捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女 作:ローリング・ビートル
それでは今回もよろしくお願いします。
夏休み初日。
「ふぅ……」
お風呂上がりの火照った体をベッドに沈める。
あんな事になるなんて…………。
今思えば、私もどこかで異変に気づいていたのかもしれない。でも、私は…………自分の事ばかりで…………。
2年生の仲違いで、μ,sは活動停止になりかけていた。
ことりちゃんの転校の話を聞いて、穂乃果ちゃんが辞めると言い出したとき、私は目の前が真っ暗になった。そこからは、各々が怒り、悲しみをぶつけ、その場は解散になった。凛ちゃんのあんな悲しそうな顔は初めて見た。
私は自分でも何を言ったか覚えていない。もしかしたら何も言えなかったかもしれない。
μ,sがなくなっちゃったら、私はどうすればいいんだろう。
思考を振り払う。駄目だ、私。また、自分の事ばかり…………。
こんな時、あの人ならどうするだろう?
スマートフォンに手を伸ばす。
具体的な解決策を求めるわけじゃない。
優しい慰めが欲しいんじゃない。
ただ声が聴きたかった。
「お兄ちゃん、花陽ちゃんとはいつデートするの?」
「何の事だ?」
「ゴミぃちゃん、花陽ちゃんとはいつデートするの?」
「小町ちゃん…………乱暴よ」
「だってこの前、いきなり家を飛び出してお泊まりなんてしたから、てっきり恋人同士になったのかと思ったよ」
確かに……。第三者視点から見れば、そういう風に思われても仕方はないかもしれない。俺が帰ってきた時の小町と母親の顔といったらもう…………。ちなみに親父は舌打ちをして、自室へと引き上げていった。ぜってー、また睡眠妨害してやる。
「はぁ~あ、これだからゴミぃちゃんは…………。キスくらいしてくればよかったのに…………」
小町の言葉を引き金に、また脳内であの瞬間が流れ出す。正直にいえば、思い出しすぎて、スローモーションもストップモーションも余裕なレベル。よくわからんな。
おかげで授業に身が入らず、平塚先生の愛のムチを腹部に食らった。あの威力から察するに、夏休み明けには、ソニックブームくらいは使いこなしているだろう。
「絶対何かあるよ…………顔赤くなってるし」
小町が一人でブツブツ言い出したので、そろそろ自分の部屋に引き上げようと思い、ソファから立ち上がると、電話が鳴り出す。
花陽だ。
俺の表情で全てを悟った小町は、ニッコリと笑みを浮かべる。…………何かムカつくな。
「……はい」
『は、八幡さん、こんばんわ……』
「あ、ああ…………元気か?」
『はい…………元気です…………』
明らかな嘘だ。思わずウソつけと返したくなるくらい。だが花陽の話をまだ何も聞いていないので、一旦飲みこんだ。横では小町が『伸ばして、伸ばして』とジェスチャーを送ってくる。誘拐犯と話してるんじゃねえんだぞ。
『あの…………何というか』
「ああ」
『そっちはどうですか?』
「夏休み初日を家で満喫してたよ」
『そうですか……』
「…………」
『…………』
恒例の沈黙だが、これはいつものとは種類が明らかに違う。どこが違うかは具体的には言えないが…………。
「花陽…………何かあったか?」
『え!?あ、あ、あの、その……何でもない……ですけど』
……これでは埒があかないし、これ以上尋ねるのは逆効果だ。ちょうど小町もいることだし……
「花陽…………よかったら、明日、遊びに行かないか?」
ラブライブ!サンシャイン第9話キター!!
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