ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁 作:伊崎ハヤテ
「なんか、あっちーな……」
むしむしとした暑さが肌にへばりつく。本当なら自転車ですいすいと帰れるはずだったのに、どこかの幼馴染が借りていったせいで徒歩で学校からの帰り道を歩くハメになったわけで。
「こりゃアイスでも食わなきゃやってらんねーわ。ってあれ……」
「貴方は……」
通学路でばったりと一人の女の子に出会った。長い黒髪、大和撫子を髣髴とさせる黒澤ダイヤさんだ。ダイヤさんは俺を見るなり、頭を下げた。
「その節はお世話になりました」
「いえいえ、こちらこそ。っていうかもうだいぶ前のことじゃないですか」
「ですが、あの時は何もお返ししてませんし……」
「お返しだなんて……、介抱してもらっただけで充分ですよ」
「わたくしの気が済まないのです。妹を助けてもらったのに何のお返しもしないなど、黒澤の恥でもありますし……」
義理堅い人だな。このまま折れてはくれないだろう。それじゃあ……。
「じゃあダイヤさん、付き合ってくれませんか?」
「つつ、付き合う!?」
俺の言葉にダイヤさんの顔が真っ赤になった。
「そ、そんな、わたくしと貴方はまだ出会った間もなくて……。でもでも、貴方のことは――」
「ダイヤさん? あの、駄菓子屋に付き合って欲しいってだけなんですけど……」
俺の言葉にダイヤさんの言葉は止まり、顔を真っ赤にして叫んだ。
「ちゃ、ちゃんと目的語をつけて話しなさいな!」
「いいんですの? 駄菓子屋のアイス一本がお返しで……」
「俺みたいな庶民にはこれがいいんですよ。ほら」
店のおばちゃんにお金を払い、ホームランバーを二本持ってきた。その一本をダイヤさんに差し出す。
「あら? これをわたくしに? 貴方のだけで良かったのに」
「俺一人だけで食べるってのは俺が申し訳ないですよ。それに――」
俺は彼女の隣に座り、アイスの包みをとってそれを口に運んだ。バニラの甘みとアイスの冷たさがなんとも心地よい。
「美味しいものを二人で食べれば、もっと美味しく感じるって言うでしょ?」
「そういうものでしょうか……。ん……」
ダイヤさんは訝しげにアイスの包装を解き、それを口に含んだ。
「はむっ……。んん……」
左手で髪をかきあげてアイスを食べる様はどことなく、エロい。そんな俺の視線に気づかず、ダイヤさんはバーを舐める。
「なかなか……、固いですわね。舐めたほうがいいかしら。れるっ……ちゅっ……」
控えめに奏でられる音が、何故か卑猥だ。このままだと変な気が起きてしまいそうだ。
俺の視線に気づいたのか、不思議そうに俺を見つめるダイヤさん。
「何ですの? わたくしの顔に何か?」
「いえ、別に……」
「もしかして、食べ方が下品でしたか? ごめんなさい、こういった物の食べ方には疎くって……」
「いえいえ! 問題ないですよ! むしろこちらが申し訳ないくらいです!」
「?」
慌てて視線を逸し、アイスを食べるのに集中する。すると隣からダイヤさんの感嘆の声があがった。
「あら、なかなか美味しいですわね! こんなに美味しい物があるなんて、わたくし知りませんでした!」
その後も美味しそうにアイスを口に含むダイヤさん。上品で大和撫子な彼女の意外な一面を見た気がした。
「こんなので良かったらまたダイヤさんに紹介しますよ」
「よろしいのですか!?」
ダイヤさんは目を輝かせて俺を見つめる。美人過ぎて少し近寄り辛いイメージがあったけど、可愛いところもあるんだな。
「ええ。俺でいいのなら」
「ありがとうございます。わたくし、異性の友人というのに恵まれなくて……」
「女子校ですもんね。仕方ないですよ」
「そうなのです! そもそも――」
それからしばらく、ダイヤさんの愚痴に付き合うことになった。
気がつけば空がオレンジ色に染まっていた。こんな時間になるまで話し込んでたのか。それはダイヤさんも感じたらしく、話を止めた。
「あら、もうこんな時間ですのね。ごめんなさいね、わたくしの話を一方的に……」
「いいですよ。共学の俺にとっては新鮮な話ばかりでしたし」
「ふふ、ありがとうございます。あの――」
ダイヤさんはまた申し訳無さそうな表情を向けている。俺はそれに笑顔で答えた。
「ええ。また今度、美味しい物を紹介しますよ」
俺の言葉に彼女はぱぁっと表情が明るくなった。その笑顔は大和撫子な彼女とはまた違う、魅力を放っていた。
●●
おねえちゃんが帰ってきてから妙に機嫌がいい。ルビィと話す時はいつもちょっと高圧的なのに、今日はどこか優しい。
「おねえちゃん、今日はどうしたの?」
「え? どうもしてませんけど?」
笑顔で答えるおねえちゃん。嘘だ。絶対なにかあったに違いない。
「嗚呼、次に会うのが楽しみですわ……」
「えっ、おねえちゃん、デートなの!?」
「で、でぇと?! ただわたくしはあのお方と美味しい物を――」
そこまで言うとおねえちゃんは顔を真っ赤にして固まっちゃった。どんな約束をしたのか知らないけど、それが今になってデートと呼ばれるものだと認識したのかな。
でも、男の人との縁が全く無かったおねえちゃんが夢中になる人ってどんな人だろう。ルビィの知ってる人かな。怖い人ならどうしよう。
疑問は尽きないけれど、取り敢えず固まっちゃったおねえちゃんをなんとかしよっと。
ダイヤさんは駄菓子とか庶民的なお菓子に疎そう。そんなイメージで書きました。ダイヤさん書くのとっても難しい……。皆さんからみて僕の書くダイヤさんはダイヤさんなのだろうか。
そして試験的にいれたちょいエロ要素。ダイヤさんには髪をかきあげながらモノを舐めて貰いたい。今回はルートが終わったヒロインからR-18回を解禁していこうと考えてます。その場合「X版」みたいなタイトルで別枠で投稿するつもりですけど。そもそも随分先の話だけどね。
ご意見ご感想お待ちしてます。
《追記》ダイアではなく、ダイヤというご指摘を頂きました。本当にすみませんでした!