捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女 作:ローリング・ビートル
ラブライブ!サンシャイン第4話まであと少し!
それでは今回もよろしくお願いします。
おっと、いけない。
些細な現象にいちいち意味を見出すのは、モテない奴のやることだ。一流のぼっちたるこの俺は、例え美少女とお近づきになれるチャンスがあったとしても、さっきから美少女が俺の事をじぃっと見ていても、決して変な期待はしない。
「………」
美少女がじぃっと俺を見ていても……。
「………」
期待は……。
「………」
しない……。
はっ!危うく死地に飛び込むところだった。いかんいかん。さっさとここを離れよう。
「すいません。ウチの妹が」
少女が地面にばらまいた荷物を拾いながら謝る。年下っぽいけど、一応敬語を使っておいた。
「あ、ありがとうございます……」
「小町もごめんなさいです!」
少女も小町も慌てて拾い出す。
ふと、自分が拾った物を見てみると、先程のA-RISEとやらの写真があった。
「スクールアイドル……」
思わず呟く。
「え?」
その呟きに反応した少女が顔を上げる。
「いや、何でもない」
まとめた物を丁寧に袋に入れ、おどおどしている少女に手渡す。よし、ミッションコンプリート。後は早々にここを立ち去ろう。
俺は落ち着かない気持ちを見ないふりして、もう1度謝罪してから小町を促し、その場を離れた。
「あ……」
うん。俺の耳には何も聞こえていない。
「お兄ちゃん」
「どした?」
「さっきの子、すごく可愛かったね!」
両親に秋葉原っぽいお土産を買おうと入ったお店で、小町が先程の事を思い出させる。
「そうだったか?」
とぼけておく事にした。
「またまた~。あんなに見つめ合ってたじゃんか」
ダメだったか。なら……
「お、これなんかいいんじゃないか」
「うわ、この人ごまかしたよ。しかもすごい下手」
ここは逃げるが勝ちだ。
「は~あ。あんな可愛い子がお義姉ちゃん候補になってくれないかな~」
「いや、それはない」
「なんで?」
「俺は働く気は無い。すると、必然的に奥さんが働く事になる。だがさっきの子は、どちらかといえば家庭を温かく守る専業主婦タイプとみた。てことは俺のライバルということだ。」
「ゴミぃちゃん……。さすがにクズすぎるよ……」
あれ、妹の好感度が下がったような……。
「よし、もう帰ろう」
「そだね」
何が何でも明日は絶対に家から出ない。
そんな固い決心と共に、人ごみを縫うように歩いていると、横から誰かぶつかってきた。
その拍子にお土産の袋がばさりと地面に落ちる。
「あ、すすす、すいません」
謝ってきた女子の顔を見る。…………嘘だろ?
「あの、これ……あ」
「あぁ~~♪」
俺と少女は唖然としていたが、小町だけ何故か嬉しそうな声を上げた。
ぶつかったのは何と……
「「さっきはどうも……」」
先程の女の子だった。
「へえ~、花陽ちゃん4月から高校生なんだ~。私の一個上だね!」
「う、うん……。小町ちゃんはこの辺りの高校うけるの?」
「いえいえ、私達は千葉から来たんですよ」
「そうなんだ……」
女子、というか小町のコミュ力高すぎじゃね。いや、俺がなさすぎるのか。さっきから一言もしゃべってない。
奇跡(?)の再会を果たした少女、小泉花陽は、たまにこちらをちらちら見ながら、小町に押され気味に会話している。
女の子同士積もる話もあるだろうが、そろそろ帰らなくてはいけない。
「小町、そろそろ……」
「あ、あのよかったら連絡先を……」
まあ、そのぐらいなら時間はあるか。
「ほら、小町。はやく交換しとけ」
「…………はぁ~。まったく、このゴミぃちゃんは…」
小町が小声で何か呟く。だがすぐに明るい笑顔を花陽に向けた。
「花陽ちゃん、ごめんなさい!実は私今日スマホ家に忘れて…」
「お前さっき使っ……」足を踏まれる。めっちゃ痛ぇ。
「だ・か・ら、ひとまず兄と交換しといてもらえますか?」
そういってウインクする。あざと可愛い!
「あ、じゃあ……お、お兄さん。よろしくお願いします」
妹の為か。仕方ない。
「ほら」
自分のスマホを渡す。
小泉は一瞬キョトンとしたが、微笑みながら連絡先を登録してくれた。
「じゃあ、花陽ちゃんまたね!」
「うん、またね!」
初対面の相手をわざわざ駅まで見送るとは。この子、実は天使なんじゃね?
「は……お兄さんもまた会ってください……」
は、て言ったけど俺がいることを忘れてたのだろうか。
「お、おう」
軽く手を上げ、小泉に背を向ける。
「はあ、まったくゴミぃちゃんは……」
小町ちゃん、一日三回は止めようね。
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