっとまだ目が覚めてないのよ」
ヒトガタである以上、人の言葉を語れるはずなのに、それを語らない。まるで獣のような声でこちらを威嚇する彼女。
恐らく自意識に目覚めていない…………もしくは、眠っているか。
自身と出会う前のエアと同じ状況なのだと思う。
だとすればどうして自身を前にしても目を覚まさないのか。
「もしかしてだけど」
「何よ」
「エアと出会った時、ぶつかったよね? あれが切欠だったんじゃないかな?」
トレーナーによる物理的な接触…………それが意識を呼び起こす切欠なのではないだろうかと推測する。
「…………あそこまで連れていくの? アンタを?」
冗談だろ? と言わんばかりの様子のエアだが、シアの姿を数秒見つめて。
「…………仕方ないわね、あの子のためだもの」
それにそれがハルトのためでもあるし…………ぼそっと呟いた言葉が耳に入り、思わず口元がにやける。
そしてそれに気づいたエアが、顔を真っ赤にして怒る。
「だから、なんでアンタは毎回人がこっそり言ってるのに聞いてるのよ!」
「だってぇ~、人の目の前で言ってるし~?」
「そのウザったいキャラ止めなさいよ!」
「怒っちゃって、エアちゃん可愛い~」
「うっさいこのバカ! バカバカバカ!」
そうしてエアをからかって少しだけ緊張を解す。
「倒すのと倒さないの、どっちが簡単だと思う?」
「倒すほう」
そうして問うてみれば、即答でエアが返してくる。
「オッケー…………ならその方向性で行こうか」
「任せるわ…………好きように扱いなさい、全部こなしてあげるから」
特性のじしんかじょう、がこういう部分で出ているのだろうか、なんて少しだけ考えながら。
単にパーティーのエースとしての自負なのだと結論を出す。
「頼りにしてるよ、
「任せなさい、
* * *
ところで、ポケモンにはそれぞれ得意とすること、不得意なこと、と言うのがある。
酷く極端な例を出すと、ボスゴドラと言うポケモンとハピナスと言うポケモンがいる。
この二体のポケモンは、とある点が酷く似通っており、それでいて全くもって真逆である。
ポケモンには種族値と言うものがある、その種族全体の基本的な能力、才能であり、個体値とは違う、種族としての才能を差す。
だいたいにして100をラインとして、超えていれば一線級、120を超えれば最高ライン、そして140を超えるような能力はほぼ特化だ。
種族値は種族の最も根源的な強さを分かりやすく示しており、有り体に言って。
この種族値の合計が高ければ高いほど強いポケモン、と言う傾向がある。
廃人たちから600族と呼ばれるポケモンたちは、この種族値の合計が600ちょうどになる数種族を示す。
600族は、伝説、準伝説、幻等の
故に廃人たちはこの種族値の高いポケモンを挙って集めようとするのだが。
かといって種族値さえ高ければ強いと言うわけでも無いのがポケモンの奥深さでもある。
最初の話に戻すが、この種族値によって、ポケモンにはある程度の得手不得手が見えてくる。
例えに出したボスゴドラの場合、HP70、こうげき110、ぼうぎょ180、とくこう60、とくぼう60、すばやさ50で合計種族値530。
600族には届かずとも、500を超える種族値は非常に優秀だ。
何よりもぼうぎょ180と言う数値は驚嘆に値する数値であり、並の攻撃技ではびくともしないだろう。
だからと言って、ボスゴドラが絶対無敵かと言われれば、全くそんなことは無い。
ポケモンの攻撃には『こうげき』ステータスを参照する物理技と、『とくこう』ステータスを参照する特殊技の二つがある。
ボスゴドラは確かに物理技に限って言えばかなり硬い。だがとくぼう60の数値を見れば分かる通り、特殊攻撃技には非常に脆い。いわの弱点であるみずは非常にポピュラーなタイプであり、ボスゴドラがいると分かっていれば狙われるのは分かりきっている。すばやさ50と言う遅さも先手が取れないままに一撃で倒されることとなる。
そんな時にいれば活躍できるのがハピナスである。
ハピナスの種族値合計は540。一見するとボスゴドラよりも高いのだが、そのステータスはアンバランスの一言に尽きる。
HP255、こうげき10、ぼうぎょ10、とくこう75、とくぼう135、すばやさ55。
見て分かる通り、物理技に非常に弱い。だが逆に特殊技に滅法強い。しかもタイプがノーマルだけなので、かくとうタイプ以外は等倍…………ばつぐんもいまひとつも無しで受けることができる。
ポケモンの得手不得手は大多数は種族値によって分けられる、例えば先ほど上げたハピナスに物理技を持たせても、ほとんど火力は出ない。意味の無い無用の長物となり下がる。
だが逆に、逆にだ。
一切の火力ステータスを捨ててみてはどうだろう。
ノーマルタイプと言うのは非常に幅広い範囲の技を覚える傾向にある。
だから“でんじは”や“どくどく”などで相手を状態異常にしてみたり。
“タマゴうみ”などの回復技や“みがわり”などの補助技を持たせてみたり。
“ちきゅうなげ”などの固定ダメージによるステータスの影響を受けない攻撃技を持たせてみたり。
ポケモンの長所を生かし、ポケモン個々ではない、六匹全員を使って一つの戦術を作り上げる。
それがポケモントレーナーが言うところの。
ポケモンパーティと言うものである。
* * *
グレイシアのシアは、受けポケである。
受けポケつまり、防御性能と生存能力を上げて相手の攻撃を受けてアタッカーへのダメージを減らす役割を持ったポケモン。
元々グレイシアのぼうぎょの種族値は110とそれなりに高く、とくぼうも90と悪くない。努力値もその方向で調整してある。
故に攻撃性能については低い…………かと言われると実はそうでもない。
努力値無振りでも、グレイシアのとくこう種族値は130ある。
つまり。
防御性能への努力値無振りの完全アタッカーのエアにすれば、努力値無振りは同じ。
とは言っても、受けポケとして使っていたのだ、攻撃技は一つしか入れていない。
その一つが、エアにとっては最悪なのだけれど。
収束した冷気がシアから放たれる。
「避けろエア」
ゲームならばほぼ必中の命中100技。けれど、現実ならば直線に飛んで来る攻撃だと分かっていれば。
「こっのおおおおおおおお!」
ギリギリで避けることはできる。問題は…………これ以上距離を詰めたら避けるより先に当たってしまうことで、つまりこれ以上は近づけないことだが。
まあ、本来なら、とつくが。
「このために六回も積んだんだ、行けるな!?」
「あったりまえ、でしょう!!!」
「なら、覚悟決めろ、エア!!!」
「任 せ な さ い!!!」
超高速でエアが動く。りゅうのまいはこうげきとすばやさを一段階上昇させる補助技だ、ポケモンの補助技は上にも下にも最大六ランクの計十三ランクと上限と下限が決まっている。
世代ごとに補助技のランクによる能力値変化量も違ったりするのだが、ここがオメガルビ―やアルファサファイアを元にしていると仮定するならば。
六段階能力上昇を積んだ際のブースト値は
まだ低レベルとは言え、それだけ積めばかつての能力の半分程度にはなる。
そして恐らくシアも同じようにかなりの低レベル。
故に、振るわれる一撃は絶対先制の一撃。
そして、受けポケモンの防御性能をまとめて薙ぎ払い、撃ち貫く必殺の一撃。
「おんがえし!!!」
振るわれた一撃がシアへと迫り。
「みがわり?!」
瞬間、致命的な考え違いに気づく。
野戦ならば事前に積み技が使える、そう考えていた。
ならば。
必殺の一撃によりみがわりが消滅する。
けれどその奥の本体たるシアはまだ無事であり。
そうして。
れ い と う ビ ー ム !!
ドラゴン、ひこうタイプであるエアにとって致命の一撃が放たれる。
「エア!!!」
ほとんど悲鳴染みた叫び声を上げる。無理だ、耐えられるはずがない、エアはアタッカーだ、四倍弱点どころか二倍弱点ですら落ちる。ましてや今は
エアにれいとうビームが直撃し、跳ね飛ばされるかのような勢いで宙を舞い。
それでも、それでも、だ。
「エア!!!!!! やれえええええええええええええええええええ!!!」
任せろ、そう言った彼女を信じる。
それで何かが変わるわけでも無くとも。
それでも。
彼女が倒れるまで、決して諦めることはしない。
「叫ばなくても…………聞こえてるわよ!!!」
宙を舞いながら、エアの視線がシアを射抜く。
そうして、苦痛に歯を食いしばりながら、口元がそっと呟く。
りゅう…………せい……ぐん……!!
直後、上空から…………否、空の彼方から突如複数の隕石が飛来する。
真上からの攻撃、それを予想だにしていなかったシアへとそれは次々と直撃し。
「あ…………ぁ…………」
何かを呟こうとしたまま、シアが倒れる。
「はん…………私に勝とうなんて…………百年早い、わ…………よ…………」
それを確認し、満足気に笑みを浮かべたまま、エアもまた倒れた。
「……………………終わった?」
後に残ったのは、自身だけ。そしてすぐに気づく。
「そうだ、エア! シア!」
すぐさま…………近い方にいたエアのほうに駆け寄る。
「大丈夫か!? エア!」
「うる…………さい…………私より…………シアを、さっさと…………」
最後まで呟く前に、エアが力尽きる。気を失っただけらしく、ちゃんと呼吸はしている様子に思わずほっとする。
そっとエアを地面に横たえると、凍った湖の上で横たわるシアへと近づく。
「…………シア?」
そっと、その頬に触れる。冷たい…………けれど、暖かい。確かに生きている。
その時、僅かにシアの瞼が開かれ。
「…………ます……たあ……?」
呟き、そのまま力が抜けていく。
「あ、おい……………………くそ、寝やがった」
すうすうと、寝息を立てる少女にはぁ、とため息を一つ吐き。
「シア…………ゲットだ」
ボールを押し当て、そのまま捕まえた。
クールビューティーとは一体何なのか、実は自分でも良く分っていないけどとにかくグレイシアのシアちゃんです。
作者がオメガルビ―買った時に作ってみたかったポケモンがグレイシアだった。
と言うわけで今回はロリじゃない(
だいたい十五、六くらい? あとオッパイそこそこ大っきい。
あと役割云々のやつは、半分くらいは適当なので聞き流してくれると嬉しい。それなりに役割について勉強してるけど、別に廃人ってほどやってるわけでもないし。
ついでなので今まで出てきたポケモン紹介
名前:エア(ボーマンダ) 性格:いじっぱり 特性:じしんかじょう
技:「りゅうせいぐん」「りゅうのまい」「じしん」「おんがえし」
物理アタッカーにして、ハルトがパーティのエースとしたポケモン。
まあ技構成みればだいたいどういう役割か分かると思う。ぶっちゃけボーマンダはかなりテンプレ出来上がってる感あるので、そんなに違いは無い。
いじっぱ=ツンデレとかそんな公式があるのはこの子だけ。
名前:シア(グレイシア) 性格:おだやか 特性:ゆきがくれ 持ち物:じゃくてんほけん
技:「れいとうビーム」「ねがいごと」「あくび」「みがわり」
物理受け兼特殊アタッカー。みがわり張って、あくび、して受けたダメージはねがいごとで回復が基本。弱点突かれたらじゃくてんほけんでとくこう上げてれいとうビーム。
ただし炎ポケは天敵なので基本相手にさせない。
みがわりの代わりにあられ積もうかと思ったけど無駄に味方にもダメージ来るんで削った。
別におだやかはクールビューティーの代名詞ではない。クールビューティーが何かも正直良く分っていない。
あともう一人おだやか枠いるけど、そっちは割と陽気な子。