捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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「えぇ!?私!?な、何か歌えって、ちょっとイミワカンナイ!!」 西木野真姫

  それでは今回もよろしくお願いします。


波のり

「まじか……」

「こ、恐いです……」

 このプールで1番人気の、日本最長のウォータースライダーを見て、俺と花陽は軽く血の気が引いた。何これ。もはや娯楽ではなく、修行ではなかろうか。

 2人して頷いて、さり気なく離脱を試みた。

「じゃあ、飲み物買ってくるか」

「そ、そうですね。熱中症には気をつけないと……」

 回れ右をしたところで、小町に肩を掴まれる。花陽も星空にがっちりとホールドされて、「ぴゃあ……」と悲しそうな目をしていた。

「はいはい、まだ来たばかりだから。そういうのいいから」

「逃がさないにゃ~!」

「お、おい!ぼっちにこういうリア充系アトラクション無理だって!いや、ぼっち関係ないけど!」

「ダ、ダレカタスケテェ~!」

 

 長い行列は割とスムーズに進んでいき、心の準備をしている内に、やがて順番が回ってきた。

 どうやら二人一組で滑るらしい。

 二人一組という言葉に戦慄が走り、挙動不審に陥りかけたが、気にする事はない。今日は4人で来ているからな。小町と組めば何の問題もない。むしろ得した気分。悪いな、親父。

「凛ちゃーん!こっちこっち!」

「うん!楽しみにゃ~!!」

 ……あれー?どうなってんの?

 小町と凛は楽しそうに身を寄せあい、係員の指示に従い、スムーズに滑っていった。

「…………」

「…………」

 その様子をぽかんと眺めていると、係員のお姉さんから呼ばれた。

「そちらのカップルのお客様どうぞ~!」

「「!?」」

 カップルという言葉に反応してしまう。

「カ、カップル…………そう見えるのかな」

 花陽は何か呟きながら、割と軽快な足取りで、2人乗りの大きな浮き輪の前に座った。

「はい、じゃあ彼氏さんは、彼女さんをしっかり支えてあげくださいね~!」

 やけにノリノリな係員のペースに飲まれ、花陽との距離を詰められる。ちょ、タンマ!今どちらも8割裸だからね?あんまりこうみだりに接近するのはよくないと思うんですよ。

 現在の状況を説明すると、俺が花陽の肩に手を乗せ、花陽の小さな体は俺の足と足の間に浅く挟まれている。素肌と素肌が触れ合う緊張と熱で、じっとりとかいた汗が、ドン引きされてるんじゃないかと気になって仕方ない。

 花陽の表情は窺えないが、少し恐がっているようだ。

 うわー、落ち着かねー。

 もちろん、こちらの混乱など係員のお姉さんが気づくわけもなく、スムーズに俺達は滑り出した。

「うおおぉぉぉぉぉ!!」

「ぴゃあああ…………あはははははははははははは!!」

 あれ?

 花陽さん、テンション上がりすぎですよ。

「八幡さん八幡さん!これ楽しい!!」

「そ、そうか」

 わかったから、ぐいぐい体押しつけないで!ああ、恐い柔らかい恐い柔らかい恐い柔らかい恐い柔らかい!

 何がなにやらわからぬまま、フィニッシュを迎えた。

 

「はぁ……はぁ……いきなりハードだった」

「お兄ちゃん、お疲れー!」

「先輩ファイトにゃ-!」

 何でお前ら、そんなに元気なの?と言おうとしたら、右腕をホールドされた。

「八幡さん、もう一回行きましょう♪」

「……はい?」

 助けを求め、小町と星空を見る。

「お兄ちゃん、頑張って!」

「かよちんは意外とこういうトコあるにゃ!でも凛はこのかよちんも好きにゃ」

「じゃあ、小町か星空が……」

「「いってらっしゃ~い!」」

 こいつら……。

「さ、八幡さん!行きましょう!!」

「ダ、ダレカタスケテェ~!」

 

 この後、2回乗りました。




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