ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁   作:伊崎ハヤテ

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恋になりたいAQUARIUMが仕事中も脳内再生されてしまう今日このごろ。
スルメ曲ってこのことかな。

でもスクフェスであれがクールに分類されるのは何か納得出来ない。


2話 目撃は水飛沫と共に

「二人共いつも起こしてくれてありがとうね~」

 学校までの道、千歌が少し申し訳なさそうに口を開いた。

「何を今更、毎日のことだろ。なあ曜」

「そうだよ千歌ちゃん。気にすることないって!」

「えへへ、ホントにありがと~」

 少しだけ出ている寝癖を撫でる千歌。なんていうか、甘やかしたくなる衝動に駆られる。

「千歌は俺たちの中でも末っ子の妹って感じだよな」

「えー、そうかなぁ? じゃあ櫂ちゃんと曜ちゃん、どっちが上なのかな?」

 そんな千歌の問いに俺は曜と自分の誕生日を比べる。

「そりゃお前、俺の方が生まれたの早かったから俺が兄だろう」

 そんな俺の言葉に曜はふふ、と笑った。

「じゃあ今度から毎朝『お兄ちゃん、起きて♡』って起こそうかな~?」

 その提案に俺は曜に真顔で返した。

「是非明日からお願いします」

「か、櫂……。さ、流石にそれは……」

 少し顔を赤らめ、視線を泳がす曜。が、すぐに冷ややかな視線を贈られる。

「キモい」

「うん、ごめん」

 俺も彼女の視線で我に返った。しかしそれだけ甘美な響きだった。

 何時も通りの他愛のない話をしながら、俺たちは通学路を歩いていった。

「それじゃ櫂、私たちはここで!」

 びしり、と敬礼して俺とは違う道に入る曜。千歌もそれに続いて俺から離れていく。中学までは同じ学校だったが、二人が女子校に入学してからは途中まで一緒に行くことになっている。それが少し寂しいなんて、この二人には絶対話せないけど。

「おう、それじゃまた夕方、かな?」

「櫂ちゃん、またねー!」

 手を振る千歌を背に、俺は自転車に跨がりペダルに力を入れた。

 

 

 一日ってのは気がつきゃ終わっているもので、俺は帰りの道を自転車で走っていた。夕日が水平線に沈みかけ、周囲が橙に染まる空。この空になる時間帯に帰ると――

「あ、櫂ちゃーん!!」

 朝方の分かれ道で千歌が手を降っているのが見えた。

「あれ、曜は?」

「水泳部に顔を出してるって。わたしは何もなかったから先に帰ることにしたんだ」

 そう答えながら自転車の後ろに乗る千歌。二人だけで帰る時、俺はいつも後ろに乗せることにしている。俺は少し重くなったペダルに力を込めて漕ぎだした。

 

「そういやどうなのさ、スクールアイドル活動ってのは?」

 海沿いの道、車の通りも余りない道。擬似的な二人っきりの空間の中、俺は話を切り出した。

 新学期が始まって二、三週間程経った頃だろうか、千歌が突然「スクールアイドルを始める」と言い出したのだ。俺と曜は彼女の突拍子もない発現に空いた口が塞がらなかった。更に曜の話によると、部活まで発足させたのことだ。

「んー、生徒会長のダイヤさんによると『部活というのは最低五人でやるもの。一人しか部員が存在しない部活を認める訳にはいきませんわ!』ってさ」

「まあそれは生徒会長さんの意見は至極当然だな」

 俺が生徒会長に同意したのが不服なのか、千歌は後ろで立って俺の肩を掴んだ。

「もーう! 櫂ちゃんもそんなこと言う!」

「俺だって千歌のことは応援したいがよ、他校の俺がどうこう出来るもんでもないだろ」

 それはそうだけど、と頬を膨らませる仕草が背中から伝わる。が、思いついたのかすぐさま明るい表情に変わった。

「あ、でもね! 曜ちゃんが入ってくれたんだ!」

「あいつ、水泳部があるだろうに。大丈夫なのか?」

「私も最初はいいの?って聞いたんだけど、私の為にって入ってくれたんだ」

 嬉しさが声に載って聞こえてくる。本当に嬉しかったんだな。

「いい親友を持ったじゃんか」

「うん!」

 こりゃ幼なじみとして俺も人肌脱いでやらないとな。

「俺も出来る範囲で手伝ってやるよ」

「え!? 櫂ちゃんもスクールアイドル部に入ってくれるの?」

 その返しは想定していなかったぞ。

「あのな千歌、お前はふりふりの衣装を着て踊っているお前らに混じっている俺を見たいか?」

「うーん……、ごめん」

「わかればよろしい。まあ手伝うって言っても、相談にのってやる程度のことしか出来ないけどな」

「それだけでも助かるよ。あ、櫂ちゃんは作詞出来ないかな? 歌も自前で用意しなきゃいけないみたいだし……」

「作詞の才能があれば協力してやってもいいんだけど、俺、音楽の成績は万年3だからなぁ」

「え? でも櫂ちゃんって中学までは変に凝った詩とか作って――」

「千歌」

 俺は自転車を止め、真顔で千歌を見つめる。

「それ以上はいけない」

 俺の気迫に押されてか千歌はう、うんと黙ってしまった。視線を逸らしていた千歌がふと視線を小さな船着場へと向けた。

「あれ?」

「どうした?」

「あそこに人が――」

 彼女が指差した方向には一人の女の子が。歳は俺たちと同じ感じで、ここいらじゃ見たことのない制服だった。ワイン色に近い髪の毛が潮風によってさらさらと流れる様は、綺麗の一言だった。曇った表情のまま、じっと海を見つめていたかと思うと、突然にブレザーを脱ぎだした。

「ん? どうしたんだろう?」

 女の子の行動に千歌は自転車から降り、俺の隣に立った。

 女の子はブラウスのボタンをぷちぷちと外し始め――

「わーっ!! 櫂ちゃんは見ちゃダメー!!」

 千歌は慌てて俺の目を塞いだ。目の前に広げられているであろう光景がよく見えない。

「え?! まさか……、まだ4月だよ……」

 声色から顔が青ざめているのが解る。千歌は俺の目を塞ぐのをやめると女の子の元へと走っていく。枷がなくなり、俺が目にしたのは、学校指定であろう水着に身を包んだ女の子。そして彼女に必死にしがみつく千歌。千歌のことだろう、『身投げなんて駄目ー!!』なんて言ってるんだろうな。抱きつかれた女の子も慌てているのがよく見える。そしてそのまま二人はバランスを崩し、飛沫をあげて海へと落ちていった。流石にこの光景に俺も少し焦燥を覚えた。

「――っ!! ったく!!」

 俺は濡れたら困る物を置いて海へと走った。

 




自転車に乗る千歌と曜の違い。
千歌:後輪のストッパー当たりに足掛けて俺君の両肩に両手を乗っけるタイプ。
曜:右左どちらかに両足を揃え、俺君の背中にそっと寄りかかるタイプ。

実は梨子ちゃん登場まで考えてはいたけど一人一人掘り下げたいので次回に持ち越しそます。梨子ちゃんみたいな子は中々に好み。背伸びしてキス待ち顔して欲しい。

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