捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女 作:ローリング・ビートル
親友が曜ちゃん推しになっていた…………。
それでは今回もよろしくお願いします。
昨晩…………。
『もっしも~し!花陽ちゃん♪』
『あ、小町ちゃん。今日はありがとう!』
『いえいえこちらこそ楽しませてもらいました♪』
『そ、そう?よくわからないけど……』
何故か小町ちゃんが悪い笑顔になってる気配が……
『いや~、最近お兄ちゃんの周りに女の人の気配が多いから、妹としては嬉しい限りであります!』
『え、そ、そうなの?』
『う~ん、まだ見たわけじゃないから証拠はないけど、妹のカンってやつ?』
『そ、そうなんだ……』
小町ちゃんは私よりはそういう事に対して気が回る方だと思う。それに先輩の入っている奉仕部という部活は先輩以外には女の子2人しかいないらしい。この前電話では先輩に対して厳しいと言っていたけど、同じ時間を過ごしていれば、仲良くなっても不思議じゃないし……。
『あわわ……』
慌てて思考を振り払う。わ、私……何を考えているんだろう。これじゃまるで…………
『だ、大丈夫?』
『ぴゃあっ!』
小町ちゃんの心配そうな声にビクッと跳ね上がる。で、電話中なの忘れてた……。
『あ、そういえば明日はゴールデンウィーク最終日だった』
『そうだね~』
明日まで練習は休みだ。凛ちゃんは家族でどこかに行くらしい。他の皆も予定があるみたいだし、どうしようかなぁ……。
『小町は友達と予定があるし、両親は仕事だけど…………あ、そういえばお兄ちゃんは相も変わらず暇だった!』
『う、うん……』
何だろう……。誘導されているような気が……。
『家には朝からお兄ちゃん以外誰もいないからなぁ……』
『そ、そうなんだ……』
『でもお兄ちゃんの部活って、いきなり用事が入るかもしれないからなぁ……先着順かぁ……』
『こ、小町ちゃん……?』
『あ、お風呂入らなくちゃ。じゃあね、花陽ちゃん!おやすみ~♪』
『え、えぇ?』
ツー、ツーと寂しい電子音がこだましている。
『…………』
先着順……。
そして今に至ります。
「…………」
「…………」
恒例の沈黙。花陽から断片的に事情を聞いたものの、俺に一体どうしろと。何だか花陽に申し訳ない。
「悪い。交通費もかかるだろうに」
「あ、大丈夫ですよ。ここ最近練習しかしてなくて全然お小遣い使ってなかったので」
しみじみと言った言葉の響きからして、こちらに気を使って嘘をついているようではない。μ,sのPVは俺もチェックしているが、ダンス初心者の花陽が約1ヶ月であれだけおどれるようになったのは凄まじい練習の積み重ねがあったからだろう。俺には無理だ。そもそも部活動という集団行動の時点で不可能である。奉仕部?スタンドプレーの塊だよ。
「あー、じゃあ飯でも食うか」
俺の小学生レベルの料理を、花陽に食わせるのは酷なので、外にでるか。
「あの!私、お弁当作って来ました」
「お、おお……」
マジか。とうとう女子の手作り弁当を食べられる日が訪れるのか……。由比ヶ浜?いや、クッキーだったし、黒かったし、ダークマターだったし。いや待て……
「花陽」
「はい?」
「俺は黒こげの物に対してはトラウマが……」
「安心してください!!」
花陽はカバンの中を漁り、大きな何かを得意げに取り出す。
「先輩の大好きな白米です!!」
馬鹿じゃないの!?と言いたくなるくらい
馬鹿でかいおにぎりが現れた!きちんと竹の皮に包まれたそれは、申し訳程度にたくあんが2つ添えられていて、いいから黙って食え!とばかりにその存在感を主張している。
…………俺、そんなに白米好きアピールしたかな。
読んでくれた方々、ありがとうございます!