捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女   作:ローリング・ビートル

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   そろそろ20話か……。

  それでは今回もよろしくお願いします。


正夢

 危ねぇ危ねぇ。朝っぱらからうっかり花陽の夢見ちゃったよ。しかし夢にまで出てくるようになるとは……。次は裸で出てくるんじゃね?別に期待してないけど。本当に期待してないけど!…………いいじゃんか、夢ぐらい見たって!俺だって人生という大海原を孤独に旅するぼっち海賊なんだから!

 まあいい、寝よう。昼まで寝て残りは読書かゲームだ。

 5月の心地よい陽気に優しく包まれて、俺は2度目の眠りについた。

 

「よしっ!」

 ジャスト12時。八幡的にポイント高くね?

 スマートフォンの目覚ましで目を覚ましながら、体を起こす。まあ、小町的にはポイント低いか。しかし、あのポイントはどこに貯まっていくのか100点貯まれば小町がお嫁さんになってくれるのか、謎である。いやならんでいいけど。

 ふと左側に重みを感じる。カマクラが珍しく俺の布団で寝ているようだ。とうとうデレたか。こいつと雪ノ下だけは俺にデレる事はないと思っていたのに。いやクラスメイトだけでもかなりいそうだった……。

 寝ぼけ眼で手を伸ばし撫でてやる。だがそこには違和感がある。

 …………こいつこんなに毛長かったっけ?

 何度か瞬きをして、ようやく今日の景色が目に馴染む。

「すぅ……すぅ……」

 そこにはベッドに突っ伏した花陽がいた。

「おわっ!」

 普段の気持ち悪い声ではなく、純粋な驚愕の声が漏れる。妄想をリアルブートしてしまったか。いや、まさか…………

「夢……か?」

 疑問系になってしまう。そのぐらい左手の感触がリアルだった。

 もう一度試しによしよしと頭を撫でてみる。サラサラとした滑らかな手触りで、俺のくせっ毛とは大違いだ。

「…………んぅ」

 少し色気を含んだ声が漏れる。突っ伏してはいるが、顔はこちらを向いているので、落ち着かない気持ちになる。

 次は柔らかそうなほっぺたをつついてみるか…………ってやるわけねぇだろ。さすがにもう夢じゃないとわかる。いや、頭撫でた時は夢と思ってたよ。ハチマン、ウソ、ツカナイ。

 ここでラブコメ主人公ならうっかり胸何か触っちゃって『バカ、変態、死ね!』なんて顔真っ赤のヒロインから殴られるご褒美まで付いてくるのだが、現実にそんなことはない。いや、この展開もありえない事ではあるけれど。

 それよか早く起こそう。…………だって花陽、すごく涎垂らしてんだもん。俺の布団の上に。

「花陽、花陽!」

 軽く肩を揺すってやる。

「…………うぅん…………お母さん…………ごはん」

「お母さんじゃねえし、ごはんもできてねえよ、もう昼だぞだから起きろ」

 自分の事を棚の上に放り投げ、花陽の前で手を叩く。

「…………ん……はち……まん……先輩……?」

 俺の名前を呼んだ気がしたが、気のせいだろう。花陽は俺を認識したようだ。そして涎の垂れた口元をぽかんと開けながら、何かのメーターのように首から赤く染まっていく。

 その後の悲鳴は近所で問題になったとか、ならなかったとか。





   読んでくれた方々、ありがとうございます!

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