捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女 作:ローリング・ビートル
私はこの前の誕生日パーティーの時に、撮らせてもらった写真を皆に見せた。写真は苦手らしく、笑顔は見せてくれなかったが、いい表情だと思う。
「「「「「「…………」」」」」」
1年生を除く皆が、画面に表示された八幡さんをじっと凝視している。何だろう、何と言っていいのかわからない複雑な気分です……。
「……目に澱みを感じます」
「ぱっと見は、まあまあみたいだけど目が腐ってるわね」
「ふ、2人共、失礼だよ!」
「そうだよ!人間見た目じゃないよ!目が汚れてるくらいじゃ、性格は判断できないよ!」
ストレートな海未ちゃん、にこちゃんに、ことりちゃん、穂乃果ちゃんが反論する。でも穂乃果ちゃん、あんまりフォローになってないよ……。
「まあ、目は濁ってるけど、優しそうではあったよ。かよちんと歩いてた時は」
「いえ、私が気になったのは、一体どれだけの修羅場をくぐり抜けたら、このような目になるのかと……」
そういえば、私も初めて八幡さんと出会った時は、ずっと目を見てたなぁ。あの哀しそうで、どこか優しい目を……。
「花陽、彼は何か部活はやっているのですか?」
「はい、奉仕部に……」
「奉仕部?」
私は八幡さんから聞いた奉仕部の内容と、入る経緯を説明した。
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「中々穿った物の見方をするんやね」
「ただ単に捻くれてるだけじゃん。納得できないわけじゃないけど」
「あはは……」
「結構変わり者なんだね~」
「あなたも人の事は言えないでしょう」
ああ、どうしよう。先輩が捻くれた変わり者みたいになってる…………事実な気もしますが。
いえ、例え流れでこうなったとはいえ、八幡さんを紹介するなら、いいところを紹介しないと。
「比企谷先輩は多分家庭的にゃ!」
私が口を開く前に、凛ちゃんが手を挙げて発言する。
でも、八幡さんは家事は小学生6年生レベルって言ってたような……。
「将来の夢は専業主夫って言ってたにゃ!!」
「「「「「「「…………」」」」」」」
私を含め、皆が沈黙する。
凛ちゃん……。
八幡さんの写真が哀愁漂って見える。
「あれ?」
「アンタ、それヒモになる予定って事!?」
「花陽……その方を連れてきなさい。私が根性を叩き直してあげます」
「ウチがスピリチュアルの力で何とかしてあげるよ」
「は、花陽ちゃん!大変かもしれないけど、ファイトだよ!」
「あはは……そんな駄目な人には見えないけど……」
むう……どうしよう。
「皆、落ち着きなさいよ。さっきから、花陽が喋れてないでしょ?」
真姫ちゃんが視線で私を促す。そうだ。私がありのままを話せばいいんだ。八幡さんのいいところを誰よりも沢山知っている私が。
私は深呼吸をして、八幡さんと出会ってからの事を、ゆっくりと噛みしめるように、自分の気持ちを確認するように話した……キスしようとしたところ以外。
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「2人共素敵……」
ことりちゃんがうっとりしたように言う。脚色は全くしていない。ただ、ありのまま話しすぎて、少し恥ずかしいです……。
「何か聞いてる方が照れちゃうね……」
「あの穂乃果ちゃんが!?嘘にゃ!?」
「穂乃果だって興味くらいあるよ!」
「ほっこりするなぁ~」
「ま、まあ、私ほどじゃないわね!」
「何見栄はってんのよ」
よかった。悪い印象はなくなったのかな?
「…………」
「海未ちゃん?ど、どうしたの!?何で気絶してるの!?」
「海未ちゃ~ん!」
「そういや、エリチどうしたん?さっきからずっと黙ってるけど」
あれ?絵里ちゃんの顔がほんのり赤い。どうしたのかな?
「えっと……まあ、その……格好いいじゃない……」
「「「「「「「「え?」」」」」」」」
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「っくしゅっ!!」
「あら、比企谷君。誰に悪口を言われてるのかしら?」
「何で悪口前提なんだよ」
「悪口以外アテはあるの?」
「……言い返せねぇ」
「あなたの好きなμ,sから悪口かしら」
「止めろ。泣くぞ。それよかお前、μ,sの……」
「……何?」
「いや、いい」