捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女 作:ローリング・ビートル
それでは今回もよろしくお願いします。
「「「「「「「「ラブソング~!?」」」」」」」」
希ちゃんの発言に皆が驚く。
ラブライブ全国大会を目指す為、μ'sが作るべき曲。
普段は自分からあれこれ言わない希ちゃんが提案したのは、『ラブソング』の制作だった。
確かにμ'sにはこれまでラブソングがなかったなぁ。アイドルなら既に歌っていてもおかしくないジャンルなのに。
「そういえば何でこれまでなかったんだろう?」
穂乃果ちゃんも、同じ事を考えていたようだ。
「それは……」
皆が希ちゃんの視線を辿り、ある人物に一斉に目を向ける。
そう、μ'sの作詞担当・園田海未ちゃんに。
「……?えっ、私ですか!?」
『はぁ…………』
「ちょ、ちょっと、誰ですか!?今の溜息は!!」
「まあ、海未ちゃんはさておき……」
置いておくんだ……。
「今は秘密兵器があるやろ?」
希ちゃんの手がぽんっと肩におかれる。
「え?え?」
何?どうしたんだろう?
「ここにμ'sの恋愛マスター、花陽ちゃんがおるからね」
「ええぇぇぇぇぇーーーー!!!?」
「かよちん、さすがにゃ~」
「そうだよ、花陽ちゃんだよ!」
「ア、アイドルなのに恋愛なんて……冗談じゃないわ!詳しく聞かせなさいよ!」
「結局聞きたいんじゃない」
「ねぇねぇ、聞かせてぇ~♪」
「そ、そうね。二人の馴れ初めとか、比企谷君が私の第一印象を……花陽をどう思っているか、とか」
「エリチ」
「はい」
何だろう……絵里ちゃんが八幡さんの事になると、どこかいつもと違うような……いや、気のせいだよね。
「でも、私……恋愛マスターなんかじゃ……」
「え?でも比企谷君って、ものすごい奥手そうやから、てっきり花陽ちゃんが猛アタックしたんやと思ったけど……」
「も、猛アタックって……」
思い返してみる。
……うん、私からだ。今考えても、自分の行動力に驚いてしまう。
でも、この前のは……。
「あうぅ……」
「どうやら、図星みたいやね」
「そ、そうなの!!は、花陽からキスしたの!?」
「ハ、ハ、ハレンチな!」
「わぁ~、花陽ちゃん。聞かせて~♪」
「ダ、ダ、ダレカタスケテェ~!」
放課後の部室。今日もスクールアイドルは賑やかだ。
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「っくし!」
「先輩、風邪ですか~?」
一色が心配そうに聞いてくるが、首の傾げ方とかがいちいちあざとい。他の役員も一色=あざといという認識なので、冷めた眼差しを向けていた。加えると、一色の視線からは「移すなよ?」という無言のメッセージが込められている。
「……いや、何か違う気がする。それよか会議始めるんだろ」
「あ、そうですね!それじゃあ、ちゃっちゃと終わらせて帰りますか!」
「そこはもう少しオブラートに包めよ」
それから、20分ほどでちゃっちゃと会議を終え、生徒会室を後にした。
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「あ、ヒッキー」
「おう」
由比ヶ浜がとことこ駆けよってくる。
「ヒッキー、今帰り?」
「ああ、まあな。そっちは部活休みなのか?」
「うん。今日は何も依頼が来そうにないから。そっちはなんか急いでるね」
「……今からバイトがあんだよ」
「へえー、ってヒッキーがバイト!?ど、ど、どうしたの!?大丈夫!?」
由比ヶ浜の表情が、驚愕どころか恐怖に染まっていた。何でだよ。大丈夫って……。
「いや、失礼……じゃないな。確かに俺らしくはない」
「……本当に変わったね。ゆきのんからも聞いたよ。今、国語学年1位なんでしょ?」
「……まぐれだよ。まだ一回だけだからな」
「あたしも何か始めよっかなー」
「まず、料理をまともにしろよ。焦がさないようにするとか」
俺の指摘に、「何をー!」と怒った由比ヶ浜の声を背に、らしくないバイトをしに行くため、急いで校舎を出た。
冬特有の暗くどんよりとした空は、そろそろ初雪が零れ落ちてきそうに見えた。
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