捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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モニャモニャ

 疾き事、風の如し。

 最近のジョギングが少しは効果があったのか、それとも花陽と話せるからといって、柄にもなく、ナチュラルハイになっているのか、全速力で校舎を出て、自転車を漕ぎ、公園まで来たが、疲れを感じなかった。

 夕暮れが赤く照らすベンチに腰掛け、電話をかけると、すぐに花陽の声が聞こえた。

 

『もしもし、八幡さん、こんにちは』

「おう、なんかあったのか?」

『あの……実は凛ちゃんの事で相談が……』

「星空の?さっきメールが来たぞ」

『え?そうなんですか?』

「ああ、その……お前の……ドレス姿が……」

『ドレス姿?…………あ』

 

 花陽は何の事か思い至ったようだ。電話越しに、真っ赤に染まる頬が見えた気がした。

 

『ぴゃあ…………!み、み、見たんですか?』

「あ、ああ、す、少しだけ…………」

 

 がっつり見ました。

 

『ええ、あ、あの…………どうでしたか?』

「い、いいんじゃないか?サイズもピッタリみたいだし…………」

『…………むう。なんかあまり嬉しくない褒め方です』

 受話器越しに、花陽が頬を膨らませているのがわかる。

「……………………す、すげー、可愛かったよ、それよか星空がどうしたんだ?」

『ぴゃっ!あ、あわわ、り、りり凛ちゃんですね、はい!』

 

 花陽は深呼吸を二回して、ようやく本題について語り始めた。

 

 *******

 

「可愛い服が似合わない…………ね」

『はい、そんな事ないのに…………』

 

 星空は意外なトラウマを抱えていた。

 はっきりいって、星空は美少女である。それは、μ,sのファンなら誰もが認めるところだろう。もちろん、性格も人懐っこく、妹っぽい。そして妹っぽい。

 だが、それでも本人は自分に自信がないらしい。

 

『小学校の頃に言われた事をまだ気にしてるみたいで…………』

「まあ、気持ちはわからんでもない。俺も女子から手を繋ぐの嫌がられて、未だにフォークダンスがトラウマだ」

 

 とりあえず星空をからかった男子は、デスノートに名前を書くぐらいで許してやろう。

 

『……八幡さん、そ、そんな事が……』

「やめろ。そこまで悲しい声出すな。本当に泣けてくる」

『あ、はい……八幡さんの手、温かいのに……』

「そ、そうか……」

 

 だから素でそういう事言われると、本気で照れるから控え目でお願いします! 

 

「まあ、要はドレス云々より、星空に自信を持って欲しいのか」

『あ、でも……今回のドレスは凛ちゃんに着て欲しいんです!きっとすっごく似合うと思いますから!』

「なるほど……じゃあ、ドレスを着る以外の選択肢を無くしてやればいいんじゃないか?」

『え?ど、どうすればいいんですか?』

「……いい方法がある」

 

 話している内に思いついた単純な方法を話していると、次第に花陽のテンションが上がっていくのがわかる。

 

『わ、わかりました!じゃあ、当日はよろしくお願いします!』

「ああ、そっちはμ,sのメンバーに話しておいてくれ。あと主催者側にも」

 

 花陽と作戦の打ち合わせを済ませ、すぐに、この作戦の要となるあいつに電話をかけた。

 

『もしもし、どうしたの八幡?』

「……ちょっといいか」


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