捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女 作:ローリング・ビートル
疾き事、風の如し。
最近のジョギングが少しは効果があったのか、それとも花陽と話せるからといって、柄にもなく、ナチュラルハイになっているのか、全速力で校舎を出て、自転車を漕ぎ、公園まで来たが、疲れを感じなかった。
夕暮れが赤く照らすベンチに腰掛け、電話をかけると、すぐに花陽の声が聞こえた。
『もしもし、八幡さん、こんにちは』
「おう、なんかあったのか?」
『あの……実は凛ちゃんの事で相談が……』
「星空の?さっきメールが来たぞ」
『え?そうなんですか?』
「ああ、その……お前の……ドレス姿が……」
『ドレス姿?…………あ』
花陽は何の事か思い至ったようだ。電話越しに、真っ赤に染まる頬が見えた気がした。
『ぴゃあ…………!み、み、見たんですか?』
「あ、ああ、す、少しだけ…………」
がっつり見ました。
『ええ、あ、あの…………どうでしたか?』
「い、いいんじゃないか?サイズもピッタリみたいだし…………」
『…………むう。なんかあまり嬉しくない褒め方です』
受話器越しに、花陽が頬を膨らませているのがわかる。
「……………………す、すげー、可愛かったよ、それよか星空がどうしたんだ?」
『ぴゃっ!あ、あわわ、り、りり凛ちゃんですね、はい!』
花陽は深呼吸を二回して、ようやく本題について語り始めた。
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「可愛い服が似合わない…………ね」
『はい、そんな事ないのに…………』
星空は意外なトラウマを抱えていた。
はっきりいって、星空は美少女である。それは、μ,sのファンなら誰もが認めるところだろう。もちろん、性格も人懐っこく、妹っぽい。そして妹っぽい。
だが、それでも本人は自分に自信がないらしい。
『小学校の頃に言われた事をまだ気にしてるみたいで…………』
「まあ、気持ちはわからんでもない。俺も女子から手を繋ぐの嫌がられて、未だにフォークダンスがトラウマだ」
とりあえず星空をからかった男子は、デスノートに名前を書くぐらいで許してやろう。
『……八幡さん、そ、そんな事が……』
「やめろ。そこまで悲しい声出すな。本当に泣けてくる」
『あ、はい……八幡さんの手、温かいのに……』
「そ、そうか……」
だから素でそういう事言われると、本気で照れるから控え目でお願いします!
「まあ、要はドレス云々より、星空に自信を持って欲しいのか」
『あ、でも……今回のドレスは凛ちゃんに着て欲しいんです!きっとすっごく似合うと思いますから!』
「なるほど……じゃあ、ドレスを着る以外の選択肢を無くしてやればいいんじゃないか?」
『え?ど、どうすればいいんですか?』
「……いい方法がある」
話している内に思いついた単純な方法を話していると、次第に花陽のテンションが上がっていくのがわかる。
『わ、わかりました!じゃあ、当日はよろしくお願いします!』
「ああ、そっちはμ,sのメンバーに話しておいてくれ。あと主催者側にも」
花陽と作戦の打ち合わせを済ませ、すぐに、この作戦の要となるあいつに電話をかけた。
『もしもし、どうしたの八幡?』
「……ちょっといいか」