予定ならば本来、すでにドールズが完結して、クライムが始まっている予定…………だったんですけどねえ(
何故まだ終わってないんだろうこの小説。
人がポケモンと共に歩んできた歴史の中で、人とポケモンは様々な関係性を作り出してきた。
ポケモントレーナーという形は人とポケモンとの協力関係の上に成り立っているその一つの極致であり、互いが力を合わせだすことによって1+1を10にも20にも引き出すことができる。
その上で。
トレーナーとポケモンがどうやっても抗うことのできない圧倒的な脅威というものはどうやっても存在する。
例えば自然災害。
大雨、日照り、嵐などの天候から、噴火や地震、洪水、津波まで。
トレーナーが引き出したポケモンの力を持ってしても被害を抑えることはできても、無くすことは不可能だ。
そして、だからこそ、伝説のポケモンというのは恐れられる。
災害の化身、超越存在、理の支配者。
嵐を呼び海を荒らし、大地震で大地を崩し、そして。
空を埋め尽くすほどの流星を呼び込む。
* * *
空から降り注ぐ星々に、宇宙センター内を走りながら必死に思考を巡らせる。
一つ二つならどうにでもなる、だが空を埋め尽くす雨のごとき流星、まさしく流星雨としか言いようのないそれを前に、一つ二つどうにかしたところで残りの千を超えるだろう星の雨がトクサネを滅ぼす。
トレーナーとして、最高位の位置に立っているという自負がダイゴにはある。
だがそのダイゴをして、この圧倒的な現実に抗う術が一切思い浮かばない。
所詮は人の中の最高位。伝説のポケモンを相手にその事実がどれほど意味を成すか、と言ったところか。
だからと言ってこのまま座して待つだなんてこと、あり得ない。
ダイゴだけなら、或いは生き残ることは可能だろう。
自分の手持ちたちをフルに活用すれば、降り注ぐ流星を耐えきることも可能だろう。
代わりに、それ以外は全て塵と化すかもしれないが。
だがそれは許容できない。少なくとも、自分の目の前でそれを許容するような精神はダイゴは持ち合わせていない。
じゃあ、どうするのだ。
その答えをけれどダイゴは持ち合わせていない。
足りない、全く持って足りない、足掻くだけの力が足りない。
「コメット!」
「…………了解」
それでも、何もせずにはいられない。
宇宙センターから飛び出すと同時に、空へ向かって自身の持てる全てのボールを投げ、流星の迎撃を命ずる。
それでどれだけの数対処できるか、など考えてもたかがしれているが。
「ここにいるのは僕一人ではないからね」
浜のほうから、光が煌いた。
それが誰の物か、なんて考える間も無く、それに続くように再び光が煌く。
一つ、二つ、三つ、段々と増えるそれを街中から飛んでいく。
最初にレックウザが現れた時点で当然ながら大半の住人たちを避難させている。
そのためトクサネシティジムや宇宙センターで避難した人々を匿っている現状で、街中に残っている人間などトレーナーたち以外にあり得ない。
たまたま滞在していたフリーのトレーナーかもしれないし、トクサネシティジムのジムトレーナーかもしれない。
ただ一つ、分かっているのは、誰もかれもこの状況に絶望することなく、懸命に戦っているということ。
例えどれだけ絶望的状況であろうと。
人は屈しない。
例え伝説のポケモンであろうと。
何かできないか、と抗い続ける。
――――それでも、どうにもならないからこそ、天災なのだが。
* * *
――――そして、そんな天災に唯一対抗できるのが、同じ天災だけだというのも事実。
逃げたレックウザを追ってトクサネまで来てみれば、降り注ぐ流星の雨。
そんな分かりやすい目印にグラードンが吼える。
「ぐおらあああああああああ!!! このヘチマァ! 逃げてんじゃねえぞ!」
“ちかくへんどう”
どん、と拳を大地へ叩きつけた瞬間、トクサネの街中の地面が杭のように飛び出し、伸びていき、空から降り注ぐ流星を撃ち貫いていく。
トレーナーたちが僅かに削った星の雨を、一息に半数近く撃ち落しながらグラードンが吼える。
それでも、まだ半数は残っている。
「うっさいなー、あのトカゲ…………まあ癪だけど同感。諦めてそのまま大人しく倒されなよ」
“いてのしんかい”
海上に立つ、という不可思議な様相を呈しているカイオーガがぱちん、と指を鳴らせば波が荒れ狂い、圧縮され、凝縮され、弾丸となって空へと射出される。
次々と撃ちだされる凍水の弾丸が降り注ぐ流星を次々と撃ちぬいていき。
空を覆うほどにあった流星の大半が消滅する。
だが、それでも幾ばくかの撃ち漏らしがトクサネシティへと落ちる。
そもそも、グラードンもカイオーガも、邪魔だから空の流星を撃ち落しはしたが、トクサネシティを守る気などさらさら無い。未だにトレーナーに従っているわけではないのだ、目的はレックウザを倒すことであって、人を、街を守ることではない。
それでも街や人を巻き込んだ攻撃をしなかったり、見捨てなかっただけまだマシと言えよう。
いくつかの流星が落ちていく。
大気を抜ける際に半ば燃え尽きかけた流星はけれど、その小さな欠片一つで地表に大きな衝撃をもたらす。
直後。
爆音にも似た轟きがトクサネシティを襲った。
* * *
「なんだ…………そりゃあ!?」
「なっ…………」
暗雲の空は非常に進みづらい。
ミシロからトクサネシティまでの距離はかなりある、トクサネシティなどホウエンの東端と言っても過言ではないのだから、仕方ないのかもしれないが。
夜かと見間違うほどの視界の悪さのせいで、どうにも速度を上げ切れないまま進んではいるが、けれどそれにしたってもう随分と長い時間飛び続けている、つまり。
ようやくトクサネシティが見えてきた。
トクサネシティにはトクサネ宇宙センターという巨大な施設があるので、特に良く分かる。
この暗さのせいでどこもかしこも朝の時間帯だというのに明りをつけているが、宇宙センターの規模でそれをすれば、碓氷晴人の記憶の中にある、ライトアップされた東京タワーを彷彿とさせた。
そうして、その光のタワーを見ていたからこそ、それに気づいた。
暗雲を突き破り落ちてくる無数の何かに。
遠くから見ている分には暗くて良く分からないが、けれど直後に街の各地から放たれた技…………恐らくポケモンの技だろうそれらが飛来する何かを撃ち落していき、それでも撃ち落された数の数十倍に匹敵する飛来物が続々と降り注ぎ。
トクサネの街から生え出でた杭のような何かに撃ち落され、直後に海から打ち上げられた何かによって残った飛来物も大半が消し飛ぶ。
さらに一瞬の間の後、落としきれなかったソレがトクサネシティへと堕ち。
「不味い!」
音を立てて宇宙センターの上階の一部が弾け飛び、弾けた建物が地上へと落ちていく。
さらに宇宙センターのビルを貫通したソレがその奥のロケット発射台にまで衝突し、だぁぁぁん、と派手な音を立てる。
「エア!」
「分かってる」
最早こうなれば一刻の猶予も無い。最早目的地を視認しているのだ、もう速度を抑える必要もないと、エアがさらに加速する。
その時、
一瞬、その黒に視線を取られ。
それが何か理解すると、呼吸が止まる。
「ここで動くか! レックウザ」
黒がぬるり、何故か地表すれすれを滑るような動きでレックウザがトクサネの街の中央を抜けていくのが見える。闇の中で蛇行しながら進むその姿は龍というよりは巨大なハブネークか何かのようだった。
一体どこへ向かっている?
先ほどまでの荒れようが嘘のように、暴れることもせずに這っているというその光景は酷く不可思議であり、不安を煽った。
地を這うレックウザと空を飛ぶこちら、彼我の差はぐんぐんと縮まっている。
あと少し、あと少し、レックウザとの距離を縮めるほどに時間が長く感じられる。
最早視界にはレックウザしか映っていなかった。
その動きを追い、視線はさらにトクサネの北へと向かい。
「何っ?!」
何故そこへ、という疑問と共に、そこにいるだろう多くの人たちのことを想像し、不味いという思いが同時に沸き上がった。
「急げ、エア!」
「もう限界一杯よ!」
叫んでみても、エアにだって限度がある。
否、エア一人ならこの程度は限度でも無いかもしれないが、自分を乗せた状態で出せる最高速度がここまで、ということなのだろう。すでに轟々と風を切る音が耳鳴りとなってうるさいくらいの速度が出ている。
これ以上の速度は出せない…………だが最早レックウザは宇宙センターの目の前にまでたどり着いており。
――――そのまま宇宙センターの脇を抜けていった。
「…………な、に?」
自身の予想とは反したその光景を、一瞬理解できずに戸惑う。
だがそうこうしている内にレックウザはさらに奥、ロケットの発射台へと近づき。
――――装置に固定されたロケットへと齧り付いた。
* * *
「最…………悪だ!」
突如街のほうから現れたレックウザに驚き、宇宙センターには近寄らせまいと入口前に陣取ってみればレックウザはその横をすり抜けていった。
一体何が目的か、そう思考を巡らせ、その後を追い、ロケットへと齧り付いたその姿を見て気づく。
「
叫ぶと同時に自身の相棒が動き出すが、けれど先ほどまで空の上で流星の対処に回っていた分だけ、出足が遅れている。
最早あの龍の暴挙は止めようがなかった。
がきん、と。
龍がロケットを固定していた金具や装置を引きちぎり、ロケットが傾き、大地へと叩きつけられる。
どだぁぁん、と転げ落ち、一部破損し、パーツが飛び散ったロケットをさらに龍が尻尾を叩きつけ、破壊し続ける。
ころん、と。
やがて中から薄く蒼白く光るガラス球のような物体が飛び出す。
「キリュウウウウゥゥァアアアアァァァァ!」
それを見つけた瞬間、レックウザが歓喜の声を挙げる。
そうして、地面に転がるそれを口へと咥え。
「止めろおおおお!!!」
その光景を見て、叫ぶダイゴの静止の声などお構い無しに。
――――飲み込んだ。
* * *
たどり着いたその時にはすでに遅かった。
バラバラになったロケットの残骸に囲まれながら、レックウザがそこに居た。
「なん…………だ、これ」
メガシンカともまた違う、ゲンシカイキでも無い、じゃあ一体何だと言われれば答えに困窮するより他に無い。
ただ一つ分かっていることは。
「不味い、ぞ。これ」
何かやばい、それだけは分かっていた。
呟く自身の言葉にけれど隣のエアは反応も返さない。
ただじっとレックウザを見つめ、気を張り詰めさせている。
何かやばい、それが何かは分からないがこの蒼白い光が無関係とも思えない。
「下がれ!」
直後、背後から聞こえた声に、振り返ろうとして。
それより早くエアが自身の襟を掴み、大きく後退する。
そして。
「キリュウウウウアアアアアアアアアアアア!!」
レックウザがその全身の光を強めながら、咆哮を上げる。
同時に、その全身につけられた傷が内側より溢れた光によって塞がれていく。
グラードンが、カイオーガが付けた傷が、全て塞がれていく。
その光景を唖然としながら見ていると、やがて全ての傷を塞ぎ快癒したレックウザが再び吼え。
どん、と爆発でも起きたかのような暴風をまき散らしながら上空へと飛んでいく。
その姿が空の暗雲の中へと消えていくと同時に。
――――
文字通り、ホウエンの空を覆っていた暗雲が消え去り、暑い夏日がホウエンを照らした。
空を見ても、地上を見ても、海を見ても、まるで何の異常も無い。
ただ、破壊された建物や道路を除けば。
まるで嵐のように襲来し、そうしてレックウザは去っていた。
「…………一先ず、危機は去った、と考えるべきか?」
これでホウエンは救われた、なんて思考を停止したことは言わない。第一未だに巨大隕石の件だって片付いていないのだ。
しかもロケットが破壊されてしまった以上、早急にレックウザをどうにかする必要がある。
「前途多難…………内憂外患…………全く」
宇宙よりの隕石、空には狂った龍神、そして恐らく敵に回ったキーパーソンのヒガナ。
本当にままならないことばかり、というか実機のストーリーなんて狂い過ぎててどこに運命なんてものがあるのか分かったものじゃない。
嘆息し、空を見上げる。
憎たらしいほど晴れ晴れとした空が自分たちを見下ろしていた。
「世界救うのも、簡単じゃないよ」
それでもやらなければならないことならば、やるしかないことならば。
――――やるだけの話だが。
マジで⑳まで続きそうだなあ。年末完結が目標とは一体なんだったのか(
ところで、グラブルクラスⅣ取ったけど、くっそ便利だな。
十天も宝晶石と古代布以外は素材揃ったし、セレマグ対策にソーンさんをお迎えしたい所存。それ終わったら、次の半額でまた素材貯めてニオちゃんとエッセルさんも欲しいなあ。
まあ、今は次の古戦場に向けてミカエル武器のSSR化をしないと(