捻くれた少年と恥ずかしがり屋の少女 作:ローリング・ビートル
ラブライブ!サンシャイン第6話ですね!
それでは今回もよろしくお願いします。
…………どうしたもんか。
ゴールデンウィークという事もあって、普段より密度の高い人波の中を花陽と並んで歩きながら、移動するルートを考える。
おかしい。シミュレーションは中学の頃に何度もしてきたのに、使う機会に恵まれなかったから、上手く引き出せない。そう、これは使う機会をくれなかった社会が悪い。
つっても、今日連れているのは花陽。美少女というだけではなく、スクールアイドルだ。スクールカースト最底辺の孤高のぼっちたるこの俺と何かが起こるわけもないんだが(しつこい)。最底辺の後に孤高ってなんか矛盾してる気もするが。
さっきまでは色々あったが、今回はガイドになりきればいいだけだ。べ、別に意識なんてしてないんだからね!ハチマン、ウソ、ツカナイ。
すると左手の袖を引かれる。
振り返ると花陽が俺の袖をつまんでいた。
「あの……はぐれそうなんで……いいですか?」
ぐはっ!
これが亜麻色のセミロングの髪のサッカー部マネージャーなんかがやればあざといと言えるのだが……。何かやけに具体的な例えだがハチマン、シラナイ。
まあ、それはさておき、花陽の子犬のような上目遣いをされると、無碍にできない。これが計算なら俺は2度と女の子を信じないレベル。
「あ、ああ」
変な意識はしないように足を進める。
「あちらが書店になります」
「せ、先輩……さっきからどうしたんですか?」
いかん、ついついガイドに徹してしまっていた。
「すまん……とりあえず、花陽が普段読む本でも教えてくれよ」
「あ、はい!」
そうして書店のコーナーへ足を運ぶ。
だが見覚えのある姿が目に入る。
「っ!花陽、こっちだ」
「ぴゃあっ!」
花陽の手を引いて、書店から少し離れた別のコーナーに入る。
「せ、先輩?」
「落ち着け。俺にまかせろ」
「…………は、はい」
こっそりと書店のまえに目をやる。出てきたのは、雪ノ下雪乃だった。
いつものようにクールな立ち振る舞いで本人の意志とは関係なく周囲の目を引きながら、颯爽と歩いていった。
危ねぇ……。
俺が美少女といるところを見つかったら、通報されるか、自首を促されるかの2択だ。要は謂われのない言葉の暴力に晒される。そんなのはごめんだ。
「あの、先輩……やっぱり私……」
花陽が真っ赤になって俯いている。
「あの、お客様……」
「ひ、ひゃい!」
突然、店員に声をかけられ、声が裏返る。雪ノ下に気を取られて咄嗟に動いたが、今の自分の状況をやっと理解する。
ここは下着売り場だった。
俺は花陽を少しアダルティな下着の棚に押し付けていた。
店員と他の客(もちろん女性)が俺達に注目していた。
ふー、やれやれだぜ。
「すまん。ごめんなさい。許してください」
ひたすら謝り倒す。ゲームのボスも謝り続ける事では倒せたらいいのになぁ。達成感ないだろうけど。
「き、気にしないでください……」
花陽の手にはソフトクリームが握られている。食い物でこまかそうとしてるわけはじゃないよ!
花陽には苦手なやつを見かけたことにしておいた。まあ、あいつの罵詈雑言は苦手だからウソではない。
「何つーか、本当にすまん。せっかく休みの日にわざわざ来てくれたのに……色々とドタバタして……」
普段色んな事を要領よくやり過ごしているつもりでいたが、こういう場面で自分の至らなさが露呈して、自己嫌悪に陥る。
「……………………よ」
「?」
花陽が何か呟いたが聞こえない。やがてまっすぐこちらを見つめてきた。
「私……先輩といれて、楽しいですよ」
「俺、何もしてないんだけど」
何ならセクハラを働いたまである。
「わ、私自身も何故かはわからないんです。男の人とこうして出かけるの初めてですし……」
「花陽……」
「せ、先輩って、ぶっきらぼうというか、無愛想というか、でも優しいところもあって……」
「花陽……アイス」
「ぴゃあっ!」
花陽の手にアイスがダラダラと溶けていた。
やがて帰る時間になり、2人がしれっと合流してきた。
「あの、今日はありがとうございました!」
「また来るにゃ!」
「うん、凛ちゃんまた来てね!そして花陽ちゃんは今度両親がいるときに、挨拶に来てね!」
「えぇ!?」
あんまからかってやんなよ。
「帰り、気をつけてな」
「はい、先輩も」
「次は男を見せるにゃ!」
星空の言葉の意味は考えないでおいて、改札の向こうへ消える2人を見送った。
「そういやお前と星空はどこにいたんだ」
「ヒ・ミ・ツの会議だよ♪」
「…………」
俺は小町の髪をわしゃわしゃした。抗議の声が聞こえたが、聞こえないふりした。
そんなことをしながらも花陽の一つ一つの瞬間が頭の中にちらついていた。
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