捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女 作:ローリング・ビートル
それでは今回もよろしくお願いします。
限界を超えた。
俺の人生で数少ない経験だ。まあ、女子に告白した翌日にクラス中にその事が知れ渡り、やがて学年全体に、噂が尾鰭をつけて蔓延していった時は色々と精神的に超えたな。
そして今、俺の肉体が限界を超えた。
「ご、ごちそうさま」
巨大おにぎり完食。
「はい!お粗末さまです!」
俺より20分くらい先に食べ終えた花陽が満足そうにいい笑顔を見せる。アイドル兼フードファイターか。残念ながらもうその席は埋まっているぞ、花陽。てか、よく米だけをそんなにパクつけるな。正直、棚にあったインスタントの味噌汁が無ければ、完食できたか怪しい。「ど、どうでしたか?」
花陽が目をキラキラさせながら聞いてくる。
「あ、ああ美味かったよ……」
別に無言の圧力で言わされているわけじゃない。心の底からの感想だ。ハチマン、ウソ、ツカナイ。
実際に普段食べている米より美味しく感じられた。
「ですよね!?」
「おい、今の地の文だから」
どんだけ白米好きなんだよ。危うくキャラ崩壊しそうになってるじゃんか。
「ふぅ…………」
花陽は軽く伸びをして、俺の隣に座る。無意識に腰を下ろしたのか、さっきより距離が近くなっている。その幸せそうな横顔をぼんやり眺めながら、花陽と過ごす時間に安らぎを感じている自分を改めて俯瞰していた。
すると目が合った。
「…………」
「…………ふふっ」
花陽が吹き出す。
「御飯粒ついてますよ」
「!」
自分で取ろうとするより先に花陽の手が伸びる。
一瞬、花陽の指のひんやりとした感触がして、すぐに御飯粒と一緒に離れる。
そしてそのまま自分の口に含んだ。
徐々に顔が熱くなっていくのを感じる。
「どうかしましたか?」
「いや、お前意外とそういうの気にしないんだな……」
「え?」
花陽は気づいていないようだ。由比ヶ浜並みの天然か。胸大きいし。そうやって思春期男子を死地へと送り込んで行くのか。
「…………!」
花陽はやっと思い当たったらしく、顔が赤くなる。花陽といい、戸塚といい、何で顔赤くなるだけで可愛さ3倍なんだよ。俺も顔赤くすれば平塚先生や雪ノ下も優しくしてくれるかもしれない。…………やるだけ無駄か。
「とりあえず、出かけるか」
気を取り直して、外出を提案する。このまま家にいたら昨日の二の舞だ。非モテ三原則は固く守らねばならない。
「あ、はい!わかりました」
花陽はてきぱきとしたくを始める。見ろよ、この一歩引いてついてきてくれる健気さ。絶対いいお嫁さんになるよ。俺もこのぐらいできれば夢の専業主夫に一歩近づけそうだ。
はい秋葉原。
千葉をうろついていると、いつ知り合いに会うかわからないので、秋葉原へやってきた。
少し強引だったが、花陽の分まで切符を買えば、少しは借りを返せる。この辺りが八幡的にポイント高い。超クール。
しかし、秋葉原に来て思った事。
…………花陽の知り合いに会ったらどうすんだよ。
バカ、ボケナス、八幡。
読んでくれた方々、ありがとうございます!