捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女 作:ローリング・ビートル
それでは今回もよろしくお願いします。
数回のコール音の後、待ちわびた声が聞こえてきた。
「もしもし、こんばんは。八幡さん」
「おう、今大丈夫か?」
「はい。私もお話したかったので」
「……やっぱり知ってるのか?」
「もちろんです!驚きました!まさか幕張メッセでライブができるなんて!」
「ああ、すげえな」
「はい、楽しみです!」
「そっか。実はもう一つサプライズがあるんだが……」
今日学校で言われた事を伝える。
「ええっ!?千葉で開催されるだけではなく、八幡さんがスタッフに!?」
「ああ」
「た、大変です!皆に伝えないと!」
「いや、そこまでしなくていいから……」
「あはは……す、すいません。つい嬉しくて……」
「そ、そうか……嬉しいのか」
「当たり前じゃないですか!だってμ'sの皆だけじゃなく八幡さんとも最高のステージを作るチャンスなんですよ!」
「お、おお……」
そう言われると何だかやる気が沸いてきた。
小さくガッツポーズしながら、もう一つの用件を告げる。
「話変わるけどな、あの……遊園地なんだけど」
「あ、はい」
「大晦日とか……どうだ?」
「……はい!!」
「だ、大丈夫そうか?」
「大丈夫ですよ。ありがとうございます。気を遣ってくれて」
「いや、まあ……応援してる」
「私も応援してますよ」
「え?俺?何の応援?」
「ふふっ、八幡さんの全部です」
「そっか……よくわからんが……助かる。ありがとう」
「ふふっ、どういたしまして」
「……なあ、花陽」
「?」
「……すげえ、会いたい」
「え?い、いきなり、どうしたんですか?」
「今すぐ会いたい」
「わ、私もですよ?私も八幡さんに会いたいです」
「いーや、俺の方が会いたいと思ってる」
「私ですよ。私に決まってるじゃないですか」
「…………」
「…………」
「……いや、すまん。いきなりだったな」
「ふふっ、でも早く会いたいですね」
「ああ」
「また……ぎゅってしてもらいたいな」
「ああ。花陽の太股柔らかいし」
「も、もう!いやらしいです!」
「え?だ、だめなのか……」
「だめじゃないですけど、何だかいやらしいです!何でそんなにショック受けてるんですか!」
「花陽が言い出したんだろ?」
「私が言ったのは、ハ、ハ、ハグの方です」
「……お、おう」
「…………」
「……まあ、その、じゃあ、今度会ったら思いきり……」
「思いきり?」
「あ、流れ星」
「ごまかした……」
「しゃあねえだろ。思春期男子はシャイなんだよ」
「……そういう事にしておきます」
「そういう事にしといてくれ。そういや、新曲聞いた……いい曲だな」
「はい、私もそう思います!ライブでやるのが楽しみなんです……こう思えるのも、八幡さんの応援のお陰ですね」
「いや、俺は何もしてねーよ」
「そんな事ないですよ」
「まあ、あれだ。本番まで体調管理しっかりな」
「あ、はい。ありがとうございます」
「じゃあ、そろそろ寝るわ」
「八幡さん」
「?」
「おやすみなさい」
「ああ、お休み」
窓の外の夜空に目を向け、離れた場所にいる花陽の顔を思い浮かべる。
通話を終えた後も、しばらくやわらかな彼女の声が耳元を甘くくすぐっていた。
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