ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁   作:伊崎ハヤテ

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シャイニー色の約束

「本当に出来たんだな……」

 おれは校庭に出来上がったステージを見上げて一人呟いた。ステージを照らす夕日が少しずつ弱くなり、周囲は暗くなりはじめている。そして再び陽が登った時、このステージで千歌達はライブをするんだな。なんて考えていると。

「シャイニー☆」

 突然スポットライトが点灯し、ステージの中央に集中する。その先には鞠莉さんがいた。

「鞠莉さん、何遊んでるんですか?」

「遊んでいるとは心外ね。ステージの装置がしっかり動作するのかチェックしてるんだから」

 そうだったのか。本当にこの人は裏でやることやってるんだから。

「そういうことならおれにも言って下さいよ。本来はこういうのマネージャーであるおれの仕事でしょ?」

「あー、それもそうね。でも、ウチがお金とか資材出してるから、責任はこっちにもあるし」

 鞠莉さんから差し出された手を握って、ステージにあがる。ステージからの景色はちょっと高くて、少し違って見えた。

「そう言えば結局鞠莉さんの家の力を借りることになっちゃいましたね」

「まぁいいんじゃない? パパもノリノリでお金出してくれたから。お陰でカメラも回ることになっちゃったけどね」

 珍しく苦笑の表情を見せる鞠莉さん。

「Aqoursをより良く広める為には手段なんて選んでられないもの。より良質なライブやPVを見せてワタシ達のことを好きになってくれる人を増やすんだから!」

「そうですね。じゃあその為にもステージの点検も念入りにしておきましょうか」

「イエーッス!!」

 鞠莉さんは嬉しそうに元気よく返事を返してくれたのだった。

 

 

『音響関連、No Problem! イェーイッ!!』

 鞠莉さんはマイクを握ってノリノリに歌っている。はしゃぐ彼女を見ていると、本当に一つ年上なのかって思える。でもそんな彼女が可愛らしかった。

「鞠莉さん、明日は本番なんだから程々にして下さいよー。それに五月蝿すぎってクレーム入れられたらライブどころじゃないんだから」

「解ってるわよー」

 マイクの電源を切ってこっちに近づいてくる鞠莉さん。おれはコンソールに視線を戻した。

「じゃあ次はシャボンのチェックいきますね。えーと……」

 コンソールとにらめっこしながらボタンを探す。すると後ろから柔らかい感覚が。

「んー、これじゃない?」

 鞠莉さんが後ろから身体を押し付ける様に立って、ボタンを押した。が、見たところ、ステージには変化はないようだ。

「違ったかな? じゃあ……」

 そう言って身体をずらしながらボタンを押そうとする。

「あ、あの鞠莉さん? その、当たってるんですけど」

「ん? 当たってるって、何が?」

 きょとんとした表情でおれを見つめてくる。うわ、おれの肩に顎まで乗せてるから彼女の顔が近い。改めて彼女との距離感を認識すると、体温が上昇した。

「む、胸とかその、色々?」

「ふぅーん、カイは、ワタシとくっつくのイヤ?」

「イヤとかそういうのじゃなくてですね……」

「カイ、顔赤くてカワイイ♪ えい、えいっ」

 つんつんと頬を突っついてくる鞠莉さん。それがまた恥ずかしくて、おれは気にしないようにした。

「それよりも! 早くボタン探さないと! んーと、これか?」

 スイッチを押すと、近くの装置が音をたてる。お、今度は上手くいったみたいだ。

「鞠莉さん!」

「ええ! 見に行って見ましょ!」

 ステージに戻ると、ライトに照らされたステージにシャボン玉がふわふわと浮いていた。それがなんとも綺麗で、二人でステージに立ち尽くしてしまう。

「綺麗……」

「ええ。これを本番で見れるのが楽しみですよ」

「ねぇカイ。解ってる? 明日のライブは昼からで、夜にはやらないのよ?」

 つまり、この光景は今しか見れないってことか。何だか得した気分だな。

「鞠莉さんと一緒にチェックしたお陰で、いいものが見れましたよ」

「ワタシもよ……」

 とすっと肩に鞠莉さんの頭が乗った。ちょっと恥ずかしかったけど、それ以上は言わないでおいた。

「今だけのこの景色を、当日ここにはいないカイと見る、それがとっても嬉しい」

「鞠莉さん……。おれも、嬉しいですよ」

「ホントウ?」

 ちょっと心配そうに見つめる鞠莉さんに、おれは笑ってみせた。

「ホントウですとも。鞠莉さんがスクールアイドルを始めて、一緒に行動するようになって。今までじゃ知り得なかった鞠莉さんを知ることが出来た。そんな鞠莉さんと一緒に見れるのが、嬉しいですよ」

「カイ……。はっ、そーよっ!」

 何か思いついたのか、おれから身体を離す。

「カイ、ライブが終わった後、ヒマかしら?」

「ええ。都合のいい日はあると思いますけど」

「じゃあ、今度ワタシの家に遊びに来てちょうだい!」

「鞠莉さんの家って言うと――」

 淡島のホテルにってことだな。

「Yes. カイには色々とお世話になったし、そのお礼がしたいの」

「お礼も何も、おれはマネージャーとしての仕事をやっただけですよ」

 それも充分かどうかも解らないのし、お礼を貰うに相応しい働きはしてないと思う。でも、鞠莉さんは頬を膨らませて抗議してきた。

「ワタシがカイにプレゼントしたいのよーっ! ワタシからのプレゼントはもらえないって言うの!?」

「そうじゃないですけどっ!」

「じゃ、決まりね♪」

 手を合わせて嬉しそうにする鞠莉さんに、おれはそれ以上言えなかった。それにお礼って何貰えるんだろうってちょっと楽しみだし。

「よーしっ、これで明日のライブがもっと楽しみになっちゃった! カイ、ちゃんと見ててよね!」

「ええ、席からちゃんと見てますよ。鞠莉さん達のことを。楽しみにしてますから」

 センキューと笑顔で言う鞠莉さんに、おれは目が離せなかったのだった。

 

 

●●

 フフ♪ ついにカイを誘っちゃった。カイをマリーのトリコにするプロジェクト、その第一段階に!

 始めて見た時から好きになった男の子。その彼とこんなに一緒にいることが出来た。それだけでスクールアイドルをやって良かったって思えるの。でもそれ以上にスクールアイドルなワタシを彼に見て欲しいって思える。だからカイ、ちゃんと見てて頂戴ね。サンサンと輝く、シャイニーなマリーを!


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