東方迷狼記 ――亡霊に仕えし人狼――   作:silver time

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東方で書いてみたかった……ただ、それだけなんだ



実際の所スペルカードを考えてたら思い付いちまっただけなんだ



本当はサブタイトルにルビ振りたかったけど諦めた

世界に棄てられし君(全てに絶望した少年)


冥狼異譚の章
世界に棄てられし君


世界とは何か

 

人によっては輝いて見えたり、濁っていたりするものである

 

それは、世界とは何者に対しても平等であり、同時に全てに対しても無関心である

 

それがどう見えるかは人それぞれだ

 

 

そして

 

 

 

ある少年にとって世界は後者のように見えた。

特に理由もなく、他者からの理不尽な悪意をその一身に受けた

 

 

少年は他人を信じることを、自然と誰かに期待する事を辞めた

 

 

 

 

だが、

 

高校に進学した少年の人生に一つの変化が起きた。

 

その変化は良くも悪くも、彼の中の何かに少なからず影響を与えただろう

 

 

二人の少女と過ごしたその時間はとても居心地が良かったのだ

 

その中で、少年は自然と求めた。

どんなことがあっても揺るがない"本物"を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、ソレはやはりまやかしに過ぎなかったのだ

 

 

 

 

その場所はいとも容易く崩れ去った

 

それは無理もない事であった

 

期待というものはその者に対しての一種の思い込み、己の中で膨れ上がった勝手な自己解釈でもある

 

結果的に言えばお互いに思っていたものとは違っただけの話だ

 

 

そして

 

 

 

 

 

 

 

 

余りにも平等なこの世界から一人の少年の命が消え去った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥界

 

 

罪のない死者が成仏するか、転生するまでの間を幽霊として過ごす世界

 

そこは現世とは明らかに違う世界ではあるが、現世と同じように四季が存在し春には桜が咲き、秋には葉が紅葉する

 

そんな冥界に建つお屋敷『白玉楼』に住んでいる亡霊少女、西行寺幽々子は白玉楼の縁側に腰掛けお茶を啜っていた

 

何ら変わりない花どころか葉すら付かない巨木を見ながら、もしこの巨木に桜の花が咲いたらなと想像していた

 

変わりない毎日に退屈していたのだ

 

「今は妖忌も居なくて、私一人だけ……紫ともしばらく会っていないし」

 

唯一の楽しみであるお団子を手に取り、退屈ねぇ……と誰も居ない空間の中独り言ちた

 

そしてその独り言を聞いている者が一人、そこにいた

 

 

「……あら?」

 

真正面の巨木の幹に子供が座り込んでいた

 

多少黒ずんだ灰色の髪をした小さな男の子がいた。

その髪は光の当たり具合によっては銀色にもみえた

 

幽々子は縁側から立つと、男の子のいるところまで歩いていく。

 

「こんな所でどうしたの?」

 

そう語りかけるが、男の子から声が返される事は無かった

 

「…貴方は亡霊?それとも……」

 

 

――妖怪さんかしら?

 

「……」

 

それでも返答は変わらず無言だった

 

もう一度口を開こうとしたその時、

 

「分からない」

 

小さな声で、今にも消えそうな程にか細い声で、男の子はそう言った

 

「分からない?」

 

幽々子がそう聞くと、伏せている顔を僅かに縦に揺らすと

 

「自分が分からないんだ。俺は死んだ、死んだ筈なんだ。死んだはずなのに」

 

「……」

 

「俺は妖怪じゃない、妖怪じゃなかった、人間だった。でも」

 

 

 

じゃあ、今の自分は何なんだ?

 

 

 

「……」

 

幽々子にはこの子供が何者であるのかがわかった

 

この子供は友人である八雲紫と同じ、妖怪であると

 

「多分、妖怪だと思うわ。私の友達に似てるもの」

 

子供は僅かに、伏せていた顔を上げた

 

 

 

その子供の瞳には何も写っていなかった。

まるで死人のように、生気が感じられなかった

その何の感情も宿していないような無表情のまま、その死んだような瞳に幽々子を写した

 

「妖怪?……妖怪か、ははっ、名実共に妖怪になっちまったのか」

 

まるで疲れきったような、枯れた笑い声を上げて、顔を伏せた

 

「まぁいいや……もう、どうでもいい」

 

疲れたきったように、その目を閉じていく

 

「生きてたって、意味なんてないんだから」

 

 

 

 

 

「最初から、本物なんて求めなければ良かった」

 

 

少しずつ、目の前の少年から色が失われていったように感じた。

どんな目に遭えばこんなに絶望したような顔をするのだろうと、亡霊の少女は考えた

 

同時に、この少年にもう1度笑ってほしいと思った

 

思ってしまった

 

 

だからこそ、この亡霊少女は目の前の少年に興味を持った

 

 

「ねぇ」

 

声を掛けられた直後、俯いたままの首が強制的動かされる。何も見えなかった視界が反転し、桃色の髪をした女性の顔が映る

 

「名前は何て言うの?」

 

「………………比企谷、比企谷八幡」

 

名乗ったところで意味などない、それでも、どうせ忘れる名だろうと思い、大きく間を開けてそう名乗った

 

 

 

「比企谷八幡……じゃあ八幡、もっとお話しましょう」

 

 

 

――だから、もっと聞かせてちょうだい?

 

 

 

 

 

 

 

冥界に生まれ落ちた人狼

 

冥界に住む亡霊

 

これは、新たな物語の始まり

 

 

そして、比企谷八幡という少年が歩んだかもしれない一つの物語

 

 

 

 

 

東方迷狼記 ――亡霊に仕えし人狼――

 

 

 




如何でしたでしょうか?

妖怪となった八幡はどう過ごしていくのやら……

楽しみにしていてください!

それと八幡の能力ももう考えていたりします

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