捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女 作:ローリング・ビートル
ラブライブ!サンシャイン皆可愛い!
それでは今回もよろしくお願いします。
頬を染めた小泉に対して少し気まずい思いをしながらも、何とか会計を済ませて店を出た。ああ、キモいと思われてたらどうすれば……。
「あの、ごちそうさまです。すいません、私の分まで……」
「気にすんな。チケットのお礼だ」
「そうだよ、花陽ちゃん。どうせお兄ちゃんに小町か花陽ちゃん以外、奢る女の子なんていないんだから。あ、もしかして小町以外の女の子に初めて食事を奢ったんじゃない?お兄ちゃん!」
何故、食後に傷つけられなきゃいかんのだ。
「ほっとけ。俺だって女子との食事の1回や2回……」
「あるの?」
「あるんですか?」
小町が悪戯っぽく、小泉が心配そうに聞いてくる。
「ない……」
正直に白状する。
「やっぱり」
「…………そ、そうなんですねっ」
「さ、行くか」
何事もなかったように颯爽と歩き出す。いらぬ質問のせいで、いらぬダメージをうけてしまった。
それなりに楽しい時間が過ぎて、気がつけば帰る時間になっていた。
「じゃあ、明日から高校生だな。おめでとう」
「制服姿の写真送ってくださいね♪」
「うん!2人もまた会おうね」
小町がこっそり脇腹を小突いてくる。何か言えということか。
「まあ、その、なんだ、今度は千葉に来てみたらどうだ?小町も待ってることだし」
小町がジロリと見てくる。もう一声か。
「千葉なら、詳しく、案内、できる」
搾り出した言葉を途切れ途切れに発する。噛まなかっただけましだと思う。
「は、はい!よろしくお願いします!」
「おう…………じゃあな」
「あ、あの!」
背を向けたところで、声をかけられる。
「?」
「あの、その」
「どした?」
「お兄さんじゃなくて…………は…………先輩って呼んでいいですか?」
確かに俺と小泉は兄妹ではないので、それが当たり前だろう。しかし、聞く必要はあまりないような……。
「あぁ、惜しい……」
小町が何か小声で呟いている。最近独り言多いな。大丈夫か。悩みがあるのか。
しかし、すぐに何か思いついたような顔をして蘇る。
「それじゃあ、お兄ちゃんも呼び方変えてみたら?YOU呼び方変えちゃいなよ!」
キャラ変わってんぞ。
しかし、呼び方か……。まあ、先輩と呼ばれるなら……
「こ、後輩って呼んでいいか?」
場の空気が凍りつく。
「そ、それはちょっと……」
小泉は悲しそうな顔をする。
「このバカ、ボケナス、八幡!何でそうなるの!?」
「いや、八幡は悪口じゃねぇだろ……」
おかしい。妹からの扱いがどんどん酷くなっていく。
「あの、先輩!」
割と真剣な顔をした小泉が、一歩だけこちらに踏み込んでくる。だが、すぐに俯いた。
「わ、私の事は……は、花陽でいいです……」
最後の方はかなり聞き取り辛かったが、ここで『何かいったか?』なんていえるほど、馬鹿じゃない。
心の準備の為、1回深呼吸をする。
そして、花陽の目を見て言った。
「は、はにゃよ……」
「…………」
「…………」
噛んじゃった。
下手に雰囲気作らなきゃよかった。うわぁ、このまま消えてしまいたい。
「……ふふっ」
寒い沈黙を破るように小泉…じゃなくて花陽が笑いだす。ほら、噛まなかった。心の中では。
つられて小町も俺も吹き出した。
陽もだいぶ傾いた空の下。秋葉原駅の前で美少女2人(片方は妹だが)と楽しく笑い合う。
これってリア充じゃね?と思いながら、春休み最後の日は少しだけ賑やかに過ぎていった。
読んでくれた方々、ありがとうございます!