捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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テクテク

 

「暑~い」

 小町が夏の陽射しに顔を顰める。

 太陽はまだ7月の上旬だというのに、容赦ない熱線を降らしていた。7月でこれなら12月はどんだけ暑いんだよ。んな訳あるか!などという1人ボケツッコミを頭の中で成立させながら、人ごみを2人してはぐれないように歩く。

 7月7日、七夕。普段、別居生活をしている織姫と彦星が1年に1回だけの逢瀬を交わすあの日だ。まあ、マンネリ防止にはそのぐらいがいいのかもしれない。

 いや、それは置いといて、そんなロマンチックな日に俺と小町は秋葉原に来ていた。理由は花陽と凛に会うためだ。ここ最近、あと2週間後に控えたラブライブの為に猛練習していたμ,sだが、今日はお祭りがあるという事で、久々の休みとなったようだ。

 孤高のぼっちたるこの俺は、人ごみが苦手なので、迷惑をかけると思い、そのお誘いを断ろうとしたが、マイシスター小町が悪鬼羅刹のオーラを放ち、俺を脅迫……もとい、説得してきて今に至る。

「お兄ちゃん、花陽ちゃんに久しぶりに会うんだから粗相のないようにね」

「いや別に何もしねぇよ。てかほぼ毎日連絡取ってんだから、久しぶりって感じがしない」

 何故か向こうから来るのである。大事な事なので、もう一度言おう。向こうから来るのである。ハチマン、ウソ、ツカナイ。

「…………ぐす」

「どした?」

 小町が目に涙を浮かべている。

「あのお兄ちゃんが……毎日のように女の子と連絡を取り合うなんて…………小町嬉しいよ」

 …………妹が喜んでいるのに釈然としない。

「あ、来たにゃ!」

 前方から声が聞こえたが、特徴のある語尾で見なくても誰だかわかる。

「あ、凛ちゃーん!花陽ちゃーん!」

 小町が2人の元へ駆け出す。俺は小町に注意を払いながら、その背中を追う。

 3人はこの炎天下だというのに抱き合い、再会を喜び合う。あれ、何かいい匂いがしそう。俺も飛び込んで……いいわけないか。

「うす」

「あ、比企谷さんだ!」

 おい、おまけ扱いか。

「ささっ、花陽ちゃん!」

「え?何?こ、小町ちゃん」

「かよちん!何照れてるにゃ!」

「え?え?ぴゃあっ!」

 そして、星空の隣にいた花陽が2人によって押し出される。

 花陽は勢い余って、こちらの胸にぽすっと飛び込んできた。

 その優しい衝撃のせいか普段接する誰よりも甘めの香りが弾けた。べ、別に匂いフェチじゃないんだからねっ!

「ご、ごご、ごめんなさい!は、八幡さん……」

 花陽はこちらにもたれかかったまま、上目遣いで俺の目を覗き込む。

「…………」

「…………」

 お互いに距離を意識してしまい、すぐに離れる。

「あの……元気でしたか?」

「あ、ああ……そっちも元気そうで何より……それとμ,sの新曲良かった……」

「あ、ありがとうございます……八幡さん」

 やっぱり直接八幡さんと言われるのは何とも言えないむずがゆさがある。

「あの……八幡さん」

「……どうした?」

「やっと会えましたね」

 花陽の微笑みは前とは何かが違う。だがそこにあるのは違和感ではなく、もっと人を安心させる何かだ。

「そうだにゃ」

 でも俺は噛んでしまった。星空の真似をしているみたいだ。

 そして2人して吹き出す。だがそれはすぐに掻き消された。

「あのー、凛達もいるにゃ」

「そうだよ、は・ち・ま・ん・さん」

 …………いかん。この暑さにあてられたようだ。

 






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