捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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  ラブライブ!サンシャイン第8話キター!!

  それでは今回もよろしくお願いします。


夜を駆ける

 

 あの花火大会の出来事から時間が数日経って、夏休みが近くなってきた頃、ついに花陽、というかμ,sは大会本番を迎えた。

 本来なら応援にでも行ってやりたいところだが、俺は数学の補習を受けるため、日曜日なのに学校に来ていた。こうして人は休日出勤を覚え、ブラック企業との付き合い方を覚えていくのだろう。え?補習はお前が悪い?違うな。数学が出来ないという個性を認めない社会が悪い。

 まあ、応援には小町が行ってるから大丈夫だろう。ネットに上げたPVの閲覧数も今では関東でもかなり上位に食い込んでいるらしい。綺羅ツバサ…………やはり見る目があるな。

 考えている内に花陽の顔を思い出す。さすがに火照りは完全に治まった。電話での会話も至って普通。だがそこに物足りなさを感じてしまう自分がいる。自分勝手な願望を押しつけてしまいそうになる。こんなのは過去の繰り返しになるだけなのに…………。

 いや、今は考えるのはよそう。あの夜のあの幸福な瞬間を思い出しながらこの補習を…………

「ひ、比企谷君!一人でニヤニヤしてないではやく問題を解きなさい!」

「はい」

 

「ふーっ」

 補習から解放され、やっと自宅に辿り着いた。それと同時に声がかかる。

「お兄ちゃん!」

 小町はいつになく真面目な顔だ。

「あれ?お前応援に行ったんじゃないのかよ」

「それが…………大変な事になっちゃって…………」

 小町の目が悲しげに伏せられる。胸がざわめくより速く、靴を脱ぎ、小町に駆け寄る。

「どした?」

「μ,sの穂乃果ちゃんが倒れちゃって…………ラブライブの予選を辞退したんだよ」

 穂乃果とは間違いなく、ほとんどの曲でセンターを務める高坂穂乃果の事だろう。花陽が言うには元気の塊みたいな奴らしい。

「雨の日も外走ったりしてて…………ちょっと頑張り過ぎてたみたい」

 小町は高坂穂乃果の疲労の原因を話そうとしていたが、俺はまず聞くべき事があった。

「あの……花陽は?」

 小町は何を思ったのか、キョトンとした目になったが、それもすぐに優しい微笑みになる。

「メールには大丈夫って書いてあったよ。会場では会えなかったんだよ。小町は部外者だから……」

 身内や学校関係者以外、控室までは通してもらえなかったようだ。それで花陽に声をかけられなかった事も落ち込んでいる原因の一つだろう。

「後でお兄ちゃんからも連絡してあげて……」

 小町が言い終わる前に俺は家を飛び出していた。

 

「はあ……はあ……」

 家を出て、自転車で駅まで行き、電車に乗り、秋葉原の街を走り抜け、花陽の住んでいるマンションの前に辿り着く。花陽に会いたいという焦りや慣れない事をしている高揚感が、幾分か疲労を忘れさせたが、やはり普段から運動をしていないツケは払わされる。

「はあ……はあ……ふぅ」

 手頃な場所に座り、空を見上げる。この前より少し暗い色だ。こんな時間に走るなんて俺らしくもない。

 だが余計な思考は極力振り払い、花陽に電話をかける。

 すると、近くで音が鳴り出した。

「八幡さん…………」

 そこには花陽が驚いた顔をして立っていた。






   すいません!本当はプールに遊びに行く話を書く予定だったのですが、先に穂乃果、ことりの騒動の話を持ってくる事になりました。予告詐欺で申し訳ないです。

 読んでくれた方々、ありがとうございます!

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