ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁   作:伊崎ハヤテ

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 今回のサブタイは直ぐに浮かびました。毎回こんな感じだといいのになぁ。


54話 時間差オレンジ☆ボム

●●

「あー、お腹空いたぁー!」

「じゃあここでお昼にしよっか」

「さんせーい!」

 空き教室で梨子ちゃんと机をくっつけて向かい合う。楽しい楽しいお昼ご飯の始まりだ。

「あれ、千歌ちゃんもお弁当?」

 お弁当箱をカバンから取り出した梨子ちゃんは私が出した弁当箱を見て目を丸くした。

「なぁに梨子ちゃん!? もしかして私が弁当とか持ってくるとは思ってなかったなー!」

「そ、そんなことはーー、思ってました……」

「もーっ!」

 私が頬を膨らませていると梨子ちゃんは苦笑いして弁当の箱を開けた。

「ごめんね千歌ちゃん。ほらこれあげるから許して、ね?」

 フォークに刺したプチトマトを差し出される。もう、しょうがないなぁ。

「あーんっ」

 私が口を開くとプチトマトが運ばれていった。咀嚼すると程良い酸味が口の中を駆けめぐる。

「どう?」

 梨子ちゃんの問いに私は笑顔を向けた。

「うん、おいしーよっ!」

「ふふっ、よかった♪」

 微笑んだ梨子ちゃんはまたおかずをフォークに刺して私の口元に運んできた。

「はいっ、あーん♪」

「あーんっ!」

「お、二人して昼飯か?」

 そんな中、櫂ちゃんの声が廊下から聞こえた。

 

◇◇

「あ、櫂ちゃんだ!」

 おれを見つけるなりぱぁっと千歌の顔が輝いた。隣では梨子が嬉しそうに微笑んでいる。

「あれ、曜は? てっきり三人で食べてるかと思ったんだけど」

「曜ちゃんは泳ぎが苦手なルビィちゃんに特訓をしてるから、ルビィちゃんと食べるんじゃないかな?」

 梨子の問いに合点がいった。そういえば今朝はちょっと荷物多めだったもんな。

「櫂ちゃんはお昼まだ?」

「いや、まだだけど」

「だったら一緒に食べよーよ!」

 千歌が椅子を新たに机の近くに置き、ぽんぽんと叩く。丁度いい時間だし、食べるとするかな。

 席に着くと、買ってきたパンを広げる。

「おやぁ? 櫂ちゃんはコンビニで買ってきたパンなの? 寂しいなぁ」

「お前、コンビニパンなめんなよ? 最近のコンビニのパンホント美味いんだからな? そーいうお前だってーー」

「ふっふー、これを見てもそう言えるのかなー?」

 千歌は不敵に笑うと、弁当箱の中身を見せた。綺麗に整った具と、ご飯が食欲をそそらせる。

「どー、櫂ちゃん? このお弁当を見てもそんなことーー」

「これ本当にお前が作ったのか?」

 おれの言葉に千歌がぴたりと動きを止めた。この弁当、あまりにも整いすぎている。千歌は不器用って訳じゃないけどここまで綺麗な弁当は作れないはずだ。その証拠に、汗が頬を伝っている。

「千歌ちゃん?」

 梨子の言葉にも反応せず、身体を振るわせている。図星か。大方一番上の姉さんに作って貰ったんだろう。

「うぅ、だって梨子ちゃん達とお弁当食べようって話になったから……、でも私そんなに上手く作れないし、だからぁ・・・」

 アホ毛までしゅんとさせる千歌。そんな彼女を梨子は微笑んで自分の弁当のおかずをフォークで刺した。

「はい、千歌ちゃん」

「梨子ちゃん?」

「そんなこと気にしなくて大丈夫だよ。わたしは千歌ちゃんと一緒に食べられるだけで嬉しいから♪」

「梨子ちゃん……」

 少し眼をうるうるさせる千歌。本当にいい友達を持ったな。

「さ、食べて? あーん……」

「あーんっ、おいしー!」

 ぱぁっと嬉しそうな笑顔を向ける千歌。アホ毛までもぴんと蘇り、元気になったのが伺える。

「嬉しそうだな、千歌」

「だって本当に美味しいんだよ! 櫂ちゃんも食べてみなよ!」

「食べてみろって言ってもな……。梨子、いいのか?」

 おれが視線を梨子に向けると彼女はにっこりと微笑んでおかずを刺したフォークをこっちに向けた。

「はい、どーぞ。あーん♪」

 そのままおれの口元へとそれを進めていく。待て、さっきの千歌みたいにやるつもりなのか? 当の本人は特に気にしてないようで、首を傾げている。

「紫堂くん?」

 ええい、ここで据え膳を食わずは男の恥よ。意を決して口を開けるとおれの口の中にウィンナーが躍り出た。

「どう? おいしい?」

 感想を聞きたそうにしている彼女を見ながら租借する。少ししょっぱめな塩加減がおれの好みだ。

「うん、美味しい。ありがとな」

「ふふ、どういたしまして♪」

 そう言って彼女はまたウィンナーを刺すと、今度は自分の口に入れた。「あっ」

 思わず声を出してしまった。だって、そのフォークはさっきおれが口にしてしまったのだから。つまりこれって間接キスにーー

「ーーっ!?」

 それを梨子も察したのか、途端に顔を真っ赤にする。握ったフォークとおれの顔を何度見している。

「あの、梨子ーー」

「わ、わたしっ、ちょっとお手洗いに行ってきます!」

 梨子は慌てて教室から出て行ってしまった。うーん、少し悪いことしちゃったかな。後で謝っておかないと。

「梨子ちゃんどーしたんだろ? もしかして辛い位の味付けだったのかな?」

「ま、まーそんなとこじゃないかな……」

 千歌はそんなことを気にもせずに首を傾げながら自分の弁当を食べていた。

「あ、そーだ櫂ちゃん!」

 何か思いついたのか千歌は自分が握ってたフォークをおれに持たせた。

「千歌?」

「梨子ちゃんもいないし、今度は櫂ちゃんが千歌にあーんってしてよっ!」

「はぁっ!?」

 彼女の突拍子もない提案に思わず声が裏返ってしまった。おま、さっきの梨子とのやりとり見てなかったのかよ。あれって本来恋人同士がやるもんじゃ……。

「はーやーくー! 昔はこうやって食べ合いっこしたでしょー!」

 両手をばたばたさせてせがむ千歌。そっか、こんなやりとり昔したっけ。千歌にとってはその延長線上なのかもな。少しの安堵と同時にチクリと胸が痛んだ。

「わかったよ。ほれ、あーんしろ」

「あーんっ」

 嬉しそうに開けた千歌の口に、アスパラベーコンを入れてやる。口を閉じて美味しそうに租借する千歌。

「んーっ! おいしー♪」

 アホ毛まで動いている位に喜びを表現する千歌。ま、こいつが喜んでるならいっか。そんな彼女の頭を撫でてやる。

「えへへー、こうやって食べ合いっこした後櫂ちゃんはいつも頭撫でてくれたよねー♪」

「そうだったか?」

「そうだったよー」

 なんて二人で笑い合ってるといきなり教室のドアが開いた。そちらに視線を向けると梨子が顔を赤くして立っていた。

「梨子ちゃん?」

 凄い勢いで席に戻ると、梨子は洗ったであろうフォークをおれに差し出した。

「ああ、あの、さっきのあれは、ふ、不公平だから、今度は紫堂くんがわたしにあーんして下さいっ!」

「いや、なんでそーなるっ!?」

 再びおれの裏返った声が教室に響きわたった。 

 

 

●●

「あー、美味しかった♪」

 櫂ちゃんと別れ、梨子ちゃんと並んで廊下を歩く。梨子ちゃんは嬉しそうに微笑んだ。

「千歌ちゃん、美味しそうに食べるね。嬉しくってわたしのお弁当ほとんどあげちゃった」

「あっ、ごめんね梨子ちゃん。私の分も……」

「ううん、気にしないで。その分千歌ちゃんの分のお弁当も頂いちゃいましたから♪」

「それもそーだね。お弁当の食べ合いっこ、楽しかったなぁ♪」

「それに、紫堂くんにも食べてもらったし、食べさせてもらったし……」

 途中で声が小さくなる梨子ちゃん。ん? どうしたのかな?

「梨子ちゃん、どーしてそんなに顔まっかなの?」

「だ、だってっ、紫堂くんにあーんってしちゃったし、してもらったし……。うぅ、どーしてあんなお願いしたんだろ・・・」

「んー?」

 どーして梨子ちゃんはそんなに恥ずかしがってるんだろ? 私だってさっき大好きな櫂ちゃんにしてもらったし。

 

 そう、大好きな。

 

「あっ」

 そう考えた瞬間に私の体温が上がった。顔が熱くてぽっとしてる。そっか、大好きな櫂ちゃんに[あーん]してもらったんだ。昔と同じ感覚でやってもらっちゃってたんだ。食べた後に櫂ちゃんに撫でてもらった、場所を押さえる。うわわ、どーしよ。もう恥ずかしくて軽々しく頭撫でてなんて言えないよぉ。

「千歌ちゃん? 顔真っ赤だよ?」

 そんな私を梨子ちゃんは首を傾げて見つめている。私はこの胸のどきどきを誤魔化す為に走り出した。

「あっ! 丁度いい歌詞のフレーズが浮かんだ! 部室先に行くねーっ!」

「ま、待ってよ千歌ちゃーん!」

 必死に追いかけようとする梨子ちゃんの声を聞きながら私は廊下を走った。

 部室にたどり着き、戸にもたれ掛かる。走ったドキドキと櫂ちゃんにたいするどきどきがごっちゃになった胸を押さえる。少しあがった息のまま名前を呟いた。

「櫂ちゃん……」

 梨子ちゃんが戻るまでに落ち着かなきゃ。そう思って私は両頬を叩くのでした。




 鞠莉の最後の掘り下げのエピソード、構想が出来ました。これで全員分構想が完了したことになりますね。あとは書くだけ。おーし、頑張るぞー!

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