捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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海とピンク

 なんて1日だ……。

 鬱な気分になりながら、腐った眼をさらに腐らせて歩く。いや、さすがに自虐が過ぎるか。

 ただ気分が晴れないのも事実。俺は今日、素晴らしい作文を書いたのだが、担任の平塚先生にご理解を得られず、奉仕部という謎の部活に入れられ、雪ノ下雪乃という美少女に罵倒の限りを尽くされ、HPは底をついている。

 ライトノベルならラブコメ展開だが、俺の手にかかればこのような惨劇になってしまう。あの雪ノ下という奴はぼっち同士、シンパシーを感じてしまいそうになったが、甘い空気なぞ皆無。ぼっち+ぼっち=気の合う仲間ではない。ただ同じ教室にぼっちが、2人いるだけだ。

 大して意味のないことを考えているとメールが来た。

 花陽からだ。

 いつものように平常心でメールを開く。べ、別に喜んでなんかいないんだからねっ!!

『先輩はどんな部活に入っていますか?』

 何だかなー。色々とタイムリーすぎだろ、この質問。まあ、いいけど。

『中学時代から高1は帰宅部。今日から奉仕部』

『今日から入ったんですね(笑)ちなみに奉仕部ってなんですか?』

『俺もよく分からん。強制的に入れられただけなんでな。部員も2人しかいない』

『先輩、何かしたんですか?』

『何も。今日、作文を書いたんだが理解を得られなかったぐらい』

『一応、内容を聞いてもいいですか?』

 俺は公園のベンチに座り、今日の高校生活に関する作文を、1行1句漏らさずに書いて送る。

 3分くらいたって、電話がかかってきた。

『どうした?』

『せ、先輩!あの、何か悩みでもあるんですか!?』

『は?』

『も、もし、ご両親や小町ちゃんにも言えない悩みでしたら、わ、わ、私に話してください!!』

『どうしてそうなるんだ?』

『だ、だって!あんな暗い病んだ文章を書くなんて……』

 平塚先生もそこまで言わなかったような……。しかし、花陽が本気で心配しているのが、電話越しに伝わってくるので、そこまで悪い気分じゃない。

『別に暗いのはいつもの事だし、病んではいない。青春は素晴らしい、美しいというくだらない価値観に一石投じてみただけだ』

『あはは、深いような、そうでもないような……』

 いかん。ドン引きしているようだ。

『そういや、何か話があるんじゃないのか?』

 華麗に話題を逸らす。

『あ、そうでした。すみません。実は何部に入ろうか悩んでて……』

『へえ、どの部活で悩んでるんだ?』

『……最初は友達と一緒に陸上部に入ろうと思ったんですけど、今日、たまたまスクールアイドルのメンバー募集の広告を見かけて……』

『やりたいのはスクールアイドルの方だと聞こえるけどな』

『た、多分そうなんですけど、自信がなくて』

 至ってシンプルな悩みだった。要はスクールアイドルをやりたいけど自信がないからどうしよう、てところだ。

『いっそ友達も誘えばいい』

『え?でも……』

『陸上部は止めとけ。スクールアイドルやりたいけど自信がないから陸上部に来ましたじゃ失礼過ぎる』

『あ…………』

『それに前も言っただろ?その……』

『あわわ……』

 この前の事を思い出したようだ。こちらも恥ずかしくなる。

『じゃあ頑張れ。応援してる。じゃあな』

『あっ……』

 何か言いかけた気配がしたが、さっさと電話を切る。

 穴に入りたい気分、というものを久しぶりに味わった気がする。

 帰宅時、小町に何かあったのかと聞かれたが、適当にごまかしておいた。

 

 あれから2日たったが、花陽からは連絡は来ていない。自分からは何もできずに日々を過ごしている。さんざん孤高のぼっちとか言っておきながら、この約1ヶ月の安らぎを失うのが恐くなっていた。花陽に言った言葉は紛れもない本音でしかないが、傷つけたかもしれない、という不安はなくならない。失う事は慣れてるはずなのに。

 自室のベッドで寝そべりながら物思いに耽っていると、スマホが振動し始めた。

 画面を見ると、花陽だった。

『おう』

 恐る恐る出たが、上手く言葉が出てこない。

『私、スクールアイドルになります!!相談に乗っていただき、ありがとうございます!!』

『え?』

 普段と違うハキハキした声とスクールアイドルになるという宣言に驚く。

『私、やってみます!』

『お、おう……』

 気圧される。覇気でも使えるのだろうか。このままじゃ気絶してしまいそうだ。いや、しないけど。

『なあ……』

『はい?』

『俺の事嫌いにならなかったのか?』

『え?』

 少しの間、沈黙が流れる。そして……

『そ、そんなわけないじゃないですか!』

 大きな声に自然と体を起こしてしまう。

『言い方はきつかったかもしれないですけど、でも、先輩の言葉のおかげで前に進めました。だから……』

『?』

『……こんな私ですけど、また相談してもいいですか?』

 その言葉に頬が熱くなるのを確かに感じた。

 




  気がつけば、明後日はラブライブ!サンシャイン第5話ですね!

 読んでくれた方々、ありがとうございます!

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