エド「真理の扉は肛門にあった」   作:ルシエド

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インフィニット・ストラトスの舞台と、鋼の錬金術師の設定を組み合わせた、ありきたりなクソSSを書いていきたいと思います


エドとアル

 男は死んだ。

 阪神が優勝したことがあまりにも嬉しくて道頓堀に飛び込み、凍死したのである。

 悔いはなかった。

 阪神が優勝したという事実があれば満足だった。

 だが、心残りはあったのだ。

 

「うおおおおおおおおお死ぬなら女の子に生まれ変わりたいいいいいいいいいいッ!!」

 

 彼の叫びは性同一障害ではなく、「一回女の子になってみたい」という女性化願望。

 彼は今まで生きていた世界から死後の世界に向けて、ジェットコースターもかくやという速度ですっ飛んでいた。

 その姿はまさしくシャンバラを征く者。

 老衰で判断能力が死んだ老人がアクセルベタ踏みにした車のごとし。

 

「女の体で一回ぐらいオナりたいいいいいいいいいいいいいいいいいッ!!」

 

 そして彼は、世界と世界を繋ぐ扉を発見、突撃、突破、通過。

 TS転生とやらを果たしていた。

 

「……やべえ、あれがエンドルフィンってやつか。

 人間死にかけると、いや死ぬとマジで脳内麻薬出まくるんだな……

 死んでから生まれるまでの俺の言動、興奮し過ぎで一から十まで黒歴史ぜよ……」

 

 だが彼の激動の人生はノンストップの急行便だ。

 彼がハーフの女の子として生まれてから三年の後。

 三歳の女の子だった彼の体は、朝起きたら三歳の男の子の体になっていた。

 

「ファッ!?」

 

 先天的TSと後天的TSの両方の要素を持った彼はまさしく無敵。

 男でありながら特に問題なくISを動かせる分かりやすい理屈――元女――を手に入れた彼は、世界中の人がランダムにTSするという謎の現象を調べながら、IS学園に入学することとなった。

 

 彼の名は『エドモンド本田』。人は彼を、エドと呼ぶ。

 

 

 

 

 

 時は流れる。

 エドは中学校三年間、織斑一夏らと一緒であったが、さしたるイベントもなかったためカット。

 現在、エドがIS学園に入学してから一ヶ月ほどの時間が経っていた。

 

「平和なもんぜよ」

 

 エドは窓際の席で購買のパンを齧りながら、学園のグラウンドを見下ろす。

 

「いや、平和でもないか」

 

 そこには、一人の女と五人の男が居た。

 

「織斑さーん!」

「付き合ってくれー!」

「かわいー!」

 

「いやー、ははは……」

 

 男に言い寄られて困っている少女こそ、TS現象に巻き込まれ女性化した織斑一夏その人である。

 IS学園は今や男女比1:1の普通の学校になっていたが、この学校で一番モテる女性の座を織斑一夏が独占するという、世にも奇妙な状態になってしまっていた。

 何してもだいたい受け入れてくれる、容姿端麗、家事万能、割と誰にでも優しい。

 "女になった織斑一夏こそが究極のヒロインだった"と言う者が居るほどであった。

 

 TS時に自意識もある程度変わるのか、一夏は女である自分を受け入れているように見える。

 そこで、わざとらしく女一夏の近くを通り過ぎていった六人のイケメンが居た。

 

「キャー! 学園のイケメンセブンよー!」

「正直このネーミングクソダサだと思うけど乙女ゲー感はあるわー!」

「キャー!」

 

 篠ノ之箒は剣道の全国大会で優勝したイケメン。

 剣道をやっているせいか肩幅が異常に広いが、乙女ゲー感はある。

 セシリア・オルコットはイギリス出身のパツキンイケメン。

 貴公子風のやたらと胸元を開いた服装が、実に乙女ゲー感を醸し出している。

 シャルル・デュノアはフランス出身のヤリチン風イケメン。

 実際は女性経験などなく一途なのだが、そのギャップが乙女ゲー感を出している。

 ラウラ・ボーデヴィッヒは軍人タイプのイケメン。

 眼帯が正気を疑うレベルで装飾過多だが、それが逆に乙女ゲー感を爆発させている。

 更識簪はメガネの陰気なイケメン。

 鬼畜眼鏡ポジを乙女ゲー的に求められているのだが、簪はサドではなくマゾ寄りだった。

 更識楯無は非の打ち所のない完璧超人イケメンポジション。

 "EDでヒロインと再会を約束して外国に行くイケメン"的オーラが実に乙女ゲー的だ。

 

 そして六人揃って、野獣の眼光を女性化した一夏に向けていた。

 

 ここに織斑千冬(男)を加えた七人を、クソダサネーミングで七人まとめて呼んでいるようだ。

 

「一人の美少女。

 その美少女に夢中になる学園指折りのイケメン複数。

 いつの間にこの学園は乙女ゲーの舞台になったぜよ?」

 

「何ぶつくさ言ってんのよ、エド」

 

 教室の窓際席でパンを一人食うエドの横に、弁当を手に持った少女が座る。

 

「アル」

 

 彼女の名は『凰鈴音』。TS経験無しの普通に可愛い女の子。

 中国から日本に来てすぐの頃、

 「中国人だろアルアル言えよ!」

 「語尾のアルはどうしたアルは!」

 「アルアル言わないわけ無いアルよ! ……? あるのか無いのかどっちだ!」

 といじめられていたが、鈴をいじめていた女子グループが全員TS現象に飲み込まれ、自意識の変革があってもなお男になったショックが大きかったらしく、一時登校拒否に。

 その隙に動いたエドやら一夏やらのおかげでいじめは終了、アルという蔑称はいつの間にか友情を示す愛称になっていた。

 人は彼女を、アルと呼ぶ。

 

「……昔の知り合いが再会したら別の性別になってるって、普通恐怖じゃない?」

 

「同意。しかもこの性転換現象、一人の人間に複数回起きることがあるんだよなあ……」

 

 旧知の仲である一夏の堂に入った女っぷりに、エドと(アル)は恐怖を覚えていた。

 恐るべしはこの性転換現象だろう。

 話に聞く限りでは、妻が男になったせいで「ホモは嫌だホモは嫌だホモは嫌だホモは嫌だ」「グリフィンドォォォルッ!」という流れで離婚した者まで居るという。

 男→女→男→女と何度も性別が変わってしまっている哀れな者も居るようだ。

 

「そういえばあんた、あのランダム性転換現象のこと調べてたんだっけ?」

 

「ああ。だいたいあの現象の原因分かったぞ」

 

「え、本当に?」

 

「嘘ついてどうすんだよ」

 

 そしてエドは、転生という前提情報を持った上で調査と研究を続けたことで、人の性別が次々と変わっていくこの世界の真実に辿り着いていた。

 

「錬金術の基本、忘れてないよな?」

 

「質量保存の法則と自然摂理の法則、つまり『等価交換』でしょ?」

 

(なんでこの二人さも当然のように錬金術について語ってるんだろう……)

 

 エドとアルの後ろの席で弁当を食べていたタナカさんが戦慄する。

 二人はタナカさんの様子に全く気付かず話を続けた。

 

「男が女になる。

 女が男になる。

 すなわちここにも錬金術における等価交換が成立するんだ。

 誰かがこの世界にTSして生まれて来るたび―――この世界の誰かが、等価交換でTSする」

 

「―――なん、ですって?」

 

 昼休みに教室で話すようなことではない、そんな話を。

 

「男が女にTSして生まれて来ると、この世界の女の誰かが男になる。

 女が男にTSして生まれて来ると、この世界の男の誰かが女になる。

 錬金術の基本法則・等価交換が、ここに成立する。誰も抗うことはできない」

 

「なんてことなの……!」

 

 思い上がらぬよう正しい絶望を与えるのが真理という存在だ。

 TSとは神の御業。気軽にTSしようとした者の思い上がりのツケは、この世界の誰かが支払わなければならない。同等の代価として。

 

「これは世界の真理だ。真実を知ったところで、俺達には何もできなかったのさ……!」

 

「エド……」

 

 この世界は、ISの登場で引っくり返って女尊男卑の世界になった。

 だがその後、TSの登場で全ての性別が引っくり返り、もう何がなんだか分からない世界となっていた。

 

 

 

 

 

 だが、時は待たない。

 絶望に打ちひしがれている彼らに、新たなる敵が襲いかかろうとしていた。

 

「緊急事態発生! 緊急事態発生!」

 

 ISを身に纏った者達が、学園内を飛び回る。

 IS間で焦り混じりの通信が飛び交い、情報が共有されていく。

 『現場』では、目撃者の誰もが口を抑えて絶句していた。

 

「織斑一夏氏がオソマを漏らして倒れているのが発見された!

 繰り返す! 織斑一夏氏がオソマを漏らして倒れているのが発見された!」

 

 『現場』で一夏の周りに集まった者達は、殺人現場に立ち尽くす一般人のような反応を見せていた。

 見たくないものを見ないように、目を覆う。

 血の匂いを嗅ぎたくない時にする仕草のように、鼻をつまむ。

 被害者を見て、一歩後ずさる。

 現場の惨状に、思わず悲鳴を上げる。

 『現場』で一夏の周りに集まった者達は、殺人現場に立ち尽くす一般人のように、その目に同情・悲痛・恐怖・不安といった様々な感情を浮かべていた。

 

「敵は例の無差別襲撃犯!

 スカトロ趣味の『スカー』! 繰り返す、襲撃者のコードネームはスカー!」

 

 飛び回る学園のIS。

 だが、彼ら彼女らは気付いているのだろうか。

 空を飛んでいるISの数が一つ、また一つと、徐々に減っていっているということに。

 

「奴の破壊の右腕に触れられれば、絶対防御も無意味!

 攻撃を受けた者は必ず腹を壊す! 接近戦は絶対に挑むな!」

 

 オソマを漏らし地に転がる仲間の数が一つ、また一つと、徐々に増えているということに。

 

「スカーを捕らえろ! このままでは、全員がオソマを漏らすハメになるぞ!」

 

 あらゆる国家機関に属さず、いかなる国家や組織であろうと、学園の関係者に対して一切の干渉が許されないという国際規約に守られていたIS学園は今、混迷の時代に突入していた。

 

 

 




IS学園生徒「この学園波乱万丈過ぎでクソ生える」

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