今回はオリジナル回となっています
月華の過去とオリキャラの絡みが中心となっています
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脱字修正しました
一部文章を変更しました
誤字報告を適用しました
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次回エピソードを変更しました
これは夢だ…一番見たくない夢…
私が大親友と決別した時の事だ……。
それは幼馴染が快楽殺人犯に殺されてから数ヶ月後のこと……親友が学校に来なくなったのだ。
私とあいつは彼女を心配した…だって幼馴染が殺されたあの日に、本来であれば恋人として付き合う事が決まっていたからだ。
私も彼もどうしたらいいか分からなかったが、私が先に話してみる事にしたのだ。「すまんな…月華……。俺も後で来るからそれまで頼む」と気をきかせて三人で話す為にお菓子や飲み物を買いに行った彼は後に合流する予定だったけど、私と話している内に私のある一言で親友を怒らせてしまったのだ……。
それが最悪の結果となった……。
「月華に私の気持ちなんてわからない!! 本当に好きだったのに!! あんな別れ方して普通でいられるあなたとあいつが信じられない!!」
親友は本当に好きだったのだ…私にも惚気話を聞かせてくれたぐらいに……。私も「そんなことは無い」と言ってなだめたが、彼女のこの一言が原因で、自分でも許せない事を言ってしまったのだ……。
「あなたと友達になるんじゃなかった!! そうすれば彼に出会う事もなかった!! こんなに苦しむこともなかった!!」
その一言に怒りが込み上げて、親友の頬に思いっきり平手打ちをしていた自分がいた……。
その後口論となり、自分の隠していた気持ちもすべて明かした……。彼女は私の言葉に動揺していた、「なんで言ってくれなかったの?」と……。それは一番大好きな親友に幸せになって欲しかったからだ……。
だから、私はあきらめたのだ…死んだ幼馴染の事を私は好きだったからだ……。
私ではこの幼馴染を幸せには出来ない……。
だけど彼女なら幸せに出来ると信じたから…私は初恋の人をあきらめたのだ……。
夢だと分かっていても私はあの言葉を言ってしまう……。
この世界での響ちゃんの蒼白となった表情と幼馴染が重なって見えた。
「あなたは私の友達じゃない……。もうここには二度と来ない……」
私が部屋から走り去った時に私を呼び止めようとするあの悲痛な声は今でも耳に残っている……。
それが…大好きだった親友との最後の会話になった……。
私は悪夢から現実に戻ったが…ここはどこだろう……。
ベットに寝かされている事から、どうやらあの公園で気を失ってしまったらしい……。
体を起こそうと手を使おうとした時に激痛が走った……。
忘れていた…私の両手はデュランダルの停止の影響でボロボロだったはず……。手を見てみると、緒川さんに応急手当してもらった布ではなく、ちゃんと包帯で手当てされていた。
暫く手当てされた両手を見ていると「あっ! やっと起きた!!」と明るい少女の声が聞こえたので振り向いてみると、そこには同年代ぐらいのショートカットの少女がいた。
「どうしたの、あんな大怪我して? あのままじゃいけないと思ってシュウに頼んでここまで運んでもらったの」
この後アテナと名乗った少女にお礼を言った後、どうして此処にいるのかの経緯を教えてもらった。
どうやら最近引っ越して来たアテナさんが、近くを散歩していた時に公園のベンチで気を失っている私を見つけ、同居人である二人に協力して住んでいるマンションまで運び、酷い怪我をした両手にも手当てをしてくれたみたいだ。けど…なんで見ず知らずの私にここまでしてくれるのかが分からなかった。が、この後その疑問が解けたのだ。
どうやら誰か帰ってきたみたいだけど、その人がここまで運んで手当してくれた人だろう……。
その人の顔を見た時、こんな再会をするとは思わなかった。
「おや? 起きていたのか……。久しぶりだね…月華さん」
「子安先生!! なんで……」
私は、もう会えないと思っていた人と再会した……。
先生は両手にビニール袋を持っているので買い物でも行っていたようだ。こころなしか、私が目を覚ましている事を少し喜んでくれているように見える。
「月華さんも元気そう…ではないとは思うが本当に久しぶりだね」
私の両手の状態を見てから途中で言葉を替えたみたいだが…この優しく丁寧に話しかける所は中学時代とはまるで変わっていない……。
そう言えば、名前初めて聞いた…子安 愁というらしいが急に学校を辞めいなくなったが、こうしてまた会えたのは運が良かったのか悪かったのか……。
そう言えば…前に食事を一緒にした彼女はどうしたのだろう?
その事を聞いてみたが、どうやら今は別行動をしているらしい……。
先生は私が普通に話をしていることに少し安心したのか
「応急手当はしてあったが状態が酷かったので私の方で治療しておいた。こう見えても医師の経験もあるので出来る範囲でしておいた。酷くなるようだったら、また私が診てあげよう」
と言ってくれたが…先生は私にこのような怪我をした理由を聞かなかった。
「なぜこんなを怪我をしたのか…聞かないのですか?」
私は疑問に思ったので先生に聞いたが、苦笑しながらこう答えてくれた。
「気にはなるが…話してはくれないのだろう? それに、騒ぎになると君も困るだろうと思ったから治療をしたのだが…迷惑だったかな?」
この先生は苦手だ…全てを見通したような言い方はいつも的確に私の本心を見抜いている……。
私がムッとした顔をしていたのか、先生は「すまない…私の悪い癖が出てしまったようだね」と言ってはきたが…本当にすまないと思っているのかは疑問だ。アテナさんが「仲がいいんだね……。シュウがここまで話している人、初めて見たよ」と言うけど、中学生の時は女子生徒に囲まれていた様な気がしたけど……。
先生が私の顔をずっと見つめてくるから、まだ何かあるのかと思ったけど、意外な事を言われたのだ。
「顔を見つめて不愉快にしたなら申し訳ない……。しかし、初めて会った時と比べて君が変わったようにも見えた……。良い友人か頼れる大人のどちらかに出会えたようだね。今の君はあの時とは印象が違うね……」
この人はどこまで見抜いているのだろうか……。
確かに、引っ越した後の私は他人との交流をしようと思わなかったのでずっと一人でいた。
学校の行事は全く出ず、さぼっていた事もあってこの先生と話したのがきっかけで交流が始まったが…今思えばなぜ私にここまでしてくれるのかが分からなかった……。
「そんなことはありません…私は今も一人ですよ」
「そうか…私にはそう見えなかったのだが? 今もこうして普通に話しているが、あの時の君であれば黙っているか、それとも立ち去るかしているはずだった。こうして話している事を嬉しく思っていてね」
それは、こうして怪我をしているところを偶然ながら助けてくれた恩人にそんな失礼な事は出来ないからだ。
その時に「シュウ、ちょっと月華さんとお話させて」とアテナさんが言ってきた。彼女が話してくれたのは、ここに運ばれた時に私が着ていた服とシンフォギアのコンバーターのペンダントとシーリングモードの使用で損傷して、今は自己修復モードで待機状態になっているジークとヒルデの事だった。
「忘れてたけど…服はちょっと血で汚れていたから捨てちゃったよ……。今着ている服は私のだけどあげるね」
と笑顔で言ってくれたけど、後で洗って返そう……。その時にコンバーターのペンダントとジークとヒルデも返してもらった。外したのは怪我の治療の為だった。見た目は赤と青の宝石が付いたブレスレットと、変わった形のペンダントなので「それ何所で売ってるの?」とアテナさんに聞かれたが、死んだ両親の形見なので分からないと言ったら「そうなんだ…だったら大切にしないとね…」と優しい笑顔で答えられた……。彼女にも昔に何かあったのだろうか?
取り敢えず、今回の怪我の手当てとここで休ませてくれた事をお礼を言って寮に帰ろうとした時に先生が最後に言ったその言葉は私は忘れられなかった。
「手紙にも書いたが、君は信頼できる人を見つけられればどんな困難も立ち向かえるだろうね……。それと、これは私の尊敬する科学者の言った言葉なのだが、君にアドバイスとして伝えよう……。『孤独な者は己の限界に行き届いてしまうが手を取り合い惹かれあった者はその限界が限界では無くなる』。君はもしかしたら、その誰かにもう手を繋がれているのかもしれないね…君が意識してなかったとしてもね。今、月華さんにその人の顔が浮かんだなら、それが証拠となるだろう」
…本当にこの人はどこまで私の本心を見抜いているのかと思った。
「余計なお世話です」と照れ隠しについ悪態をついてしまうが、先生も「君らしい返事で安心したよ」と皮肉を言った。
アテナさんは、もう少し帰るのを待ってほしいと言ってきた。私もこれ以上お世話になるわけにはいかなかったけど、アテナさんの押しに負け数分待つと「これ今日の夕飯にどうぞ! その手だと不便だと思ったから」とタッパーにサンドイッチを詰めてくれたみたいだった。断るつもりだったけど、失礼な事になってしまうかと思ったので受け取った。それと、痛み止めと化膿止めの飲み薬を万が一の為に渡してくれたけど…
その時に、先生に疑問に思った事を聞いた。
「なんでそんなに私の事を…助けてくれるのですか? 私に係わっても何も…良い事なんて…」
「君は一人でいる事で他者を守ろうとしている……。あえて聞かないと言ったが、その両手の怪我もそのような理由だと思っている。そんな君を知っているからこそ私は無条件で味方になりたかった…月華さんがどう思っていてもね」
この人は…本当に何者なのだろう……。私は再び「ありがとうございます」とお礼を言ったとき、先生が少し笑顔を見せていたけど…私はおかしな事をしたのだろうか?
私は二人に見送られて寮に戻っていった。
寮の自分の部屋に着いた時に、やはり思っていた障害が発覚した……。
手が痛くて力が入らずドアを開けられないのだ……。
痛みをこらえてどうにか開けたけど…本当にこの先の生活が不安になった……。
帰る途中で両手の状態を確認したけど…やはり強く手を握ろうとすると痛い。
その為、帰る時に貰った薬やサンドイッチの入ったタッパーはエコバックを貸してもらい肘に掛ける事でどうにかなったけど、物を持ったりするのは暫くは無理みたいだ……。
ジークとヒルデは、自己修復モードが完了するまでは時間がかかりそうなので、暫くは普通に暮らさないと……。
試しに魔法をジークとヒルデなしに発動させてみるが…どうやら負荷を掛けすぎたみたいなので使用は出来ないようだ。
ジークとヒルデがいてくれたから一人ではないと思っていたが、今は本当の1人だ。
一人ぼっちになったからなのか…あの悪夢を思い出してしまう。前世での最大の後悔と自分が死んでしまった原因を……。
私は自室の机の引き出しからパスケースを取り出した。
このパスケースには4枚の写真が入っている。
一つは神様がおまけしてくれた前世での旅行の私を含めた四人の集合写真。
二つ目は私が幼い頃にこの世界での両親と一緒に写った写真。
三つ目は中学時代にあの事件が起こる前に撮った響ちゃんと未来ちゃんと私の写真。
これを見て思った事は、先生の別れる時に言ったあの言葉だ。
「『孤独な者は己の限界に行き届いてしまうが手を取り合い惹かれあった者はその限界が限界では無くなる』。君はもしかしたら、その誰かにもう手を繋がれているのかもしれないね…君が意識してなかったとしてもね。今、月華さんにその人の顔が浮かんだなら、それが証拠となるだろう」
その時に浮かんだのは、幼馴染と大親友のあの娘と最後まで心配してくれた男友達の顔…それに響ちゃんや未来ちゃんだ。けど、私はその手を、前世での三人とは事故で、響ちゃんと未来ちゃんは自らその縁を断ってしまった。
それでも繋がっている…今でも手を繋ごうと私に優しくしてくれる二人には本当に感謝したい……。
このパスケースも、実は響ちゃんと未来ちゃんが小学生の時の私の誕生日に二人がお金を出し合って買ってくれたものだ。
緒川さんに
問題は未来ちゃんが一人になるかもしれないことだ。
響ちゃんがノイズと戦っている間は不安もあるだろうし、私も出来るだけ傍にいて安心させたい。
この前みたいな愚痴を延々と聞かされるのはもう嫌だが……。
時計を見てみると、夕飯をとるのにいい時間になっていた。二食抜いていたせいか、アテナさんのサンドイッチを数分で完食していた事には自分でも驚いた。
ジークとヒルデも、数日後には自己修復が終わって普通に会話できるだろう……。
「二人には謝らなくちゃいけないわね……。いつもありがとう…ジーク、ヒルデ……。これからもよろしくね」
沈黙したままだったが、〔気にするなマスター〕とジークが、〔こちらこそよろしくお願いします。マスター〕とヒルデが答えた様な気がしたが……この二人も私の家族だ……都合がいいと思うが、再起動した時に聞いてみよう。
私は服をどうにか着替え、両手に負担を掛けたくなかったので仕方がないのだが、体操着に着替えて寝る事にした。
少し神様に文句が言いたい……。
私は秘密が多過ぎる……。
転生者である事…そしてこの世界での私の出生の秘密の事……。
それは四つめの写真が原因だ……。その写真に写っている若い夫婦の写真……。
これは転校後に死んだ両親から渡されたものだったが…その衝撃的な話は今でも私は覚えている……。
だって本当の両親は…この写真に写る若い夫婦で…その本当の両親は…殺されたのだから……。
次回 エピソード9「特典の辻褄を合わせって必要だったの?」