捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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 8月ももう終わりか…………。

 それでは今回もよろしくお願いします。


恋のはじまり

 

「八幡君、最近花陽とは進展したの?」

 場が凍りつく。食後の穏やかなひとときに花枝さんは爆弾を投下した。俺はお茶を吹き出し、ご飯を5杯も食べて幸せそうな顔をしていた花陽は一瞬で赤面した。

「ゴホッ、ゴホッ!な、何の話ですか?」

「あらあら~、とぼけちゃって~」

 花枝さんはほんわかした笑顔のまま2発目を投下する。

「てっきりキスくらいすませてるかと思ったわ~」

 ダ、ダレカタスケテェ~!!

 この人はほんわかオーラを戸塚や花陽以上に放出しているので、天然なのか狙っているのか判断がつかない。

 それにキスって…………。

 左頬を意識してしまう。

 花陽と目があったが、お互いにすぐ逸らしてしまう。

「お、お母さん!な、なな何言ってるの!?」

 花陽は手をわたわたさせながら抗議するが、花枝さんはそれすらも受け流す。

「この前よりいい雰囲気になってたから~」

 やばい。このままでは何かがやばい。自分の中の何かが決定的に変わってしまう予感がした。

「あ、じゃあ俺はそろそろ……」

 できる限りクールを装い、2度目の脱出を試みる。花陽が子犬のようにこちらを見上げたが、気づかないふりをした。

「あら、でも外は大雨よ」

「え?」

 窓の外を見てみると、いつの間にか雨がざあざあと降り注いでいた。ベランダに叩きつけられる雨粒を見ただけで、その勢いの凄さがわかる。だが、しかし!!

「すいません。傘借りていいですか?」

「ごめんねぇ、今傘がなくて」

 んな訳あるか!!…………という言葉をこらえ、腹をくくる。

「じゃあ、仕方ない。走るか」

「でも、この雨じゃ電車止まるかもねぇ」

「…………」

「明日は日曜日だし、泊まっていきなさい♪」

「いえ、しかしですね…………年頃の男女が同じ屋根の下というのは清廉潔白な俺としてはいかがなものかと…………」

「何かする気なの?」

「いえ…………しかし花陽が…………」

「花陽ちゃんはOKだそうよ」

 目を向けると、花陽は真っ赤な顔をして俯いているだけだ。沈黙はYESになるとか…………。

「着替えは……」

「もちろんウチの人のを貸してあげるわ~」

「でも……」

「ウチの人も大歓迎だって♪花陽が男の子を連れてくるなんて初めてだから」

 マジかよ。ウチの親父なんて、小町が男を連れてきたら、マジギレだけどな。俺に至っては、SEEDに目覚めるまである。まあ、ガチで連れてきたらマジ泣きかもしれんが。悲しくて悲しくて震えるんだろうな。

「八幡さん、あの…………じゃあ、わ、私の部屋でμ,sのライブ映像を見ませんか?9人で撮り直したものがあるんです!」

「あ、ああ」

 斯くして、俺の人生初の女子の家にお泊まりイベントが発生した。あ、友達いないから男子の家にも泊まった事なかった…………。

「じゃあ、お風呂沸いたら呼ぶから。それまでごゆっくり~」

「は、はい」

 女性2人のパワーに抗えない辺りは、自宅や奉仕部と似ているが、何処か違うのは…………

「八幡さん、こっちです!」

 俺の袖を躊躇いがちに引く、この女の子に対して…………多分、特別な気持ちを抱いているんだろう。

 花陽の小さな背中を見ながら、俺は以前から見て見ぬふりしてた何かを自覚してしまった。





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