捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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  それでは今回もよろしくお願いします。


子グマ!子グマ!

「どうだ?そっちは」

「やっぱりダメでした~。さすがにもう、バイトだったり、デートだったりで私の交友範囲では無理でした~」

 

 朝の通学路。一色がわざわざ俺を見つけて残念な報告をしてくる。溜息を吐き、空を見上げると、今日は冬晴れの気持ちいい空だ。こんな日は家で惰眠を……いや、花陽を見習おう。

 

「せんぱ~い。聞いてます~?」

 

 頬を膨らませ、あざとさ全開の一色に軽く頷く。

 

「むぅ~。μ'sの事ばっか考えてんじゃないですか?」

「それよか、とりあえず俺もあたってみる。今のところ、募集の効果も期待できそうもないからな」

「先輩友達いるんですか?」

「……いるよ」

 

 *******

 

「八幡!」

 

 教室に入り、席に着くやいなや、戸塚が駆けよってくる。

 

「おう」

「僕もやるよ」

 

 何の事かは言わなくともわかる。

 

「いいのか?きつくなる可能性高いぞ」

「だからだよ」

 

 戸塚の微笑みにつられるように、こちらも笑みが零れる。

 

「……ありがとな」

「ほふん。我もやってやろう」

「お~、面白そうじゃん」

 

 材木座が尊大に、戸部が軽薄に了承してくれる。

 

「……すまん。いや、ありがとな」

「じゃあ俺、隼人くん達に声かけてみるわー」

「我は…………ふぅ…………」

 

 材木座……無理すんな。悲しくなるから。

 

 *******

 

「あ、比企谷君」

 

 放課後。告知のポスターを掲示板に貼っていると、城廻先輩がとことこ歩いてきた。今日もほんわかめぐりんパワーが気分をゆったりさせ、疲れを少し吹き飛ばしてくれる。

 

「聞いたよ~。いきなりで大変だね」

「まあ、やれるだけやってみますよ」

「私も手伝うよ」

「え?」

 

 城廻先輩は柔らかく微笑んだまま俺に向き合っている。

 

「いいんですか?」

「一般枠はこれから募集するんだよね?私も参加するよ。前にも言ったけど、もう推薦で大学は決まってるからね」

「……せっかくのクリスマスイブもクリスマスも重労働で潰れますよ」

「いいよ。私も最後まで学校生活を楽しみたいしね。それに……」

 

 少し距離を詰めた彼女は、こちらの瞳をじっと覗き込んでくる。

 

「君は文化祭も体育祭も頑張ってくれたでしょ?」

「いや、別に……」

「少しくらいは先輩として、頼りになるところ見せないとね」

「……ありがとうございます」

 

 可愛らしく、ぐっと拳を握る城廻先輩に、俺は感謝の言葉を告げた。

 

 *******

 

「ねえ、あんた……」

「どした?」

 

 ようやく全てのポスターを貼り終え、帰ろうとすると、今度は川崎が話しかけてきた。珍しくこんな時間まで学校にいたのだろうか。

 

「クリスマスのイベントのスタッフ……まだ、募集してんの?」

「ん?ああ」

「…………る」

 

 川崎は俯き、何やらブツブツ言っている。

 

「何だって?」

「私もやるって言ったの!」

 

 顔を赤くした川崎は、叩きつけるように言うと、さっさと靴を履き、あっという間に走り去った。

 

「……ありがとな」

 

 見えなくなった背中に小さく声をかけ、下駄箱から靴を出す。

 

「…………」

 

 誰かが視線を向けている事にも気づかずに。 

 





  読んでくれた方々、ありがとうございます!

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