ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁   作:伊崎ハヤテ

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 花丸回です。スクフェスでSRの丸のスキル発動時ボイスの「ずら?」が可愛いですね。


8話 衝突はアドレス交換と共に

「すいません、スクールアイドルについての本ってありますか?」

 数日後、おれはここらで一番大きな図書館にいた。千歌に出来る限りの手伝いはすると言った手前、スクールアイドルについて知っておかなければならないと思ったからだ。かと言ってこんな田舎の図書館に資料なんてないと思うけど。司書さんは少し画面を見つめると、顔を上げて答えた。

「あー、一冊だけあったんだけどねー。今さっき貸出されちゃいましたねー。女の子が持って行っちゃったよ」

 あるんだ、資料。でもその一つだけの資料を持ってかれてしまったのなら仕方ない。

「なんか別の本でも借りるとすっかね……」

 俺はカウンターを離れるとぶらぶらと書庫をうろつくことにした。

 

「何か面白そうな本は……」

 本棚をカニ歩きしながら本を物色してどれ位経っただろう。夏目漱石や宮沢賢治と言った名作コーナーに差し掛かった。『吾輩は猫である』や『セロ弾きのゴーシュ』等の名作がずらりと並んでいる。これを機に先人の小説を読み散らかすってのもありか。

 ふと視線が止まった『坊っちゃん』を取ろうと右にずれた時だった。

「ひゃっ」

 小さな悲鳴とちょっとした衝撃。どうやら誰かと軽くぶつかってしまったみたいだ。視線を下ろすと、おれの肩位の背の女の子がいた。床には本が二、三冊散らばっている。どうやらぶつかって時に落ちたみたいだ。

「あ、ゴメンな。本選びに夢中になってて――」

「だ、大丈夫です。マルも、ボーッとしてたから――」

 おれたちは慌てて散らばった本を取ろうとする。そしてーー。

 

『あっ』

 

 本の上で、俺と彼女の手が触れてしまった。その瞬間心の臓の脈動が脳裏に響いた。まじまじと女の子を見てしまう。茶色の髪の毛を肩ぐらいまで伸ばしていて大人しい容姿に、琥珀色の瞳。頬はほんのりと朱に染まっていて、相手も意識していることが解る。

 って、このまま固まっている場合じゃない。ここは一つ、軽いジョークでも交えて有耶無耶にしないと。

「な、なんか少女漫画である展開だな」

「そ、そうですね。あの、少女漫画とか読んだことあるんですか?」

「まあ、あるっちゃぁあるかな」

 曜の部屋に行った時とかに、何度か読んだな。あいつ、意外にも少女漫画の数多いんだよな。

 改めて本を拾っていると、一つの本のタイトルに視線が吸い込まれた。

「スクールアイドルの全て……?」

「あ、さっきオラが借りてきた本なんです」

 この子がここに一冊しかないスクールアイドルの本を借りていったのか。

「もしかして……、読みたかったずら?」

 申し訳さそうにおれを見つめる女の子。まだ幼さが残る瞳に少しどきりとした。

「そうだけど、先に君が借りたんだろ? 俺はいいよ」

「でも、なんだか申し訳ないずら……」

 拾った本を抱き寄せる女の子。どうすれば納得してくれるのやら。

 ふと視線が上に向いた。おれが取ろうとした『坊っちゃん』が少し抜き出ていた。俺はそれを抜いて彼女に見せた。

「そういう君だって、これが読みたかったからおれとぶつかったんじゃないか?」

 彼女はこくんと頷いた。

「だったらさ、それを返す時におれに渡してくれないかな。そしたらおれはこいつを君に渡す。どうかな?」

 なるほど~、と女の子は納得してくれる。が、すぐに疑問を投げかけてきた。

「でも、いつ返すとかはどうするずら?」

 おれは一瞬考え、ポケットからスマホを取り出した。

「じゃあ互いに連絡先を交換しておこうか。そうすれば図書館で待ち合わせってことも出来るだろ?」

 ここまで彼女に提案しておれの思考は停止した。おい俺、何一連の流れで新手のナンパみたいなことしてんだよ! こんなんで女の子の連絡先聞けるんなら俺の電話帳女の子の名前でいっぱいだよ!

 と一人で悩んでいると、女の子が微笑んできた。

「はいっ。わかりました。アドレス交換するずら!」

 その笑顔に俺の後悔は一瞬にして吹き飛んだ。本人がいいなら良しとするか。彼女の了承も得たので、おれたちは互いのアドレスを入手した。

「国木田花丸ちゃんね。返すタイミングはいつでもいいから、連絡してくれるかな」

「はいっ」

 小さな花のような可愛らしい笑顔で花丸ちゃんは答えてくれた。

 

 

 

 

●●

「まさかナンパされちゃうなんてなぁ」

 図書館からの帰り道、マルは一人で歩く。生まれてこの方、ああやって連絡先を聞かれるなんて思っても無かったずら。でも、それと同時に嬉しかったなぁ。

「紫堂櫂、せんぱいかぁ」

 電話帳に登録された名前を見る。ふと思い出す、ぶつかった時の肩と優しそうな目。

「ちょっと、カッコ良かったかなぁ」

 少しルンルンな気分でステップを踏む。が、すぐに止まる。

「しまった、オラ、また人前で『オラ』とか『ずら』って言っちゃったずら……」

 うう、恥ずかしい。紫堂せんぱい、変に思ってないかなぁ。

 自分の口癖を少し恥ずかしいと思いつつ、家に帰るマルなのでした。




 アニメイトでサンシャインのアニメをやってたので少し見ました。「あかん、これ自分の作品が駄目になるパターンや」と途中で視聴を切りました。スポ根嫌いの根性ねじまがったカス虫にはキッツい。アニメだけがサンシャインの可能性ではない、ハズ。彼女たちに触れて二次創作を書こうと思った人、一人一人に可能性があると信じています。

 しれっと主人公の背丈の設定が追加されました。大体170㌢後半かな?

 さてキャラの紹介パートもあとは鞠莉だけとなりました。まりじゃ一発変換出来ねえ……。この後、各キャラの掘り下げパートに続く形となります。よろしければ次もお付き合い下さいませ。

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