ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁 作:伊崎ハヤテ
今回は番外編。時系列は冬です。本編との差が激しいかも知れませんが、そこはご容赦下さいませ。
「450円になります。はい、丁度お預かりします。ありがとうございましたー」
わたしは深夜のコンビニで一人、接客業に勤しんでいた。ライブの衣装の資金調達と、人前に出ても緊張しないようにと舞台度胸をつける為にこのバイトを始めた。
でも、深夜の時間帯ならそんなにお客さんは来ないはずだった。
「あっ、いらっしゃいませー」
店に入ってきたのはガタイのいいおじさん達が数人。どうやらトラックの運転手さんみたい。ここを休憩場所にしようとしたみたいで、その人たちが一気にレジに押し寄せてきた。
「さ、三百円になります・・・」
高身長のおじさん達に気圧されて声が小さくなり、少し恐怖を覚えてしまう。そんな時だった。
「二番目にお待ちのお客様、こちらへどうぞー」
聞き慣れた声。視線をそっちへと向けるとわたしと同い年の子が隣のレジを開けたのだ。おじさんはそっちへも流れていき、わたしへの負担は軽減されたのだった。
「ありがとうね、紫堂くん。休憩中だったんじゃない?」
「まあな。でも監視カメラで見てて梨子がピンチそうで、いても立ってもいられなくてな。大丈夫、店長には言ったから」
「紫堂くん……」
「恋人のピンチには真っ先に駆けつける、それがモットーですから」
そう、わたし桜内梨子は彼、紫堂櫂くんとお付き合いしています。ちょっとしたことから海で溺れていた所を助けて貰って、一目惚れして、色んなことがあって今に至る。あの時、告白して本当に良かったな。
「梨子? どうかした? 顔が真っ赤だけど」
「な、何でもないの! なんでも!」
いけない、顔に出ちゃってたみたい。頬を押さえるけど、とっても熱かった。
「ムリはするなよ。倒れられちゃ、たまったもんじゃないから」
「ありがとう。もう大丈夫だから・・・」
心の底から心配してくれているのが表情から伝わる。本当に紫堂くんは優しいなぁ。梨子にはもったいない彼氏さんです。
「さ、残りの時間も頑張ろうぜ」
「うん!」
紫堂くんがにかりと笑ったので、わたしも出来る限りの笑顔で応えた。
「お疲れさま、これお茶」
控え室でおにぎりを食べていると、紫堂くんが紙コップに入った暖かいお茶を差し出してくれた。わたしはありがとう、と言うとそれを受け取った。
「でもこの時間帯にシフト入れられるなんて災難だよな。例外はあるとは言え、殆ど客がいない時間だし」
「店長さんの都合もあるし、仕方ないよ。それに、紫堂くんが終わるまでここで待っててもいいって言ってくれたし」
「あー、そうだな」
紫堂くんは少し苦い顔をして、監視カメラの先の店長さんを見る。わたしと彼のシフトは運悪く全く被らないようになってしまった。さっきみたいに彼が助けに来てくれることはあるけれど、基本は一人だ。シフトの都合上仕方ないと思っていても、やっぱり寂しいな。
「せっかく梨子と同じとこで働けるようになったのに、ちょっと残念だなー」
紫堂くんも、わたしと一緒にいたいんだ。それが嬉しくて、隣に座る彼の肩にぽすっと体重を預けた。
「梨子?」
「紫堂くんの休憩が終わるまで、こうしてたいな……。駄目?」
そうやって彼を見つめると、優しくわたしの肩を抱いてくれた。やっぱり落ち着くなぁ。
「駄目な訳ないだろ。おれだって充電したいしな」
そうやって互いに身を寄せ合って十数分が経った頃だろうか。紫堂くんが名残惜しそうに身体を離した。
「よし、充電完了っと。それじゃ行ってくるな」
「うん……」
寂しそうな顔が伝わってしまったのか、彼は微笑んでわたしの頬に右手を添えてきた。
「大丈夫さ。すぐに戻ってくる。だから待っててくれ」
「うん、わたし、待ってるね」
それに応えるようにわたしもその手に自分の左手を触れさせた。少し大きくて固い男の子の手だった。
空が白んできて、朝が来ることを告げている。わたし達は二人でコンビニから出た。
「もう朝か。今日は学校ないし、どうしよっか?」
紫堂くんがそう尋ねてきた。わたしと彼の間にはレジ袋が一つ。さっき買ってきた暖かいコーヒーが入っている。それの両端を二人で持っている。
「今日は練習もないし、せっかくのお休みだからわたしの家でゆっくりしてく?」
「おっ、いいのか?!」
わたしの提案に紫堂くんの顔が輝く。嬉しいそうにしてくれる顔を見ると、バイトの疲れも吹き飛んじゃうな。
「うんっ! 紫堂くんと一緒に居れるのが、一番幸せだから……」
相当照れくさかったのか、顔を赤くしながら彼は視線を逸し、別の話題に入った。
「い、いやーしかし、やっぱ疲れるなー、深夜のバイトってさ」
「ふふ、そうだね。でもそんな時こそ、これだよね」
レジ袋に入っているあったかい缶コーヒーを取り出して彼に差し出した。
「ああ。でも本当に暖かいな」
「そうだね。こんなに手が暖かくなっちゃったよ」
コーヒーを自分のコートにしまうと両手を彼の頬に当てた。
「ホントだ、あったかい――」
そう言おうとした瞬間に、わたしはちょっとつま先立ちして自分の唇を彼の唇に押し当てた。そして伝わって来る、紫堂くんの温もり。
「もっと暖かくなったでしょ?」
頬の熱を感じながらわたしは微笑んだ。これは、一緒に頑張ってくれた紫堂くんへのプレゼントです♪ 彼は嬉しそうに笑ってキスをしてくれた。
それからレジ袋がなくなったわたし達は、手を繋いで家まで帰りました。
40分で仕上げました。当選の知らせを受けて一時間弱で構成を考え、昼休みに完成させました。自分の妄想力が怖い。
この番外編では二人は付き合っている設定ですが。いずれ本編との差が生ずるかもしれません。故のDream Worldです。これも好きなエロゲのワードの一つだったり。
梨子ちゃんとのルートの最後でもある告白のストーリーは頭の中でしっかりと構成しております。そこまで行くのが楽しみです。それまで待って頂けると嬉しいです。
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