ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁   作:伊崎ハヤテ

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 再びの善子回。序盤はオマージュ入ってます。苦手な方はご注意を。


15話 男子高校生と中二病少女

 俺は一人、海岸に腰を下ろして海を見つめていた。少し早めに学校が終わったので特にすることもなく、暇つぶしにここにいるのだ。潮風が心地よく吹き付けて、勉学の疲れを癒してくれる。

 そんな中、砂を蹴る音が響き、俺の近くで音が止んだ。ちらと視線を向けると、ダークブルーな長髪の右側をお団子にした少女が一人立っていた。津島善子である。彼女は何も言わずに俺の左後方に座った。

「?!」

 思わず二度見した。津島善子だと? 彼女との邂逅は俺にとって苦い思い出がある。何で彼女、このだだっ広い海岸で俺の近くに腰を下ろしてるんだ?

 まさかこいつ、また俺の『移ろう天秤(ジャッジメント)』みたいなものを期待してるんじゃないのか? 悟られないように視線を後ろへと向ける。彼女は少しそわそわしながらちらちらと俺の方を見てくる。どうやらそのようだ。

 こいつ、俺があの後どれだけひどい目にあったか知らんな? 曜と千歌にめちゃくちゃからかわれたんだぞ。桜内さんにも内心どう思われたのかと考えるだけで悪寒がする。

 が、こうして求められるのも、悪い気分じゃない。仕方ないから付き合ってやるとするか。陽が傾きかけた海岸、何となく幻想的な雰囲気に合った、イカした言葉か……

「今日は、波が騒がしいな……」

 何を言ってるんだ俺は。死にたい。なんかこう、恥ずかしいじゃなくて、死にたい。

 さーて言ってやったぞ。問題は喜んでくれてるかどうかだ。俺はちらと再び後ろを確認する。善子はぱぁっと表情を輝かせていた。喜んで頂けて何よりです。

 すぐに彼女は表情を戻し、悟ったような顔になって立ち上がった。

「でもこの波、少し泣いてるわね」

 こいつおもしれーわ。

 そう呟くと善子は少し俺との距離を縮めてくる。ごめんなさい、もう勘弁して下さい。この状況、俺一人ではもう処理出来そうにないです。ですから援軍を呼ばせて頂きました。慌てて入力したもんだから、ちゃんと伝わってるかどうかよくわからんけど。

 頼むぜ幼馴染達。この空間をぶち壊してくれ!

 じゃり、と砂を踏む音。もう来たのか。早いな。視線を音ノ方へ向けると、渡辺曜が立っていた。

「急ぐよ櫂。どうやら波が町によくないものを運んだみたいだよ」

 お前は何を言ってるんだ。こんな時に限ってこの空気に同調するようなことするんだよ。

 ふと曜の表情を見る。俺の視線に気づいたのか、悪戯っ子の様な笑顔を俺に向ける。こいつ、楽しんでやがる。俺が圧倒的不利なこの状況を。なんて幼馴染だ。

「っ――!!」

 善子は善子で、変な笑顔になって喜んでるし。もうなんだよこいつら。俺を貶める為に遣わされた堕天使か?

 ったく、この幻想的な空気はもう充分堪能したろ? 終わらせてもらうぞ、現実的な言葉を持ってな。

「急ごう、波を止めるために」

 だから何を言ってるんだ俺は! こいつとの出会いで封印してたスイッチのON-OFFが効かなくなってるんじゃないの? もうここまで来たらとことん付き合ってやるよ!

「待って!」

 そんな俺達三人の間に割って入ったのは、オレンジ色の髪をしたオレンジ娘、高海千歌。

「櫂ちゃんのメールどういうこと?! 『海岸にいるからたすてけ』って書いてあるんだけど!?」

 うん、ありがとう。この空気を終わらせてくれて。でも、何故か残念な気持ちになってるのは、どうしてだろう?

「あ、善子ちゃんだ!」

 千歌が善子を見つけ、こちらに駆け寄ってくる。

「善子って呼ばないでよ千歌さん!」

 ぶぅ、と頬を膨らませる善子。仮にも年上である千歌をさん付けするあたり、案外礼儀正しい子なのかな。

「そう言えば櫂ちゃんとはメンバーになってからは初めて合うのかな。メンバーの津島善子ちゃんです!」

 ヨハネよ! と怒る善子。が、すぐに調子を取り戻し俺に語りかける。

「久しぶりね。『移ろう天秤(ジャッジメント)』、ルシフェル」

 その言葉を聞いた瞬間訪れる悪寒。そして入りたくもないのにスイッチが入ってしまう。フッといつもはしない笑いを浮かべる。

「福音を聞く前に出会うとはな。どうやら俺たちは運命の赤い糸で繋がっているようだな」

「運命の、赤い糸っ……!」

 その言葉に一瞬赤面するが、すぐに調子を取り戻す善子。

「ど、どうやらそのようね。私たちには特別な縁(えにし)、メビウスの輪があるようね」

「フッ、因果律をも超える縁、か……」

 最早何を言ってるのか自分でもわからないが、何となく善子とのコミュニケーションが成立しているようだ。彼女、とても嬉しそうだもん。後ろの幼馴染二人の視線が怖い。

「さぁて、私はそろそろ『本拠』に戻らせてもらうわ。リトルデーモンとの集いがあるからね」

「また会おう、『可愛いウサギちゃん(ラビット)』よ」

「っ! うん!」

 そう言って彼女は俺達に背を向け去っていった。あれ、最後はなんか、返事が中二っぽくなかったような。

「ねえ聞いた千歌ちゃん、『どうやら俺たちは運命の赤い糸で繋がっているようだな』だって~」

 左から曜が俺の頬を抓ってくる。痛いよ。

「聞いたよ曜ちゃん。更には『因果律をも超える縁、か……』って言ってたね~」

 更に反対側から千歌が頬を抓ってくる。

「よくもこんな恥ずかしいセリフ思いつくね?」

「どうなの、櫂ちゃ、いや『ルシフェル』ちゃん?」

 その名で呼ばないで下さい。曜はともかく、千歌までどうしたんだ? こうやって頬を抓ってくる子じゃなかったのに。

「もしかして、二人共妬いて――」

『うるさいっ』

 二人の声が木霊した後、千切れるんじゃないかって位に抓られた。

 

 

 

●●

 ヨハネは、足取る軽く海岸を走っている。天使の翼が生えているみたいに、身体が軽い。

――また、『可愛いウサギちゃん(ラビット)』って……! 『運命の赤い糸』って!――

 何だろう、この気持ち。嬉しくって走りたい。この気持ちを声にしたい。だから、叫んじゃった。

「見つけた、ヨハネのリトルデーモン!!」




 さて、アニメの善子はどうやら脱中二病したい子にされてしまったらしいですね。あの脚本家、蛇足しやがって……。でも我々には情報の取捨選択の自由があると思います。あれを受け入れるもよし、あの設定につばを吐くもよし。
 僕はスクフェス、ドラマCDに従いたいと思います。

 ご意見ご感想、よろしくお願い致します。

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