ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁   作:伊崎ハヤテ

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 スクフェス、気がついたらアクアリウム衣装全員が揃ってました。やったぜ。


20話 男子高校生と中二病少女―偽りのラプソディー―

 おれが1人砂浜に腰を下ろしていると、ざっざっと砂を蹴る音が聞こえた。その音の主は俺の近くで止まると、腰を下ろした。

 また、津島善子か。どうやらまた捕まってしまったらしい。どうやらやっこさん、おれにまたイカした台詞を言って欲しいようだな。この堕天使め。まあいい。求められるってのは悪くない。そこまで望むと言うのなら聞かせてあげましょう、イカした言葉を!

「今日も波が騒がしいな……」

「……」

 返事が返ってこない。あんまりウケなかったか? 同じネタだからもう飽きられてしまったか。じゃあこれならどうだ。

「おれは、この波が好きじゃねえ。波はいつもおれから大事なモンかっさらっちまう」

「……」

 あ、あれ? 反応がない。後ろにいるであろう気配の主は何も喋らない。お気に召しませんでしたか?

「いつかおれが止めてやる。この波を……」

「……」

 これでも駄目!? 自分に自信がなくなってきたぞ。おれは頭をフル回転させてセリフを考える。悪寒の逆流に逆らいながらも、答えを見つけ出そうと脳内を思考が駆け巡る。見つけたぞ、おれの世界の答えを!

 おれは立ち上がると海を見つめた。ざざん、と波の音が周囲に響く。充分な余韻を残してここでセリフを言いつつ振り返る!

「どうした、今日は随分と大人しいな。『可愛いウサギちゃん(ラビッ――」

 そこでおれの思考は停止した。振り返って見れば、そこには少女が一人俺を見つめていた。肩ぐらいまである茶色い髪。くりくりとした琥珀色の瞳が俺を見つめている。もちろんだが、津島善子ではない。この子は、国木田花丸だ。

「ずら?」

 おれの言葉に彼女は首を傾げている。俺は彼女にふっと微笑むと、一目散に海へと走りだした。

 

 

●●

 その日、まるは一人でおうちに帰るところでした。今日はAqoursの練習もなかったし、その分図書委員のお仕事をしていたので一人ぽつんと帰り道を歩いてた。いつもはルビィちゃんと一緒に帰ってたけど、今日は一人ぼっちの帰り道。仕方ないとわかっていてもどこか寂しくて。海でも眺めて帰ろうかなって思ったので視線を海に向けると、砂浜に一人腰掛ける人がいました。

「あれは……、紫堂せんぱい?」

 一人ぽつんと座って海を見つめているせんぱい。ちょっと驚かそうかなと思ってまるは後ろから近づくことにしました。でも先輩には気づかれていたみたいでした。そして先輩はこう呟きました。

「今日も波が騒がしいな……」

 え? 紫堂せんぱい、今なんて言ったずら?

 おらが何も言えずにいると、せんぱいはよくわからない台詞を言い続けた。おら、今ナンパされてるのかな? ナンパされてると思うと少し身体が火照る。で、でもまるはよくじっちゃんに『ナンパするような男にはついていくな』って言われちまってるし。でもでも、紫堂せんぱいはちょっとカッコいい人だし……。

 なんて一人で慌てていると、紫堂せんぱいが立ち上がった。無言のまま海を見ていると、振り返ってこう言ったずら。

「どうした、今日は随分と大人しいな。『可愛いウサギちゃん(ラビッ――」

 そこまで言いかけて紫堂せんぱいは固まっちゃった。そして小さく微笑むと、海へと走っていきました。

「ちょっ、紫堂せんぱい! そこからは海ずら!」

 まるはびっくりして追いかけてせんぱいの手を取りました。

「死なせてくれぇ! あんな台詞を聞かれたんならおれはもうこの海と一つになるしかねぇ!!」

「駄目ずら! とにかく落ち着いて~」

 おらが必死にぎゅっと後ろから抱きしめること数分。紫堂せんぱいは落ち着きました。

 

 

◇◇

 ざざん、と波が大きく音を立てている。おれはそれを聞きながら隣にいる花丸ちゃんに呟いた。

「ごめん」

「大丈夫ずら。紫堂せんぱいが落ち着いてくれたのでよかったずら」

 おれは半分錯乱して海に入ろうとした。それを必死に花丸ちゃんが止めてくれたのだ。ぎゅっとおれを後ろから抱きしめてくれて。

「ありがとうな花丸ちゃん。お陰で落ち着いたよ」

 別のとこは落ち着いてないけど。背中から伝わる柔らかい双丘。幼そうな顔立ちからなんてものをお持ちなんだ。あの大きさ、果南ねえちゃんと同じかそれ以上か――いや、これ以上はやめておこう。

「善子だと思ったんだ。なんかイカした台詞を言ってやろうと思ってあんなことを……。なぁこのことは……」

「大丈夫ずら。誰にも言いません。その代わり……」

 花丸ちゃんが少し虚空を見ると妙案を思いついたのかにこりと笑った。

「おらのおうちまで一緒に帰ってください♪」

 

 

●●

「へぇ、花丸ちゃんのうちって寺だったのか」

 紫堂せんぱいがまるのおうちのお寺を眺めた。最初にまるのおうちを見た人は皆おんなじリアクションをするんだよね。

「はい。おらのうちのじっちゃんが住職をしてるずら。あっ――」

 そこまで言ってまるは口を両手で塞いじゃった。しまった、また『おら』とか『ずら』とか言っちゃった。ていうか気づくの遅すぎだよ。まるのばかぁ……。

「どうした? 具合でも悪いのか?」

 紫堂せんぱいが心配そうにまるを覗き込む。うう、ちょっと恥ずかしいな。

「いえ、『おら』とか『ずら』とか言っちゃって……。田舎臭いですよね……」

 紫堂せんぱいは少し考えると、頬を緩めた。

「いいんじゃないか? それくらい」

 え? いいの?

「ていうかここはバリバリの田舎だぜ? 気にする人なんていないさ。それにさ――」

「それに?」

 ちょっと照れくさそうに先輩は笑った。

「おれに対してそういうのが出ちゃうってことはさ、おれに気を許してくれてるってことかなーって思うんだけど」

 そうなのかな。まだよく自分ではわからないずら。

「いや、花丸ちゃんが気にしてるんなら治すべきだとは思うけど……」

 くすっと笑いが漏れてしまった。ちょっと戸惑うせんぱいにおらは笑顔で答えた。

「じゃあ、紫堂せんぱいにはもっと『おらずら』言うずら!」

「『おらずら』って何だよ」

 紫堂せんぱいも笑ってくれた。夕日の日差しを浴びて、せんぱいの笑顔が少し魅力的に見えて、ちょっとドキッとしちゃった。

 

 この胸のドキドキは何なんだろう。それをもっとまるは知りたいな。まるの紫堂せんぱい観察はまだまだ続きそうです。




 いつからヨハネ回だと錯覚していた? 花丸回でした。アクアリウムでの花丸ちゃんの笑顔が大好きです。
 次こそヨハネ回を書きたいです。
 ここでキャラのバランス調整が終わったら、合宿回を始めたいと思ってます。かなりの長編になるんだろうなぁ。

 ご意見ご感想お待ちしてます。

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