ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁 作:伊崎ハヤテ
頭痛が治ったと思ったら風邪をひきました。なんなのもう。善子と同じく不運と踊ってしまったのかしら。善子には責任をとって僕とおセッセしてもら(ここから先は血まみれで読めない)
沼津駅の改札前、そこでおれは一人いた。
今日は一年生達をつれて深海水族館の見学だ。おれも同伴すると知った善子達は一足先に出て行ってしまった。どうやら準備があるらしい。曜達の時も思ったが、PVの参考にする為の見学なのになんでおめかしが必要なのかねぇ。おしゃれするってことは、皆おれに「異性としての対象」として見て貰いたいってことなのか。
まさかな、とそんな思いを振り払い、女心のわからないおれは彼女たちを待ち続けた。
「シドー!」
突然響く声に目を開けると、目の前には自称堕天使を名乗る女の子が。
「堕天使ヨハネ、契約者シドーの求めにより召喚☆」
反応を求めるかの様にちらとおれの方を何度か見る善子。テキトーにあしらって拗ねられるのも面倒だし、ここは乗っておくか。おれは苦笑いしながらもそれっぽいポーズをとった。
「よく来た我が共犯者ヨハネよ。予定の時間よりもだいぶ早いが、流石だな」
「フッ、堕天使は配下たるリトルデーモンを待たせないものよ」
「それってさ善子、おれと一緒に水族館行くのが楽しみで早く来すぎたってことか?」
「っ!! うっさい! それとわたしはヨハネよ!」
おれの指摘に顔を赤くしてかみついてくる善子。彼女はまたフッと笑うとポーズをとっておれを見つめてきた。
「それより、どう? この漆黒の装束は? リトルデーモンとしてのアナタの意見を聞きたいわね」
漆黒の装束、と言ってはいるが、ショッキングピンクなシャツの上に真っ黒なジャケット、青のスカートと都会の女の子っぽい格好で彼女が年頃の女の子なんだなと再認識した。
「ああ。可愛いと思うぞ」
思っていたことをストレートに言ってやると、彼女の顔が真っ赤になった。
「ふ、普通に言わないでよばかっ」
そのまま顔を逸らしてしまう。いつもとは違う反応をする彼女が可愛らしくて。いつも以上に彼女を女の子と意識してしまって、おれも次の言葉が出ないでいた。
「おっ、お待たせしましたっ」
「おぉ、善子ちゃんが先に来てるずら」
そんなおれ達の沈黙を破ってルビィちゃんと花丸ちゃんが改札から出てきた。二人の声を聞くと善子はいつもの調子に戻った。
「遅いわよ二人とも。このヨハネを待たせるなんて」
「ごめんね善子ちゃん。中々今日着ていく服が決まらなくて」
そういうルビィちゃんはロングスカートに袖の短めのもこもことしたセーターっぽいもので抱き心地の良さそうな印象だ。
「まるもどうしようか迷っちゃって……」
そういう花丸ちゃんは青いミニスカなワンピースだ。大胆な彼女の格好にびっくりした。
「ど、どうですか先輩?」
「おら達の格好、せんぱいにはどう見えるずら?」
二人が上目遣いでおれに問いかけて来た。おれは笑って二人の頭を撫でた。
「ああ。二人ともとっても似合ってるよ」
その言葉に二人は心配そうな表情を解き、ふにゃっとした笑顔を見せた。
「えへへ、よかったー」
「おしゃれした甲斐があったずらー」
二人の笑顔を見てると、なんだかほっとするな。って、そんなことしてる場合じゃないな。
「よし、皆揃ったことだし、水族館に行くか!」
『おー!』
花丸ちゃんとルビィちゃんは二人して声を出して歩き出した。それに続こうとするおれの袖をくいとひっぱられる。
「善子? どうかしたのか?」
善子が少し恥ずかしそうにおれの袖を掴んでいる。
「ヨハネよ。そのシドー、わたしにはあれ、してくれないの?」
「あれって?」
「あれはあれよ! ずら丸とルビィには、してたじゃない……」
「あれって、二人の格好を誉めた時に頭を撫でたことか?」
「そ、そうよ。堕天使ヨハネが命ずる、わたしの頭を撫でなさい!」
なんだかんだで善子も頭を撫でられたいのか。堕天使な台詞に隠れた彼女の不器用さが、少し愛らしく思えた。
「仰せのままに、堕天使さま」
「んっ……」
ぽむ、と頭に手を乗せると善子が小さく声を漏らした。いつもの彼女とは違うその表情に、内心どきりとした。
「ふふ……」
少し頬を赤らめ、視線を落としておれの手を受け入れる善子。そのちょっと大人しい様が、可愛くてナデナデの手が止まらない。そして彼女の頭にあるシニヨンを撫でた時だった。
「ひゃあっ!!」
少し甲高い声をあげて善子がぴょんと跳ねて一歩後退した。その顔は真っ赤だった。
「きき、気安いわねリトルデーモン! このヨハネの大事な、『デーモン・コア』に触れようなどと!」
「撫でろって言ったのはお前の方だろ。第一、なんでそんな大事なコアが頭に乗っかってるんだよ」
「う、五月蝿いわね! ヨハネのこれに触るのはまだ早いって言ってるの!」
「まだ、ってことはいつか触らせてくれるってことか?」
「そ、それは……っ」
更に顔を赤くする善子。普段の逆襲と言わんばかりにおれは問い詰める。
「楽しみだな、善子のそれを触れる時が」
「っ、ばかーっ!!」
限界だったのか善子は涙目になりながら花丸ちゃんとルビィちゃんの方へと走っていってしまった。うーむ、少しやりすぎたかな。
おれは少し反省すると、三人を追いかけた。
「せんぱいはやっぱりスケベずら」
「か、かい先輩、善子ちゃんを泣かせるなんて……」
追いつくと、涙目の善子から話を聞いたのか、二人に睨まれた。善子は涙目のまま、舌をぺろりと出して笑顔を向けた。
可愛いと思ったけど、前言撤回。やっぱり可愛くねぇ。
沼津にある深海水族館は、深海生物を専門に扱っている水族館らしく、館内もその生物達に合わせてか最小限の明かりで通路を照らされていた。だからちょっと油断していると壁やら柱に身体をぶつけてしまうこともよくある訳で。
「ぴぎっ」
後ろからルビィちゃんの声が聞こえたので振り向くと、彼女は柱を目の前に頭を抱えて涙目になっていた。
「うぅ、頭ぶつけちゃいました……」
「暗がりだからね、仕方ないさ。大丈夫?」
おれはルビィちゃんに手を差し出した。悲鳴をあげられるかと思ったが、特に躊躇う様子もなく彼女はその手をとった。
「ありがとうございますっ。あの、かい先輩」
「ん?」
ちょっと申し訳なさそうに、それでいて亜子を赤らめながらルビィちゃんは上目遣いでおれを見つめてきた。
「暗いから手を握ってても……、いいですか? ルビィ、またぶつかっちゃいそうで」
うるうるとした瞳にドキリとして、おれは視線を逸らしながら答えた。
「べ、別に構わないよ? ルビィちゃんがそうしたいなら……」
「はいっ、ありがとうございますっ!」
ルビィちゃんは元気な返事と共に幼さ残る手でおれの手を握ってきた。その小さな手から伝わる女の子の柔らかな肌と温もり。
「じゃ、じゃあ行こうか――んがっ!!」
彼女をリードしようとして真っ先に壁に顔面をぶつけてしまった。かっこわりいな、おれ。
「もう、シドーったらなにしてるのよ」
鼻を押さえていると善子が呆れた顔をして近づいてきた。
「この程度の暗闇、魔界出身のヨハネなら楽勝よ。シドーも堕天使ルシフェルなんだからこれくらい余裕でしょ?」
「生憎こちとら元天使なんでな。真っ暗闇にゃ慣れておらんのだ」
「堕天使? 先輩も堕天使とかそっち側だったんですか?」
ルビィちゃんがおれを見つめてくる。うう、そんな哀れむ様な目で見ないでくれ。おれは心の中のしょーもない古傷を押さえながらルビィちゃんに微笑んだ。
「元、ね。善子に合わせてやるために、さ……」
「あー、なるほど……」
理解してくれたのか、ルビィちゃんは苦笑いした。理解が早くて助かります。おれ達二人の様を善子は頬を膨らませて怒りを露わにしていた。
「だからわたしはヨハネよ! シドーも合わせるとか言わない!」
「はいはい、んでヨハネ様は暗闇には慣れっこって話だったな?」
おれが話を合わせてやると、善子はおれの目の前に手を差し出した。
「これから先は更なる深淵が待っているわ。今のシドーとルビィでは一歩歩いた瞬間に闇の餌食になってしまうでしょう。そこで特別にこのヨハネが水先案内人に――」
「あ、いいです」
「最後まで言わせなさいよー!」
むきー、と怒る善子。このまま彼女を観察するのもいいかも知れないが、他のお客さんに迷惑をかけるのはよくないよな。
「仕方ない、じゃあ案内してもらうとするか。ルビィちゃんもそれでいい?」
「は、はいっ」
ルビィちゃんの了承も得たので差し出された善子の手を握った。
「あっ……」
彼女から漏れ出た感嘆の台詞。それと同時に彼女の体温が上がった様な気がした。
「し、仕方ないわね! シドー! その手を離さないことね!」
少し顔を赤くした善子が可愛らしくて思わず頬が緩む。彼女の牽引に従おうとした所で大きな声が響いた。
「あぁー! 善子ちゃんにルビィちゃん二人して何してるのー!?」
むすーっと頬を膨らませる花丸ちゃん。善子はふふん、と不敵に笑った。
「何って二人のリトルデーモンをここから先の深淵へと案内するところよ」
「え、ルビィもリトルデーモンにされちゃったの?!」
「そんなことはどうでもいいずら! 二人とも紫堂せんぱいの手をとってずるいずら! まるも、まるも!」
「は、花丸ちゃん。そう言ってもおれの腕は二本しかないし……」
「むぅ……。二人だけずるいずら。あっ、そうだ!」
頬を膨らませた花丸ちゃんは何か思いついたのか、おれの背中にぴったりと身体を寄せ、腰に両腕をまわしてきた。背中には大きくて柔らかな感触が。
「ははっ、花丸ちゃん!? な、何してるん!?」
「えへへ、ここが空いてたずら♪」
慌てるおれを余所に嬉しそうにする花丸ちゃん。まあ彼女が嬉しそうならいいか。
「「……」」
そして両脇から鋭い視線が。
「シドー、鼻の下伸びてるわよ」
「かい先輩のえっち……」
「の、伸びてなんかねーし! えっちでもねーし!」
「そんな先輩には……、えいっ!」
そう言うと、ルビィちゃんはおれの腕に身体を寄せてきた。決して大きくはないが、柔らかい胸の感触が伝わってくる。
「ちょっ、ルビィちゃん!?」
「ルビィの特等席は、ここです♪」
「ちょっとルビィまで!? な、ならわたしだって!」
そう言うと善子もおれに体重を預けてきた。スレンダーな身体つきがおれをドキドキさせる。
「いやお前は案内してくれるんだろ!? くっついてどうするんだよ!」
「気が変わったのよ! シドー! 早くヨハネ達を次のエリアへ導くのよ!」
「この気まぐれ堕天使め!」
「と言う訳で紫堂せんぱい、よろしくお願いするずら♪」
「ちょっと花丸ちゃん!?」
「えへへ。かい先輩、頑張って下さいね☆」
「ルビィちゃんまで!? お前等ぁー!」
仕方なくおれは一年生たちを引っ張りながら水族館の通路を歩き始めた。両腕背中からの柔らかさ同時にかかる重み。でも不思議と不快感を感じなかったのだった。
「なんだこれ」
それが目の前に広がる光景に関してのおれの感想だった。
「しーら! かんす!」
「シーラっ! カンス!」
「ジィーザァスクライストォー!」
一年生達が冷凍されたシーラカンスの前で謎の踊りと声をあげているのだ。何かの儀式と思われても仕方ない。周囲の人も変な顔して見ている。他人のフリをしておきたいが、放っておけるはずもなかったのでその儀式の間におれは割って入った。
「おいお前等、なにやってるんだよ?」
「フフ、知れたこと」
善子が怪しげに笑う。
「今から深海の悪魔、シーラカンスを召喚するための儀式を執り行っているのよ!」
「ちがうよぉ! シーラカンスは悪魔じゃないよぉ!」
ルビィちゃんが少しムキになって抗議した。
「ふっ、力のない者には解らないのね。シドーとこのヨハネになら――」
「いや全然わからんがな」
「ちょっとー!!」
善子の言葉を遮って否定してやると彼女はぷんぷんと怒った。そしておれに対して指さした。
「じゃあシドーはどの生き物悪魔っぽい感じがするのよー!」
「悪魔っぽい生き物って言われてもねぇ・・・」
おれは周囲の水槽を見渡しながら考えた。
「そうだ、リュウグウノツカイなんてどうよ?」
「リュ、リュウグウノツカイ!? わ、悪くないわね。あの白い身体で油断させて相手を更なる深淵へと引きずり込み――」
気に入ってくれたのか、善子はぶつぶつと言っている。
「かい先輩、ありがとうございました」
ルビィちゃんがぺこりとお辞儀をしてきた。
「別に対したことしてないよ。それにしてもさっきのあの動きは何なのさ?」
「えと、まるちゃんと話してたんですけど、シーラカンスって名前が――」
そう言って彼女はおれから少し離れると跳ねながら手足を大の字に広げた。
「シーラ!」
そして勢いよく両手を自分の顔の前まで戻した。
「カンスっ!って感じだと思いませんか?」
「あー、言わんとしてることがわからなくもないような・・・」
それで面白がって花丸ちゃんと二人して踊ってたのか。
「その動き、ダンスの方にも活かせるといいな」
「はいっ!」
その嬉しそうな笑顔が可愛くて、おれの頬が緩んだ。そして違和感を感じて周囲を見渡した。
「あれ、そう言えば花丸ちゃんは?」
「さっきルビィとお話ししてたのに、どこ言ったんだろ?」
ルビィちゃんと一緒に花丸ちゃんを探していると、善子が不気味に笑った。
「きっと深淵に引きずり込まれてしまったのね。深海の悪魔、リュウグウノツカイに!」
「気に入ったんだね、それ」
ルビィちゃんのつっこみを余所に善子の妄想は続く。
「リュウグウノツカイに魅せられたずら丸は、それの導きによってヨハネ達の届かない深淵へと足を踏み込んで――」
「まるがどうかしたの?」
「ひゃああぁぁぁ!?」
善子の後ろから現れた花丸ちゃんに驚いて悲鳴をあげる善子。花丸ちゃんは何が起きたのかわからず、きょとんとしている。
「ずら? 善子ちゃんはどうかしちゃったのかな?」
「ああ。いつものだから気にしないでいいよ」
「善子ゆーなっ!」
「そうだ! だいぶ歩いたし、ちょっと休憩しませんか?」
善子を華麗にスルーして花丸ちゃんが提案してきた。
「そうだな。なんだかんだで歩いてきたし、そうしようか」
他の二人も同意してくれたので休憩出来る場所へと移動しようとすると、紫堂せんぱい、と花丸ちゃんに呼び止められた。
「花丸ちゃん?」
「紫堂せんぱいは、まると一緒にドリンクを買いに行くずら♪」
そう言うと花丸ちゃんはにっこりと笑顔を見せた。
「えーとっ、確かここに……。あ、あったずら!」
飲み物を買いに行く道中、花丸ちゃんが立ち寄りたいと言った場所におれ達は足を運んだ。そこは土産物屋らしく、多くの種類のぬいぐるみが置いてあった。
「まるは、さっきお手洗いに行った時にここを通りかかったんだ。それで可愛いぬいぐるみを見て、ルビィちゃんにプレゼントしようかなって思ったずら」
「花丸ちゃんはルビィちゃんのこと本当に好きなんだねぇ」
「うん!」
花丸ちゃんは嬉しそうに返事をすると、メンダコのぬいぐるみを手にとって喋りだした。
「ルビィちゃんはいっつも図書室で一人本を読んでたまるに声をかけてきてくれたずら。一人でいることが多かったまるにはそれがすっごく嬉しかったから、ルビィちゃんのことが大好きなんだ」
おれが黙って彼女を見つめていると、その視線に気づいたのか慌ててぬいぐるみを元の棚に戻す花丸ちゃん。
「い、いや大好きって言っても! 友達としての大好きですから! せんぱいは安心して下さいね!?」
「はは、わかってるって。安心?」
「あぁー!! い、今のも忘れて欲しいずらー!!」
しまったと表情に出てしまってる花丸ちゃん。それが可愛らしくて、頬が緩んだ。花丸ちゃんは調子を戻そうと咳払いをした。
「そ、それでルビィちゃんにはどんなぬいぐるみが似合うかなって思ってせんぱいにも相談にのってもらおうかなって思ったずら」
「なるほど、それ位ならお安い御用さ。うーん、何がいいかな……」
ぬいぐるみを見渡してルビィちゃんに合いそうなものを探す。グソクムシとかマニアックな物も売ってるな。
「ん? これって……」
その生き物のぬいぐるみが視線に入った。脳裏にあいつの顔が過ぎった。おれがそのぬいぐるみを見つめていると、花丸ちゃんがにこにこ笑顔でこっちにやってきた。
「せんぱい! これなんかどうかな!?」
自分へのプレゼントじゃないのに、嬉しそうな表情を向ける花丸ちゃんは手に持ったぬいぐるみをおれに見せてきた。
「お、ルビィちゃんにピッタリかもね。そうだ、花丸ちゃん」
「ずら?」
「善子はどうなんだ? 善子のことは好きなのか? もちろん、友達としての、ね」
「もぅ、せんぱいはちょっといじわるずら……。うーん、善子ちゃんは……」
彼女は少し考えて、笑顔で答えた。
「面白い、かな」
「まあ、そうだよな」
その答えに思わず吹き出してしまう。
「善子ちゃんのアレに、乗ったりツッコんだり、とっても楽しいずら。善子ちゃんのお陰で、ほぼルビィちゃんしかいなかったまるの世界は広がったと思うから、善子ちゃんには感謝してるずら」
「じゃあ、善子にも感謝の気持ちを伝えなきゃな」
おれはそう言って、おれは見つけたぬいぐるみに手を伸ばした。
「あぁー!! シーラカンスのぬいぐるみだぁー!!」
ドリンクも無事に買い終えたおれ達は、さっきの土産物屋で買ったぬいぐるみをルビィちゃんに渡した。ルビィちゃんは嬉しそうにそれを抱きしめている。
「何よぉ、ルビィにだけ。このヨハネへの貢物はないの?」
「そんな善子ちゃんにはこれずら!」
そう言って花丸ちゃんが渡したのは、リュウグウノツカイのぬいぐるみ。それを見た善子は眼を輝かせた。
「わぁーお♪ わかってるじゃないのずら丸! この堕天使ヨハネに相応しい贈り物よ! ありがと♪」
「えへへ~、二人に喜んで貰えて嬉しいずら」
二人の笑顔につられて、花丸ちゃんにも笑顔の花が咲いたのだった。
●●
「しーら! かんす! 僕はシーラカンスだよ!」「我が名はリュウグウノツカイ。深海に巣食う、白き悪魔」
ルビィちゃんと善子ちゃんがまるが買ってあげたぬいぐるみで遊んでいる。まるはそれを少し離れたとこで見てる。
「混ざらなくていいのか?」
そんなまるの隣に、紫堂せんぱいがやってきた。まるはその問いに首を横に振った。
「二人が嬉しそうにしてるだけで、まるはそれで満足ずら」
「でもおれは、花丸ちゃんにも笑顔でいて欲しいな。だからっ――」
ぽす、とまるの頭に何かがのしかかった。それを手にとってみると、さっきおらが手に取ったメンダコのぬいぐるみが。
「これって――」
「さっき手に取ってたでしょ、それ。気に入ったのかなーって思ってさ。ちょっと戻って買って来たんだ」
せんぱいは、ちゃんとまるのことも見てくれてたんだ。それが嬉しくて、胸の中のどこからかぽかぽかと温かい。
「も、もしかしていらなかったか?」
まるが俯いているのを見て、せんぱいはちょっと慌ててるみたい。ちょっと脅かしてみようかな、といたずら心が湧いてきたずら。
「せんぱい! まる、とっても嬉しいずら!」
ぎゅっとせんぱいに抱きついてみた。せんぱいの少し硬くて、男の人の身体。密着してると、わわ、ちょっとドキドキしてきたなぁ。
「え、ちょっ、花丸ちゃん! その、当たってるから!」
「えへへ~、当ててるって言ったらどうするずら?」
「なっ!?」
恥ずかしさを隠しながら笑って言ってみたら――、ふふ、せんぱいの顔、真っ赤ずら♪
「なーんて、冗談ずら♪ せんぱい、顔真っ赤ずら~」
せんぱいが次の言葉を言う前に、ぺろっと舌を出してせんぱいから離れた。
「せんぱい、ぬいぐるみありがとうずら! 大切にするずら!」
そのまませんぱいの顔を見ずにルビィちゃん達の元へと駆け寄る。
「あらずら丸、その愉快な人形どうしたのよ?」
「紫堂せんぱいがくれたずら!」
「あっ、いいなぁ花丸ちゃん!」
「でしょー!? えへへ、おらだけのものずら♪」
こうしておら達は三人でお人形で遊びました。
紫堂せんぱい。Aqoursの中でも端っこにいるまるのことも見てくれる、先輩が大好きずら♪ いつかこの気持ちを伝えることが出来たらいいな♪
風邪と闘いながらの執筆は、どうもオチがこれでいいのかと鈍らせてしまう。風邪引いたら小説書かずにじっとしてろってことか。それでも書きたくなるのが小説家の性か。
さて、この物語も通算50話以上を超えることになりました。それを記念して何かしたい。案が2つあるのです。
1.どなたかが書いて送って下さったイラストからシチュエーションを想像して、小説を書く。
2.ツイッターで「#一番目と二番目に来たキャラでシナリオを書く」みたいなのをやって、出た二人と主人公でシナリオを書く。
どっちがみんな見たいかな? つーか1に関しては挿絵頂戴って言ってるようなもんやし。ご意見お願いします。
次回は曜ちゃんメインで水着回やりたいなぁ。
ご意見ご感想、企画へのお便りお待ちしてます。