ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁   作:伊崎ハヤテ

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俺「ルビィちゃんに、『おにいちゃん』って呼んでもらえるとするじゃろ?」
ダイヤ「はぁ」
俺「とっても幸せ」
ダイヤ「ぶっ飛ばしますわよお兄さま」

 ふむ、ダイヤさんにお兄さまって呼ばれるのも悪く無いわね。


17話 ご注文はサンドイッチですか?

「――、――い」

 誰かが俺を呼んでいる。その呼びかけに意識が形を成そうとしている。ここはどこだっけ。俺は、何してたんだろう。

「か――、――い」

 その声に呼び寄せられるかの様に俺の視界が色づけられていく。

 薄っすらと眼を開ければ誰かが俺を見つめている。

「やっと起きた。早く起きないと遅刻だよ?」

 頬杖をついて俺を優しく起こそうとする。こんなこと、曜がしてくれるはずもない。微笑む彼女の髪は蒼の混じった黒髪で、後ろで結いてあった。俺が知る人でその髪をしている人は一人しかいない。

「松浦……、先輩?」

 俺の呼んだ名前が不満なのか、顔をしかめて俺の頬を突いた。

「もう、違うでしょ? 寝坊助してちゃ駄目だよ?」

「果南……、ねえちゃん」

「よろしいっ」

 果南ねえちゃんはにこりと笑った。

「どうしてここに? いつもは曜が起こしに来るんだけど……」

「あー、曜に頼まれたんだ。水泳部の朝練あるから、かいを起こしに行ってあげてって」

「あー、なるほど……」

 ベッドから起き上がると、果南ねえちゃんは微笑んでくれた。

「おはよ、かい」

「おはよう、ございます……」

「もーう、まだかしこまってる~。私とかいの仲でしょ?」

「親しき仲にも礼儀ありって奴だよ! 俺だってもう昔の甘えん坊じゃ――」

「えいっ」

 俺の抗議を遮るように果南ねえちゃんはぎゅっと俺を抱きしめた。

「ちょ!? 果南ねえちゃ……っ!!」

「ちょっとうるさいから黙って。これで落ち着いた?」

 落ち着くどころか、朝の生理現象とこのハグが合わさってマズいことに!

「あっ……」

 果南ねえちゃんもそれに気がついたのか、顔を赤らめて身体を離した。

「ごっ、ごめん……」

 互いに視線を逸らしてしまう。身体が熱を持ち、視線を彼女に向けられない。

「じゃ、じゃあ俺着替えるから……」

「う、うん……」

 そう言って果南ねえちゃんは後ろを向いた。

「あの、出来れば部屋から出て欲しいんだけど……」

「あっ、ご、ごめん!」

 顔を真っ赤にしながら果南ねえちゃんは部屋から出て行った。何だか、顔を真っ赤にして慌てる果南ねえちゃんが新鮮で、可愛かった。

 俺はその様を思い出し笑いすると壁にかけてある制服に手を出した。

 

 

「おまたせ」

「う、うん……」

 俺が部屋から出ても果南ねえちゃんの調子は戻らないままだった。顔が赤いのを悟られまいと目線を合わせないようにしている。なんというか、そんな反応されると、俺もどうして良いのやら……。

「Oh! 改めて食べたけど、ここの魚はホントにデリシャスね!」

 そんな俺達の間に響く甲高い声。どうやら下にもう一人いるようだ。

「まさか……」

 俺は急いで階段を駆け下りた。

「いやぁ、淡島のお嬢さんに改めて褒めてもらうのは嬉しいねぇ!」

「これだけフレッシュで美味しいんですもの、ウチに仕入れるのは当然よ!」

 上機嫌なオヤジと、焼き魚をつつく小原鞠莉さんの姿があった。

「あ、カイ! グッモーニン! 朝ごはんにしまショ!!」

 俺を見つけるなり鞠莉さんは俺に隣に座るように手招きした。俺は逆らえるはずもなく、彼女の隣の椅子に腰掛けた。

「おじさん、おはよう」

 果南ねえちゃんが親父に挨拶しながら俺の反対側に座った。

「おはよう。果南ちゃんもありがとな。このバカ息子を起こしてくれて。朝飯食ってく?」

「んー、家で食べてきたからいいかなー」

 親父と果南ねえちゃんのやりとりを聞いていると、俺の前に焼き魚とご飯と味噌汁が出された。

「はい、カイのbreak fastよ」

 鞠莉さんが朝食を出してくれたみたいだ。

「あ、ありがとうございます……」

 俺が箸を持って食べようとすると鞠莉さんはそれを制した。綺麗に魚をほぐすとそれを俺の口元へ運んできた。

「カイ、あ~ん」

「い、いや、自分で食べられますよ!!」

「一回だけでいいから~! あ~ん!」

 年上の女性からの押しには俺はとても弱い訳で。俺はなされるがままに口を開けてしまう。

「あ、あ~ん……」

 そして運ばれる焼き魚。箸が口から抜かれた所でそれを咀嚼する。うん、白身魚の旨味が舌の上で踊っている。

「ハイ、よく出来ました~」

 鞠莉さんは嬉しそうに俺の頭を撫でる。その様を親父はにやにやと見ている。視線を果南ねえちゃんに向けるとちょっと不機嫌な顔をしていた。

「な、なに?」

「別にっ」

 少し頬も膨れてないか? どうしてだろ?

 その後も時たま鞠莉さんの「あ~ん」が入ったりしたが、俺は無事に朝食を済ませた。朝食中果南ねえちゃんがちょっと不機嫌だったのは何でだろ?

 

 

 案の定曜が俺の自転車を借りていったせいで、俺は学校までの道を歩かなくてはならなくなった。

「イイじゃない! こうやってカイと一緒に並んで歩けるんだもの!!」

 鞠莉さんは嬉しそうに俺の右腕に身体を絡ませてひっついてくる。

「ちょ、鞠莉さん! 流石にコレは近いですって!!」

「どうして? カイとワタシの仲じゃない」

「親しき仲にも礼儀ありってやつですよ!」

 果南ねえちゃんにも言ったセリフを鞠莉さんにも言うが、彼女は意味深な笑顔を向けてくる。

「ンー、ワタシ、ニホンゴヨクワカリマセーン!!」

「こんな時に外人ぶらないで下さいよ!」

 んふふ、と鞠莉さんは笑うと俺の腕への抱擁を少し解いた。

「でも、カイがそこまで言うなら隣にいるだけで勘弁してあげようかなー」

「そ、それくらいなら――」

 とんっ、と反対側の肩に軽い衝撃がかかる。視線をそっちに向けると、果南ねえちゃんが俺の左腕に身を寄せていた。

「ちょっ、先輩っ、何を?」

「べっつにー」

 やっぱり少し頬が膨れているし、俺と視線を合わせようとしない。

「oh! 果南もそうするならワタシも!」

 と、再び俺に抱きつく鞠莉さん。う、両腕に柔らかい感触が。

「ふ、二人共、歩きにくいから離れて下さいよぉー!」

「やだっ」

「オコトワリシマース!!」

 二人と別れるまで、俺は二人の柔らかさに包まれながら学校までの道を歩いた。

 

 

●●

「ちょっと鞠莉、あれはやり過ぎじゃないの?」

 私はかいと別れた後、鞠莉を問い詰めた。鞠莉はなんでそんなこと聞くの、と言いそうな表情だ。

「アレくらい、ワタシの国じゃしょっちゅうよ?」

「いやいや、ここ日本だから」

 私の言葉にもふふーん、と意味ありげに笑う鞠莉。

「だって、ワタシは自分の気持ちに正直に動いてるだけよ。正直に気持ちを伝えることが悪いことなの?」

「それは……」

 言葉に詰まってしまう。鞠莉は三年とそこそこ長い付き合いだけど、それでも考えの違いに悩まされることは多い。私にとって奇想天外な考えは時に助けられることもあったし、基本はそのままやらせておくって方針にしてた。

 けど、何故かあの時は違った。鞠莉に抱きつかれて満更でもない表情をしてたかいにムカついた。困らせてやろうと私も抱きついた。案の定慌てたかいの表情が何か心地よかった。

「果南はもうちょっと自分の気持ちに正直になりなよ」

「私の、気持ち?」

 気持ち、という言葉が反芻する。私は嫉妬してる? 誰に? かいに? 

 朝起こした時のことを思い出してしまう。あの時身体に触れてしまったかいの、あそこ。男の人って朝にはあんなふうになるって聞いたけど。あぁ、思い出しただけで――

「果南? 顔赤いよ?」

「――っ!! 何でもないよ!」

 思考を振り払おうと私は走った。待ってよ果南、という鞠莉の言葉も聞かず、ただただ走り抜けた。

 今までは可愛い弟だと思ってた。でも改めてかいが男の子なんだって思えた。

 

 私はかいのこと、どう思ってんだろ?

 

 そしてかいは、私のことどう思ってくれてるんだろう?

 

 いくら走っても、授業を受けても、この疑問は消えることはなかった。




 改めてギャルゲー風な主人公って初めて書くわけなんだけど、だんだん主人公のキャラが解らなくなってきた。

 幼馴染がいて、年下の子相手だと年上キャラになって優しい兄さんキャラで、年上相手だとなされるがまま。なんだこいつ。こいつに死角はないのか?

 こんな主人公で大丈夫なんでしょうか? 今更変えられるわけじゃないんだけどね。

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