ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁   作:伊崎ハヤテ

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 最近FGO始めました。じぃじが来てくれて嬉しい反面まだ全然育てて上げられてない。
 ダイヤ回です。ダイヤルートの告白イベントは脳内で完成しているので書くのが楽しみ。でもそこまでに繋ぐシナリオが浮かばないのが現実。


53話 金剛石の輝き方

 見慣れない廊下を一人おれは歩いている。自分でも何やってるんだろうなと考えてしまう。

 ライブに向けての最終調整、と言っても軽く合わせの練習をしてしまえば殆ど終わってしまう程彼女達の準備は出来ていた。今日の練習を終え、皆思い思いの時間を過ごしていた。

 こんな最後の練習にもおれは顔を出している。合宿の時と違って水などの準備もしなくていいので、何のために呼ばれているのかと自問してしまう。ダンスやら全体的な動きに関して客観的に欲しいと言われて見てはいるものの、スクールアイドルに関してのノウハウがないおれにすれば何がいいのか悪いのかもよくわからない。合宿の時から少し思っていたのだが、おれは彼女達に本当に必要な存在なんだろうかって思ってしまう。

 そう考えながら視線を廊下の床に落としていると、誰かの足が視線に入るのと同時にぶつかってしまった。

「っ! ちゃんと前を向いて歩きなさいな、って紫堂さんじゃありませんか」

「あ、ダイヤさん。すいません……」

 視線を上げると段ボールを抱えたダイヤさんがおれを睨んでいた。少し大きな段ボールを少し苦しそうに持っている。

「随分大きな段ボールですね。どこかへ持って行くんです?」

「ええ、これを生徒会室に持っていこうと思って。予想以上に大きくて……」

「なら、おれが持ちますよ」

「え、でも紫堂さんはどこかに用事があったのではなくて?」

「いや、アテもなく歩いてただけなんで。手伝いますよ」

「じゃあお言葉に甘えようかしら……」

「ええ。甘えちゃって下さいな」

 そう言いながら彼女から段ボールを受け取る。うん、これくらいなら大丈夫だ。改めて持ち直すとダイヤさんは肩の力を抜いた。

「実を言うと、少し持つの大変でしたの。生徒会の仕事だから皆に手伝ってもらうわけにもいかないし……」

「深く考えすぎじゃないですか? ダイヤさんが困ってたら皆助けてくれると思いますよ。現に今おれがこうしてるみたいに」

「そう、ですか?」

「えぇ。ダイヤさんが困ってたら真っ先に駆けつけますよ?」

「紫堂さん……」

 少し嬉しそうな顔をしていたダイヤさんだが、すっと目が細められた。

「そんな台詞をメンバー全員に言ってるのではなくて?」

「言ってないですよ! 多分……」

 そう言っておれは視線を逸らした。多分と完全に否定出来ない自分が情けなかった。

「全く……」

 呆れながらもダイヤさんは軽く笑った。

「さ、生徒会室はこちらですわ。わたくしが案内して差し上げますわね」

 そう言う彼女の声色は少し嬉しそうに聞こえた。

 

「失礼しまーすっと」

 ダイヤさんの案内で生徒会室にたどり着く。ゴミ一つもない、綺麗な部屋で、生徒会長であるダイヤさんの性格が現れているようだった。

「その箱はここに置いて下さいます?」

「はーい」

 彼女に指し示された机に段ボールを置き、一息つく。そんなおれをダイヤさんは嬉しそうに笑顔を見せた。

「本当に助かりました。そうですわ、紫堂さんまだお時間は平気かしら?」

「特に予定もないですし、もう少しお手伝いしますよ」

「いえお手伝いではなく、もしよろしければここでお茶していきませんか?」

「え、いいんですか?」

「手伝ってくれたお礼です。それに紫堂さんとはもう少しお話したかったから……」

「ダイヤさん……」

 その言葉に嬉しさがこみ上げてきた。ダイヤさんみたいに綺麗な人にお話してみたいって言われて、喜ばない奴がいたらお目にかかりたい。おれが喜びを隠せないでいると、その表情を読みとったのか彼女の顔が紅くなっていく。

「お、お湯を沸かしますわね!」

 彼女は慌ててケトルの方へと駆け寄ってティータイムの準備をし始めたのだった。

 

「それでですね、千歌の奴ったら――」

「うふふ、そうなんですの――、あら?」

 紅茶を二人で飲みながら談笑してると、彼女のスマホが震えた。

「ルビィからですわ」

「ルビィちゃんなんて言ってるんです?」

 おれの問いにくすりと笑いながらスマホの画面を見せた。

「《コンビニに新作のアイスが出るけどどうする!?》ですって。あの子にはわたくしがアイスにしか目がないとでも思ってるのかしら?」

「え、そうじゃないんですか?」

「そ、そうですけど……《一つは確保しておきなさいな》っと。ふふ、ルビィったら」

 そう呆れたように言うダイヤさんの顔はにこやかで。この人はルビィちゃんのこと大好きなんだなってわかった。

「可愛いじゃないですか。お姉ちゃんであるダイヤさんの分もとっておこうとしてたし」

「そう聞いておきながら、わたくしが食べようとして冷蔵庫を開けたらないことが多いのよ?」

「ま、まあそこもまた可愛いってことで」

「可愛い、ね……」

「ダイヤさん?」

 その言葉に少し元気をなくしたように見えるダイヤさん。

「正直、ルビィのそういった所が羨ましいですの。あの子はわたくしの持ってないものを持ってますから」

「……」

 おれがダイヤさんの言葉を黙って聞いているとさらに彼女の独白は続く。

「わたくしもあの子みたいに可愛く出来ないものか、と一人試してみたんですが――」

「ですが?」

 額に手を当て、苦虫を噛み潰したような顔をするダイヤさん。

「これじゃないって感じがして……。暫く鏡の前で頭を抱えてしまいましたわ……」

 ど、どれ位のものだったんだろう。逆に気になるな。

「わたくしには、あの子のように可愛くなるのはムリなのでしょうか……」

 そうか、ダイヤさんはルビィちゃんみたいな可愛さが自分にはないと思って、悩んでいるのか。この様子だと他のメンバーには言ってないんだろうな。自意識過剰かもしれないけど、おれにしか言えない悩みとして相談してくれたのかな。そうだとしたら嬉しいし、それに応えてあげたい、そう思った。

 おれは深呼吸すると出来る限りダイヤさんに近い声色を出した。

「当然ですわ、ワタクシは素材が違いますから」

「なっ!」

「どうですか? ダイヤさんに似せてみたんですけど、似てました?」

 からかわれたと思ったのか、ばん、と机を叩き立ち上がるダイヤさん。

「ど、どういうつもりですか! 全く似てもいませんわよ!」

「そう、それですよ」

「え?」

 おれの言葉にきょとんとするダイヤさん。おれはそんな彼女に会話を合わせるために立ち上がる。

「おれがどんなに努力したってダイヤさんの真似は出来ないし、ダイヤさんにはなれない。それと同じようにダイヤさんはルビィちゃんにはなれないんです」

「っ……」

 おれが放つ言葉がショックなのか、視線を落とすダイヤさん。おれはそんな彼女の手を握った。

「でも、ダイヤさんにはダイヤさんにしか出来ない魅力がありますよ。それこそルビィちゃんには出来ないことが」

「わたくしにしか、出来ないこと?」

「そう。それが何なのかはおれは言うことは出来ません。それは自分で見つけるものだと思うから」

「紫堂さん……」

 真っ直ぐおれを見つめるダイヤさんにおれは微笑む。

「それに、おれはダイヤさんの可愛い所、知ってますから」

「え?」

「この前のお茶会でプリンって聞いた時のダイヤさんの嬉しそうな顔、本当に可愛かったんですから」

「なっ!?」

 瞬時に顔が真っ赤になるダイヤさん。握った手からもその体温の上昇がわかるくらいだ。

「お、覚えていたんですかっ?!」

「ええ。あれだけはしゃぐダイヤさんはほんっとうにーー」

「い、言わなくていいですから!」

 慌てておれの言葉を塞ぐダイヤさんは顔を真っ赤にしながらその眼は少し潤んでいて。それこそ今しか見れない可愛さをおれは堪能していることになる。

「まあ要するにそんなに気にしなくてもいいと思いますよ。これからダイヤさんだけの魅力ってのを自分で見つけていきましょうよ」

「そう、ですわね。紫堂さんに話したら少し楽になりましたわ」

「少しでもダイヤさんの気が楽になったのなら良かったです。何か相談したいことがあったら喜んで聞きますよ」

「そう、それなら……」

 そう言う彼女の視線は繋がれた手に向かっていた。

「手を握った理由をお聞かせ願えるかしら?」

「あっ、すいません! とっさに……」

 咄嗟に握ってしまったことを思い出して、今度はこっちが赤面してしまった。うわ、おれなんつー恥ずかしいことを……。

「わ、悪気があった訳じゃないんです! 力説してるうちについ……」

「別に怒ってる訳じゃありませんわ。そんなにお気になさらずに。それより、もう帰る時間じゃなくて?」

 生徒会室の壁時計を見ると、17時を時計の針は指していた。視線を窓に向けると、空は橙と藍色が混じったものになっている。

「やばっ、もう帰らないと! ダイヤさんは?」

「わたくしはもう少しここでやることがありましから。あ、カップは片づけておきますわよ?」

「ありがとうございます! それじゃあ!」

「紫堂さんっ」

 ダイヤさんの声に急ぐ足を止め、振り返った。

「また、わたくしの仕事を手伝って下さいます?」

「もちろんです。おれの力が必要になったら連絡してください。すぐにでも駆けつけちゃいますから!」

 その言葉にダイヤさんはにこりと微笑んで手を振ってくれた。おれはそれを背に、生徒会室をあとにしたのだった。

 

 

●●

 紫堂さんが出て行った生徒会室に一人、残るわたくし。この部屋に一人でいることはよくあることなのに、彼が行ってしまった後はどうしてか寂しさが残る。

 彼が使ったティーカップ。それを見るとどうしてかドキドキしてしまう。そして思い出したように自分の両の手を見つめる。

「さっき紫堂さんが握ってくれた……」

 そう意識すると更に脈動が大きく自分の中で響いてしまう。嗚呼、わたくしはこんなにあの人を意識しているのね。

「紫堂さん……」

 その両手を自分の胸元に寄せ、彼のぬくもりを感じようとしてしまう。即座に自分がしようとしていることを理解してしまって。

「は、破廉恥ですわよダイヤ!」

 その手で頬を叩き、邪な気持ちを追い払う。そう、今はライブに向けてやれるだけのことをしなくては。

 でも、それが終わった後は紫堂さん、このわたくしをこんなにした責任、とってもらいますからね?

 っていけないわね、また惚けてしまいましたわ。わたくしはもう一度活を入れると積まれている書類とにらめっこを開始した。




 さてこの最終掘り下げでもある学校編。各ルートの分岐点シナリオを考えついたはいいものの、全員分の掘り下げシナリオを用意出来てないのが致命的な問題点です。っていうか鞠莉が浮かばねぇ。どーすっかなホント。

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