捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女 作:ローリング・ビートル
それでは今回もよろしくお願いします。
「どう……でしょうか?」
海未ちゃんが照れながら開いたページに、皆が視線が集まる。
そこには、昨日完成したばかりの歌詞が書かれていた。
「素敵~♪」
ことりちゃんが甘い声で、真っ先に感想を口にする。その表情は、この曲の衣装を思い浮かべているのか、うっとりしていた。
「ええ歌詞やね~。まさか、海未ちゃん……花陽ちゃんに続いて恋人が!」
「なっ……何を言っているのですか!そんな訳ないでしょう!」
「まあまあ、それより海未。お疲れ様」
からかう希ちゃんに、真っ赤になって怒り出す海未ちゃんを絵里ちゃんが宥める。
「よーし、じゃあ皆練習始めよう!」
穂乃果ちゃんの掛け声に、みんなが気合いを入れだした。日に日にモチベーションが高まっているのを感じ、今日の練習もいいものになりそうです!
私は深呼吸して、気持ちを整えた。
八幡さん。私、頑張ります!
*******
「千葉でラブライブの関東大会?」
「そうだ。幕張メッセでな」
放課後の生徒会室。2学期の終業式での一色のスピーチを皆で考えていると、平塚先生が思いがけないニュースを持ってきた。
「いや、平塚先生。いつまでも若い気持ちでいたいのはわかりますけど、さすがにアラサーがスクールアイドルとか無理がありますよ……」
「何か言ったか?」
「何でもありません……」
拳が右頬の辺りで空を切る。これ以上何か言えば、猛虎破砕拳が炸裂し、俺は粉々にされてしまうだろう。
「それで、何でわざわざ報告に来たんですか?」
先の言葉を予想……いや、確信しながら聞いてみる。わかりきった事を聞くなど、愚かでしかないのだが。
「うむ、そこでだ。クリスマスに幕張メッセで開催されるラブライブの関東大会に我が校からボランティアスタッフを出す事になってな」
いち早く一色が反応する。
「それって生徒会は……」
「もちろん強制参加だ」
にっこりと有無を言わさぬ迫力で笑う平塚先生の言葉に、一色はガクッと項垂れた。
ちなみに俺は……はい、さっきから何とも言えない感情です。花陽のサポートができる喜びと、クリスマスデートができない哀しみがごちゃ混ぜになっております。……遊園地デートもまだ行けていない。とはいえ、ラブライブに集中させてあげたい気持ちもある。
まあ、ここは切り替えて、仕事に励もう。長い間のぼっち生活で培った、気持ちの切り替えの速さは錆びついていない。これからも油を差して、錆びつかないようにする為に、たまにはぼっちになるべきか。
「何でアイドルのライブで高校生のボランティアを?」
本牧が尋ねる。不満とかではなく、純粋に疑問があるようだ。
「スクールアイドルとはいっても、実際のところ、アイドル部のようなものだ。営利目的の活動はしていない。運営側も極力費用は抑えたいようだ。スタッフも最低限しか雇っていないらしい。まあ、ここまで人気になるとは思ってなかったようだ」
「他の学校は?」
「この辺りの学校もそろそろ募集しているよ。まあ、クリスマスという事で集まりは悪いだろうが」
「最近、本当に人気ですよねー。A-RISEとかμ'sとか」
「あ、私も好きです。いい曲多いですよね」
一色だけではなく、書記さんまで知っているとは……どうやらμ'sの知名度は割とガチで高いらしい。その事が誇らしくもあり、心配でもある。
「まあ、とりあえずだ。私もボランティアには参加しよう。幸いクリスマスに予定はないからな」
その哀しすぎる言葉に皆が気まずそうに目を逸らす。
本当に……早く、早く誰かもらってあげて!!!
「君達はポスターやプリント等を制作して、ボランティアを集めてくれたまえ」
ボランティア……ねえ。この言葉の響きはあまり好きではないが、花陽のためになるのなら、別に構わない気もする。
……まあ、やってみますか。
俺は深呼吸して、さっそく仕事に取りかかった。
読んでくれた方々、ありがとうございます!