ラブライブ!サンシャイン!! Another 輝きの縁 作:伊崎ハヤテ
1話 目覚めは馴染みと共に
白い陽光に照らされて、意識が薄っすらと覚醒する。外の穏やかな風が頬に当たり起床を促す。だけどまだ起きない。
だって、まだいつものあの声を聞いていないから。
「ほぉら、櫂! 起きなさーい!」
勢い良く掛け布団が捲られ、肌全体を少し冷たい空気が襲う。
「寒っ」
4月下旬とは言え、まだ少し寒い。身を縮こませるとそいつは俺を揺らした。
「こら! さっさと起きる!」
「わかった、分かったから……」
上半身を起こし、寝ぼけ眼で朝の襲撃者の顔を見つめる。見えるのは幼なじみのしてやったりな顔。俺はそいつの名前を呼んだ。
「曜、おはよう」
ダジャレにしてはつまらない俺の挨拶に、彼女は笑顔で応えてくれた。
「おはよ、櫂!」
「曜、何度も言うがよ、わざわざ俺を起こしに行かなくてもいいんだぞ?」
朝の冷たい空気が少し和らぐ海沿いの道路を俺は自転車を引きながら幼なじみと歩く。
今俺達が向かっているのはもう一人の幼なじみ、高海千歌の家。こいつは実家が旅館で二人が通う学校からは一番遠い位置関係にある。つまり曜は別の学校に通っている俺を起こして千歌の家に向かっているのだ。
「別にいいじゃん。幼馴染としてのよしみだよ~」
曜の笑顔に俺はそれ以上言えなくなってしまう。実際別々の学校に進学してしまったから一緒に登校出来るだけでも儲けモンか。
「それに――」
そういうと曜は俺の自転車の荷台に腰を下ろした。そしてサドル部分をぱんぱんと叩く。乗れってことだな。
「はいはい」
俺は観念して自転車に跨がり、漕ぎだした。
「いいぞ~! もっとスピード上げてー!」
「俺はタクシーじゃねえっての」
安全の為か、俺の左肩に曜の左手が添えられていた。そこから感じる曜の手の小ささ。そこから広がる温かさ。その心地よさを燃料に、俺は自転車のスピードを上げるのだった。
「あら、曜ちゃんに櫂くん、おはよう」
千歌の実家である旅館にたどり着くと、玄関で彼女の姉が箒を片手に掃除していた。
「おはようございまーす!」
「おはようっす」
俺のそっけない返事に曜が肘で俺を突く。
「ちょっと櫂、ちゃんと返事しなよー」
「い、いや、返事ならコレくらいで十分っしょ」
姉さんは気にしないで、と曜を窘める。
「昔は『ねーちゃんおはよー!』って言ってくれたけど、ちょっと寂しい気もするわね」
それだよ。昔は千歌の姉達二人も俺の姉さんみたいなもんだったし、ねーちゃんと言ってたけど今じゃもう恥ずかしくて言えない。
「そうだったね。この思春期真っ盛り少年め~」
うりうり、と曜は俺の肩をぐりぐりしてくる。うっせえ、思春期真っ盛り少年のことは放っておいてくれ。このままじゃ俺の話ばかりで中々本題に進まない。俺は話を本題へと戻した。
「千歌はもう起きてる?」
俺の問いにあねさんは苦笑いで応える。起きてないってことか。
「やれやれ、さっさと起こして学校行くぞ」
「アイアイサー!」
曜の返事と共に俺たちは旅館の中へ足を踏み出した。
「ほら千歌ちゃん、起きてー!」
ベッドに丸くなる幼なじみを叩き起こす曜。
「ん~、後五分~」
起こされる側も安眠を貪りたいのか、必死の抵抗をしている。ふと視線を部屋に向けると、女の子した雰囲気に自分は場違いなんじゃないかと考えてしまう。
「なあ、俺、部屋の外で待ってるか?」
「何言ってんの! 櫂も千歌ちゃん起こすの手伝ってよ!」
仕方なく俺も千歌の身体を揺する。やましい気持ちなど起こさぬように慎重に。
「おーい千歌ー、起きろー」
「んぅ?」
俺の声に反応するかの様に千歌の眼が開かれる。眠たげな表情で俺たちを見つめると
「あ、曜ちゃん、櫂ちゃん……、おはよぉ……」
ほにゃっとした笑顔を見せられると、自分が女の子の部屋と意識してたことが馬鹿らしくなって。俺も笑顔で応えた。
「おはよう、千歌」
ここから、俺たち三人の日常が始まる。
前シリーズは一回一回文字量が多すぎた為、書く時間が長くなってしまい、投稿時間が開きすぎてしまいました。その為、今回からは文字量を大幅に落として、早めの更新を心がけたいと思っています。どちらの方が皆様にとって読みやすいか、ご意見頂けると幸いです。
冒頭は好きなゲームの冒頭を参考にしています。わかった貴方は私とお友達。
今シリーズではキャラクターにヴァンガードをやって貰おうかと考えています。カードの情報量が遊戯王とダンチな気がしますが、頑張ります。主人公(なるかみ+α)曜(アクアフォース)と善子(ダークイレギュラーズ)は確定しているのですが、他が決まりません。ダイヤかマリーあたりにオラクルシンクタンクをやらせたいんですが…。こちらも要望あれば下さい。
ご意見ご感想よろしくお願いします。